困った冒険者パーティー
今日の魔力モニターは安定。最近はモンスターたちの労働環境に気を使っているおかげかモンスターからのクレームが目に見えて減った。これは喜ばしい兆候だ。……モンスターからのは、少なくなったのに、
「主任、3階層から入電です。……また『例の3人組』が暴れてるみたいで」タケルさんが恐る恐る差し出してきた電話を受け取ると電話口から爆音の歓声と怒号が響き渡った。
「うっひょおお!!!今この瞬間俺が世界で誰よりも強い!!俺の時代だぁ!!はーーーはっはっはーー!!……あ、そこの君、今俺の事ウザイなとか思ったよね?ごめん、生きてて……産まれ直してくる、」
「……」
「おいおい辛気臭え顔すんなよリーダー!そんな時は酒でも飲んで気分をブチアゲんだよ!」「はぁーー?アンタタダでさえ酒臭いのにさらに飲むん?!……あー、どっかにいー男いないかなー!……あっ、そこのお兄さーん♡あーしとダンジョン巡りしなぁい?」
何だこの状況は。カオスか?
「最近ずっと来るんですよ…『あの迷惑パーティーを出禁にしろ!』って旨の電話が。今週だけで数十件」「数十件?!」疲弊したタケルさんからの報告に耳を疑う。
まだ電話は繋がっておりそこから彼らの大騒ぎしている様子が聞き取れる。
「うーん、これはそろそろ戦闘管理部に助けを求めた方がいいよね、……アーシュレイン幹部とか」
「調子乗ってすんませんでした」「今後はちゃんと酒控えます」「あーしマヂ反省したんでガルヴァインだけは勘弁してください」
三者共々手のひらがちぎれんばかりの態度の翻しだが流石に今回は見過ごせない。
「そうは言ってもですね、貴方たち3人はたった数日間でほかの冒険者の方々に多大な迷惑をかけているのですよ?分かっていますか?」「迷惑?」「俺らが?」「誰に?」自覚がないのか?この人達は、
「……そうですか。ではこの数日間の貴方たちに寄せられた通報内容を教えます。」
「まずはリーダーのコンドウさん。種族は人間で年齢は26歳でしたっけ?貴方の主なクレームは『うるさい』『ダル絡みしてきたと思ったら急に萎え出す』要するに、情緒不安定さが怖いということです。」「そ、そんなに悪いことか?調子がいい時はホントに気分が良いんだ!……まあ、悪くなれば死にたくなるだけで」「……それは大丈夫なんですか?」
「次に戦闘員のオーガンさん。種族はケンタウロス。年齢は104歳ですね。貴方の主なクレームは『お酒を強要してくる』『酔っ払った時は誰が何を言っても言うことを聞いてくれない』……酒癖の悪さが酷いですね」「どんな生き物も呑まねぇとやってらんねぇのよ!」「節度をもってください……」
「次はサポート役のリーヴィアさんですね。種族はウィッチ。年齢は」「ちょっとー?!乙女の年齢を公開するのはマナー違反っすよ!」それ以上のことを貴方たちはしてるんですが?
「……すみません。では貴方の主なクレーム内容は『好みの男の人を見つけるとすぐに口説きに行く』らしいです。」「ええ!あーしって、恋多き乙女だしぃ、しゃーなしっていうか、ね?」「仕方ないことではありません。」
「と、いうわけで、貴方がたはもう私たちの手に負えない問題行動ばかり起こすので本当に呼びますよ?アーシュレイン幹部。」「ちょっ、ほんとに待ってください!冗談抜きで俺らに改善できる点があれば心入れ替えるからどうかチャンスを……!」頼み込んでくるコンドウさんの声を聞き考える。
「分かりました。では皆さんに気をつけて欲しいことをお伝えさせていただきます。それが守られなかったときは問答無用でアーシュレイン幹部を呼びます。」
「まずはコンドウさん。貴方リーダーとして仲間の行動を管理すること。ここには貴方たち以外に多くの冒険者が訪れるのです。他の冒険者たちに迷惑をかけないよう、リーダーとして皆さんの行動を管理してくださいね。」
「次にオーガンさんはダンジョン内での飲酒についてですね」「あ゙あ゙?!!酒がないとやってられねぇんだよ!」「ご自分の都合の方が大事なのでしたらダンジョンに来なくて結構です!それに、何もダンジョン内禁酒というわけではないでしょう?セーフエリアでは節度を守った飲酒を認めています。ただし、飲酒後にダンジョンの攻略を再開することは禁止です!」
「リーヴィアさんは相手の都合も考えることです。」「えー、ここを逃したら運命かもしれない人逃すかもぢゃん!!」「相手もそうとは限りませんので。」
ぶーぶー文句を言う2人を無視してコンドウさんに告げる。
「今回の件は厳重注意とします。ただし、次に同様の苦情が寄せられた場合は、戦闘管理部へ対応を依頼します。」「ああ……すまないな。俺からも2人に伝えよう。とは言っても、俺が人のこと言えたもんじゃないがな。」
とりあえずコンドウさんからの了承を得られたところで息をつく。
「では、誓約書を書いていただきたいので、こちらへ来てもらえますか?」「分かった。すぐに支度して向かおう。」一段落着いたことを察したのかタケルさんがお茶を持ってきてくれた。
「お疲れ様っす。今ん所は丸く収まった感じですか?」「そうだね、コンドウさんはちゃんと反省してくれたみたいだし、暫くは安心してもいいのかな。」
それから数十分後、何故か顔を腫らしたコンドウさんとオーガンさんに心底疲れたような顔をしたリーヴィアさんが管理課に現れたがあまり深くは聞かないことにした。大方揉めたのだろう。その後は3人ともすんなり誓約書に同意してくれたので逆に拍子抜けしたほどだ。何はともあれペコペコ頭を下げるコンドウさんたちパーティーを見送り今日の業務は落ち着きを取り戻した。
「あの人たち、アーシュレイン幹部に引けを取らないぐらい強いのにどうしてわざわざチュートリアルダンジョンなんかに……?」
よいしょ、と誓約書を引き出しに仕舞っているスズネの横でタケルは誰に聞かせる訳でもない独り言を呟いた。




