畑いじり
5日目。昨日より少し早いくらいの時間に爺さんの家に向かう。
同じ場所に何日も通うと、道中で何度か出会う人もいる。あ、知った顔だと思い会釈をすると、相手も返してくれた。
家に着く。爺さんはまだ庭にいない。
仕方がないのでその辺の石に腰掛け、爺さんを待つことにした。
間もなく、爺さんは眠そうな顔で家から出てきた。
「何度来ても、魔法など教えないと言ってるだろう」
「あ、爺さん。そんなことより昨日言ってた畑の作業やろうぜ。楽しみだったんだ」
「……は?」
ぽかんと口を開けている。無理もない、魔法を教わるために来ているはずが、なぜか魔法そっちのけで畑の話題を出しているのだ。
「でも、あまりしんどい作業は勘弁してくれよ? 見ての通りか弱い少女なんだ」
「……はぁ。待っておれ。支度をしてくる」
よく見ると爺さんは寝間着のような格好をしていた。最初に眠そうだったのは寝起きそのままに出てきたからだろう。
「ん?」
ノックもしていないのに爺さんは出てきた。……それって、なんかおかしくないか?
ドアが開いた。着替えを終え、鍬を肩に担いだ爺さんが出てきた。
「ワシがまず耕す。そしたらそこのシャベルでいい感じに成形して畝を作ってくれ」
「えっ、難易度高くないか?」
「昨日畝は見ただろう」
「作る過程も見てねえのにできるわけないだろ!」
「うるせえやれ!」
一悶着ありつつも、作業は始まる。
爺さんは、本当に老人か疑いたくなるほどキレのある動きでサクサクと畑を耕していく。その上で、メグがモタモタしていると横から野次を飛ばす。
「だぁぁ! こっちは必死にやってんだよ!」
「必死だろうがなんだろうが遅いんだガキめ!」
「見ろよこの細腕! 遅くて当たり前だろクソジジィ!」
実に騒がしい。
どれだけ時間が経過したかはわからない。腕がパンパンになったが、代わりになかなか立派な畝が出来上がった。
「ふん、この程度か」
爺さんの声に反応する気も起きなかった。
メグは肩で息をしながら仰向けに寝転ぶ。そして右手を空に向けて伸ばす。
体は程よい疲労感と、そして達成感で満ちていた。
「……フンッ」
そんな姿を爺さんは一瞥し、家の中へと入っていった。
少しして、爺さんはコップを持ってきた。木製のコップ、ルナ婆の家にも似たようなものがある。
「飲め。働いた分の礼だ」
目も合わせず差し出されたコップを受け取る。
「このコップ……」
「あ? ……ああ、あの婆さんが作った物だ。なんだ、一緒に住んでいるのに知らなかったのか?」
そういえば、ルナ婆は木を削って何かを作っていた。つまり、そういうことなのだ。
「知らなかった……」
コップの中は水のようで水ではなかった。少し嗅いでみると、甘い果実の香りがする。いわゆる、果実水と呼ばれる代物だ。
「うまっ」
甘さは控えめ、よくわからない風味が口いっぱいに広がる。オレンジのような、りんごのような、あるいはさくらんぼのような……なんだこれ。
「これなんの果物が使われてるんだ?」
「ドヴェとホルソヌだ」
「わかんねー」
聞いてもわかるはずがなかった。それはそれとして美味いことは確かであった。
大して時間もかけずに飲みきり、コップを返す。
「ごちそーさん。明日はなんの作業をするんだ?」
「……種植えだ。来るならもう少し遅い時間にしてくれ。もう少し寝たい」
目を逸らしながら爺さんはそう言った。メグは目を輝かせる。
「ああ、わかったよ爺さん。んじゃまた明日」
帰宅後、ルナ婆が夕飯の支度をしながら声をかけてきた。
「あんた、昼も食わずに……その様子だと、順調に魔法を教えてもらえているのかい?」
言われて思い出す、そういえば昼飯を食べていない。
「ふ、聞いて驚け婆さん。すんごい立派な畝を作った」
「は?」
今日の出来事を話すと、ルナ婆はものすごく複雑そうな顔をした。
「うーむ……まああんたがいいならいいか。それよりその泥だらけの手、洗っておいで。夕飯にしよう」
「ああ」
手を洗う頃にはメグの腹は、盛大に空腹を訴え始める。
空腹は最高のスパイスというが、今夜の夕飯は特に美味しく感じられた。特に肉。やはり肉はいいも




