【03】 群馬県より北にボートレース場はない?
由利「モンキーターンは?」
(※『モンキーターン』とは、
艇上で立ち上がり、
体重を左前方に乗せて鋭く旋回する技術である)
爽香「一応、それもできるわ」
由利「じゃあ、差し技は?」
(※『差し技』とは、
先行する艇の内側にハンドルを切り込んで
抜き去る技術である)
爽香「理論は分かってるし出来るはずなんだけど……プロになってから一度も決まったことがないの」
由利「なら、そこから改善してみたらどうだろう?」
爽香「やっぱりそこなのね……! 埼玉支部の先輩たちにお願いして練習してみる」
丹沢「ねえ、支部って何?」
爽香「同じ出身地や活動拠点ごとに選手が集まって作るグループのことよ。仲間意識を高めたり、情報交換や合同練習で技術を磨くの」
丹沢「でも爽香さんは福島県出身でしょ? なぜ埼玉の支部会に入るの?」
爽香「福島県にはボートレース場がないからよ」
丹沢「えっ! ボートレース場場って、全国47都道府県に一つずつあるんじゃないの?」
爽香「ううん、全国に24箇所しかないの」
丹沢「そうなんだ!」
爽香「一番北にあるのが群馬県の桐生ボートレース場。それより北の都道府県には一つもないのよ」
丹沢「どうしてないの?」
爽香「きっと、冬に水面が凍っちゃうからじゃないかしら」
丹沢「あー、水面が凍ったらボートが走れないもんね」
由利「それで、埼玉県に引っ越して埼玉支部を選んだんだね」
爽香「うん。加入させてもらって、先輩レーサー全員に挨拶状も送ったわ」
由利「それなら問題ないね。先輩たちから親切に教えてもらっているんじゃない?」
爽香「うん、いつもすごく優しく指導してもらってる」
丹沢「いい職場環境なんだなぁ」
由利「丹沢の部署なんて最悪だからな」
丹沢「それを言うな! いま思い出させないでよ!」
由利「ハハハハ!」
爽香「丹沢さんは、お仕事で困ったこととかないの?」
丹沢「そうだな……今回の住民実態調査で思ったんだけど、美浦市に住んでいるのに住民票を移していない男性が結構いてね」
爽香「え、例えばどんな?」
丹沢「書類上は母と子だけの母子家庭なのに、実態調査へ行くと内縁の夫が当然のように住み着いていたりするんだ」
爽香「その男性もちゃんと住民票を移せばいいのに」
丹沢「移したら、児童扶養手当が打ち切られたり遺族年金がもらえなくなったりするからさ」
爽香「ふーん、悪知恵を働かせてるわけね」




