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12 実験

 しばらくすると、リューリエの葉を温室から採取したレオくんが帰ってきた。

 聖水、魔石、リューリエの葉とその他諸々。これで素材は揃った。


 手順書を見ながら、サーヤ先輩の指示で必要素材を調合していく。

 リューリエの葉を細かく刻んで、乳鉢に入れる。それを乳棒ですりつぶして粉末状にする。聖水と魔石以外の必要素材も同様に乳鉢ですりつぶす。

 乳鉢に少量の聖水を入れると、先ほどすりつぶした粉末と馴染ませるように混ぜて、粉末を聖水に溶かした。

 リューリエの葉が溶けた液を乳鉢からビーカーに入れて眺めてみる。黄緑色の液体で、きらきらと反射する粒のようなものが光の加減で見える。これがリューリエの葉の浄化作用の源なのだろう。


 ピットちゃん人形が入る大きさの桶を用意して、大量の聖水で満たす。そこに魔石と先ほど作成したリューリエの葉の溶液を注げば完成だ。


「あとは、この溶液にピットちゃんを5分間浸すだけね」

「わたし、やりますよ」


 私はピットちゃん人形の頭部分を掴むと、桶の中に足の先からゆっくりと沈めた。

 桶は人形よりも一回り大きいサイズで、ピットちゃんは仰向けで爪先から頭のてっぺんまでしっかりと薄黄緑色の溶液に浸かる。

 ちょうどお風呂に入って沈んでいるような体勢だ。

 まだ春だというのに南国であるアダンの気温はすでに高く、室内は蒸し暑い。きらきらと光を反射する液体に浸かるピットちゃんは、まるで水浴びをしている子供のようで、気持ちが良さそうだった。


「5分経ったので引き揚げますね」


 私は時計を確認しながら、薄い黄緑色の溶液に手を突っ込んで、ピットちゃんの頭部分を掴む。


「え、素手で掴むんですか?」キィちゃんがびっくりしている。

「手が溶けたりしたら大変だよ」レオくんが慌てて私を静止しようとするが、もうすでに手首までどっぷりと浸かってしまっている。

「あ、ごめん。もう突っ込んじゃった」


 私はざばっとピットちゃん人形を引き上げて、タオルの敷かれた机の上に置く。

 しまった、意外とガサツなところがバレてしまった。


「大丈夫かい?」レオくんがタオルを持ってきて、私の濡れた手を懸命に拭いてくれる。

「溶けてないよ、大丈夫。痛くもないし」

「スー先輩、不用意に魔法の液体に手を突っ込んじゃだめですよ! 皮膚に鱗が生えたり、腕が石化してしまった例もあるんですからね」キィちゃんも怒りながら私の手を観察する。

「ごめん、ごめん、次から気をつけます」レオくんとキィちゃんが真剣に怒っているので、私はしゅんと項垂れる。


「なに、これ?」


 ふいに、サーヤ先輩が呟いた。不用意な私に呆れているのかと思ってサーヤ先輩の方を振り向いたが、先輩は私など見ておらず、何かに釘付けになっている。

 視線の先をみると、タオルに安置されていたはずのピットちゃん人形がむくりと上半身を起こしていた。

 ピットちゃんが長い睫毛が生えた瞼を瞬きさせて、こちらを向く。くりくりっとした大きな瞳と目が会った。

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