【04】 水しぶきに対する恐怖心
丹沢「そう。挙げたらキリがないよ」
爽香「でも、突然調査に行って危なくないの?」
丹沢「中には怒り出して、ホースで水をかけてくる奴や、バケツの水を選り分ける間もなくぶっかけてくる奴もいるよ」
爽香「じゃあ、洋服がかかったらびしょ濡れじゃない!」
丹沢「いや、奴らはピンポイントで顔を狙ってくるから、洋服は案外濡れないんだよね」
爽香「ふーん……顔を狙ってくる……。……待って!」
丹沢「どうかした?」
爽香「そうだ……それよ! それ!」
丹沢「『それ』って?」
爽香「ねぇ、この美浦市に公営のプールってある?」
由利「あるよ」
爽香「今から連れて行ってくれる!?」
由利「車だからいいけれど……」
爽香「決まり! よし、今すぐ3人で行こう!」
丹沢「えっ、今からプール!?」
爽香「思い立ったが吉日よ!」
由利「今の話から推測するに……ひょっとして、第1ターンマークの?」
爽香「もちろん、そうよ!」
丹沢「なんだなんだ? 二人だけで納得しないでよ、私にはさっぱり分からない!」
由利「ボートレースで最初のターンマークを旋回するとき、前を走るボートが跳ね上げる水しぶきが顔に直撃して、視界がゼロになるんだよ」
丹沢「なぁーんだ、そんなことか!」
爽香「『なぁーんだ』じゃないわよ! あたしにとっては死活問題だし、前に突っ込めないから丹沢さんに10万円返せないの!」
丹沢「だったら、ワイパー付きのヘルメットを買えば一発解決じゃないか」
由利「そんなの売ってるのか?」
丹沢「結構売ってるよ」
爽香「ワイパー付きヘルメットなんて、レースの規定で認められてないのよ!」
丹沢「じゃあ、認めるようにボートレース管理事務所に投書しておく?」
爽香「結構です!」
由利「つまり爽香さんは、我々がバケツで顔に水を浴びせかけて、第1ターンマークの水しぶきに対する恐怖心を克服したいんだろ?」
爽香「さすが由利さん! ズバリ大正解! やっぱり頼りになるわ!」
丹沢「私だって頼りになるだろう!」
爽香「そうね、お金出してもらったし」
丹沢「お金だけ!?」
由利「お金に物を言わせているのか?」
丹沢「人を聞き捨てならない越後屋みたいに言うな!」
由利「顔つきが越後屋に似ている」
丹沢「人聞きの悪い!」
爽香「ふふふふふ!」
丹沢「ははははは!」
由利「ははははは! よし、とにかく行こう!」




