【05】 バケツの水で特訓
3人は由利の車に乗り込み、
各自の水着を取りに寄り、
コンビニで軽食を済ませて
美浦市スポーツセンターへ向かった。
夜8時半。
美浦市スポーツセンターの室内プール。
ポリバケツを2個持参した3人は、
水着姿でプールサイドに立っていた。
由利「閉館まであと30分しかない、早速始めよう」
爽香「そうね、二人ともよろしく頼むわね!」
由利「任せろ」
爽香はプールサイドで四つん身になった。
ボートを操縦する前傾姿勢の再現である。
由利はプールの中に入り、
バケツにたっぷりと水を汲むと、
プールサイドに立つ丹沢へ手渡した。
爽香は四つん身のまま、
顔だけをわずかに前方へ向けた。
丹沢「いくよ!」
丹沢が爽香の顔面へ向けて、
バケツの水を一気に叩きつけた。
「バシャッ!」
爽香は思わずギュッと目を閉じてしまう。
爽香「……続けて!」
丹沢は再び放水。
爽香は反射的に顔を少し伏せたが、
すぐさま前方を見据えようと目を見開く。
爽香「続けてっ!」
三度目の水しぶきが顔を襲う。
爽香「もっと! もっと思いっきり!!」
その異様な光景に気づいたプール監視員が、
不審そうな顔で走ってきた。
監視員「ちょっと君たち! これはいじめか!?」
爽香「違います! あたしがお願いしてやってもらってるんです!」
監視員「本当か? 脅されて言ってるんじゃないのか?」
丹沢「本当なんです! むしろ私が脅されて手伝わされているんです!」
監視員は水に濡れて
息を荒らげる爽香を指差し、
監視員「君は……Mなのか?」
爽香「はい、そうなんです! よくお分かりで!」
面倒くさくなって適当に合わせた。
監視員「そうか……なら仕方ない。だが公共の場所だし周りの目もあるから、こういうのは他のプールでやってくれ」
爽香「ごめんなさい……」
丹沢「すみませんでした……」
由利「わかりました、出ます」
プールを追い出され、
3人はトボトボと由利の車に戻った。
爽香「やっぱり無理ね……あたし、諦めるわ」
由利「いや、諦める必要はない。私に考えがある。思い切り同じことができる場所を知っているから、そこへ行こう」
丹沢「すべて由利さんに任せるよ」
爽香「お願いします……!」




