↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界樹の最後のTSエルフ  作者: 巌沢雪乃
一章 世界樹のふもと

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/27

外の世界

 ベルガン、ニコル、そして村長の元から離れ、冒険者の三人とメグは向き合っていた。

 ルナ婆は冒険者にそこまで興味がないのか、村長の近くに寄っている。


「ねえキミ、メグちゃんだっけ。すっごく可愛いね!」


 女性は目をキラキラさせながら顔を寄せて来た。近い。心の中のおじさんがたじろぐ。


「あの、ありがとうございます」


 お礼を言うと、うんうんと頷きながらもじっと顔を観察している。視線が瞳や耳をなぞるように動いていた。


「……あまり困らせるな」

「うわっ、びっくりした」


 長身の男が女性の鎧の首元を掴んで引っ張る。


「それで、冒険者に興味でもあるのか?」

「……はい」


 改めて聞かれると少し照れ臭くなった。自分でもわかるくらいに興味津々だったからだ。


「冒険者はいいっすよ。知らない景色! 美味い飯! ……たまに死にかけるけど」


 もう一人の男が手を大袈裟に広げながらそう言う。


「まあ、否定はしない」

「そうだねぇ」


 長身の男と女性は頷く。


「実際、アタシらはそれに惹かれて冒険者始めた口だからね!」


 三人の顔を見ると、みんな若い。


 顔を見比べているのに気がついたのか、女性がにかっと笑う。


「アタシら同期なのよ! ギルドで意気投合してね。一緒に依頼を受けて以来、ずっと固まって動いてるんだ」


 懐かしそうに目を細める女性。男性二人も頷いている。


「まあ、俺は巻き込まれただけなのだが」


 長身の男が言うと、ニヤリともう一人の男が笑う。


「パーティーを組まないかって言い出したのはお前だけどな」

「……うるさい」


 やりとりを見るだけで三人の関係がとても良好なのがわかる。

 なんだか少しだけ、羨ましくなった。


 あっ、と女性が声を上げる。


「そういえば自己紹介がまだだったね」


 女性は男性二人の間に割り込み、肩に手を回す。


「アタシはミレア。でっかいのがガレスで、こっちのちっこいのがリック」

「雑だな」

「オレ、一応最年長っすよ!?」


 ミレア、ガレス、リック。二十代半ばくらいだろうか。

 見た目も性格も凸凹であるが、雰囲気はしっかりとまとまっていた。


「しばらく滞在してるから、よろしくねメグちゃん!」

「はい、よろしくお願いします」


 メグが頭を下げると、三者三様に微笑んだ。


「あの……冒険者ってどんなことをするんですか?」


 冒険者という単語、そして三人の鎧。もうずっと気になっていたことを口にした。


「そうねぇ、何でも屋……かな? いろんな人のいろんな依頼を受けるの」

「いろんな場所に行って、いろんな飯を食うっす」

「お前はそればかりだな」


 いろんな場所、その単語にメグは目を光らせる。


「今までどんな場所に行ったんですか?」


 三人は顔を見合わせて、ニヤリと笑った。


「いい質問だねぇ、アタシらは特に旅を好む冒険者だからね。話は尽きないよ」


 そう言って各々に目を細めながら語り出す。


「山の中をくり抜いて作った街があったっす! 天井から光る植物が垂れてて綺麗だったっすよ」

「海に浮く国もあった。船に乗らないと辿り着けないんだ」

「魔道具で街を整備している街なんてのもあったねぇ。ゴーレム、だったかな。街を普通に土人形みたいなのが歩いてるんだ」


 話が尽きないという発言は本当だった。次々と聞いたこともない特徴のある土地が出てくる。


 メグの想像できないような世界が、村の外には広がっていたのだ。

 この村で過ごす毎日ですら、メグにとっては刺激に満ちている。

 ならば外は?


 ゾクッと、背筋が震えた。


「その、ゴーレムってどんな感じですか?」

「お、気になっちゃう? リックが最初人と間違えてさぁ、声をかけてたんだよね」


 リックがムッとした顔をする。


「だって人の形をしてるっすもん。街を歩いてるし意思疎通が取れると思うじゃないすか」

「土が喋るわけないだろう」

「そうっすけどぉ……!」


 ふっ、とメグは笑う。楽しそうに笑う三人が眩しかったのだ。


「あ、笑った! 笑うと一層可愛いねぇ。こりゃ男の子の心臓が保たないよ」

「え? いや、その」


 ミレアがニヤニヤと笑う。ガレスはやれやれ、と肩をすくめる。


「子供をからかうな」

「いや事実じゃんねー」


 和やかな時間が流れる。


「ミレアさんは何かそういう出来事あるんですか?」

「えー、聞いちゃう? そうだなぁ……。森の中で二人とはぐれて魔物に囲まれた話とかどう?」

「……よく生きていましたね」


 魔物というものがメグが想像している通りなのだとしたら、なかなか危機的状況なのではないだろうか。


「木登りが得意でよかったよ。木の上でべそかいてたら二人が助けに来てくれたんだ。あの時のガレス、カッコよかったなぁ」

「でも見つけたのは俺っすからね。忘れちゃダメっすよ」

「あはは、わかってるって」

「……俺も必死だった」


 メグにその時の光景はわからない。だが、三人の目には同じ光景が浮かんでいるようだった。

 それはそれとして。


「思ったより重い話ですね」

「そうだね、でも冒険者なんてキラキラした話の方が少ないさ! それでも辞められないんだ、アタシ達は」


 ミレアが誇らしげに胸を張ると、残る二人も頷いた。


「死ぬまでオレらは冒険者っす!」

「流石に歳を取ったら引退するだろうけどな」


 三人の目は輝いていた。まるで夢を抱く幼な子のように。


「その魔物ってどんな……」


 そこまで言ったところで、ルナ婆がやって来た。


「メグ、そろそろいい時間だから帰るよ」

「……え?」


 もう少しここにいたかった。もう少し、三人の話を聞いていたかった。


「ふん、そんな顔をしなくてもどうせまた話せるだろう? ここに来るまでで疲れてるだろうから今日はこの辺で休ませてやりな」


 そう言われてハッとする。三人はまず鎧を身につけたままだ。

 言ってしまえば、仕事終わりにスーツのまま立ち話に付き合っているようなものだ。


 うん、それはしんどい。


「あの、みなさん。今日はありがとうございました!」


 深くお辞儀をすると、三人は笑った。


「いいんだよ。明日は外で過ごしてるだろうから、また会えば話そうね」

「ぜひ!」


 ルナ婆と並んで帰宅中、メグはまるで別の世界にでもいるような気持ちで過ごした。

 事実として別の世界にいるのだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。