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デブで無能と蔑まれた俺はアンノウンスキル【バリアフリー】で全てを手に入れる ~俺を蔑み虐げた王族と勇者は地獄を見るようです~  作者: 揚羽常時


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第80話:ロシアンティーを一杯。ジャムではなくママレードでもなく蜂蜜で。


「しっかし……厄介な相手だなぁ」


 愚痴りつつ、俺は距離バリアフリーでワープをしていた。さっきまで俺のいたところにはエクスカリバーがほとばしり、エイテル庭国の王都を一直線のフォトンに変換している。大気も光に変えるので、目に見える攻撃ではあるのだが、アレをまともにくらおうなどとは俺じゃなくても思うまい。


「バーストフレア」


 さらにAランク魔術。炎が猛り狂って俺を襲う。またワープ。民家の屋根に立っていた俺を見上げてバーストフレアを撃った戦闘卿は、その膨大な炎で俺を見失う。俺がワープすることは既に承知のはず。その上で、俺はコンキスタドームの押し合いによる交錯距離クロスレンジに存在していた。そうして必殺の手を戦闘卿に向ける。そのまま。


「エレクトキシン」


 触れた手で接触条件を満たし、スキルを適応。戦闘卿の全身のナトリウムチャネルを全開にして、心停止に追い込む。そうして死亡して倒れ込んだ戦闘卿が、そのままスタックオーバーフロー……じゃなくてスタークオーバーブローで強化された足払いを俺に放つ。倒れようとした瞬間にカウントダウンシンドロームが戦闘卿を生き返らせ、低い姿勢からの回し蹴りに移行したのだ。その蹴りをバリアリブルで簡単に防いで、また触れる。


「RE:エレクトキシン」


 エレクトキシンをミラークールエフェクトで反転させる。今度はフグ毒と同じ効果。つまり戦闘卿の全身のナトリウムチャネルを塞いでみせたのだ。こっちでも筋肉の痙攣は起こり、神経の伝達が機能しなくなり、心肺停止に追い込まれる。だがそれすらも戦闘卿にとっては一回死んだ程度のものでしかない。また復活する。


「捨ぁ!」


 さらなる暴力。負ける気はさらさらない。少なくとも戦闘卿のスキルが暴力を強化するスタークオーバーブローである以上、俺のバリアリブルは貫通できない。だがこっちもあと五回ほど違う殺し方を要求されてもとっさには思いつかないわけで。


「そもそもクオリアドレスを纏っているのに、なぜ貴様のスキルは接触効果が適応されるのだ!」


 理不尽極まりないと戦闘卿が訴えるが、まぁ俺からしたら今更で。バリアフリーによるクオリアドレスの無効化。あえて言うならパーソナルスペースをバリアと見なしたバリアフリー。既に戦闘卿も承知の通りだろう。こっちの攻撃は通用するのに、戦闘卿の暴力は俺に届かない。また俺は離れようとした戦闘卿の背後にワープして触れる。


縮退圧バリアフリー」


 パウリの排他原理を無視するように仕込んだバリアフリー。電子も中性子もボソンの様に重なり、その自重によって潰れて小さな小さなブラックホールへと変じる。もはやそこには現実宇宙の法則も働かず。ブラックホールになった後、ホーキング放射で情報を破壊されて放射線になるしかないわけだが。


「はっはぁ!」


 それでも生き返ってくる戦闘卿に、俺はむしろ感嘆を覚えた。ブラックホールから元に戻ると言うのがどれほど難しいのかは初心者向け科学雑誌でも読めば、誰でも理解する。


『面倒だなぁ。もう宇宙ごと滅却しない?』


 ハミルトニアンの言っていることには合理性はあるが、んなことしたら俺まで死ぬだろうが。


『だから次元壁バリアで戦闘卿を覆って、世界法則を書き換えようよー』


 もうちょっと詳しく。


『さっきのハメカメ波と逆で、今の偽の真空よりエントロピーの高い真の真空をこっちに持ってきて真空を相転移。宇宙法則を書き換えよ? さすがに世界のルールそのものが変わったらスキルの成立もあり得ないでしょ?』


 まぁ言ってることはわかるんだが。マジで天嶮踏破グランレガンの最終決戦にも参加できるレベルの攻撃力じゃね?


『いや、ラスボスの最強必殺技はビッグバン相当のエネルギーをぶつける業だったでしょ? お兄ちゃんの次元壁バリアフリーでプランクスケールエネルギー宇宙の真空を目に見える形で持って来れば、宇宙を一兆回の一兆倍の一兆倍消滅させてもまだエネルギーが余るくらいの威力だから。ゲッペラーでも塵に還るんじゃない?』


 とにかく次元壁で戦闘卿を囲って真空崩壊を起こして殺そうってんだな?


『然りだよー』


 とか言っていると。


「ミリオンレギオン!」


 朗々とスレイブの声が聞こえた。同時に起動したのはコールの通りのミリオンレギオン。どう言う魔術かは見ればわかる。百万のゴーレム兵士が地面から生え出てきて、その全員が戦闘卿に襲い掛かった。というか一体一体が人間と同じ程度のゴーレム兵士だ。百万とか国家レベルの数字を出されるとどう空間に効率性を求めても、王都全域に入りきらない。傍迷惑を目に見える形で具現するハチャメチャな魔術だったが、その意味するところを俺は後で知った。


「どういうつもりだスレイブ!」


「アニキだけに戦わせはしないっす! 拙もジュリアンもジュリエットも、アニキのために戦う覚悟はできているっす!」


 だからそれは俺がもう決着を付けようってところで。真空崩壊を起こして宇宙法則のルールを変更して、存在そのものを消し去る。そうしようとしていたのに、もはやサクとサムのジャブロー攻略戦でも再現するように膨大な量のゴーレムが王都中をひしめき合い、これは戦闘ではなくなっている。全部吹っ飛ばすことはできるが、一応俺はスレイブのやりたいことを信じている。流石に無策で戦闘卿に立ち向かうわけないだろう。というかさっきから俺のコンキスタドームが知覚している感覚がゴーレムのそればっかり。もちろん戦闘卿のコンキスタドーム……相手の言うところの梵我反転もそれを知覚しているのだろう。情報の雑さ加減が極まっているので、クオリアの領域で疾走している一人の人物を見逃す。修羅疾患ジュラシックによって最速で疾走し、しかも後始末ラストレーターによって常に後出しジャンケンで最適化した対処を見せ、一人の敵対者が戦闘卿を襲う。手に持っているのは……マテリアルアブソーバーか? しかしそれで何を? と思っていると、混乱している戦闘卿に思い切り近づいて、それから握っているマテリアルアブソーバーを戦闘卿に押し付ける。俺に触れられて縮退圧バリアフリーをかけられた時より、戦闘卿は焦っていた。


「てめっ!」


 スタークオーバーブローでジュリアンを撲殺しようとする戦闘卿。だが……遅い。


「ロシアンティーを一杯。ジャムではなくママレードでもなく蜂蜜で」


 世にも恐ろしいキーワードを唱えた瞬間、マテリアルアブソーバーが赤く光り、そして戦闘卿は消え去った。残ったのは手のひらサイズだったマテリアルアブソーバーが、成人の平均より高く太く肥大化しているだけ。


「何を……した?」


 たとえばこれだけ大きなルビーやダイヤモンドがあったら高値で売れるだろうなという結晶構造体。ただしその本質はマテリアルアブソーバー。


「戦闘卿をダンジョンに封印したっす」


 封印したって……。そもそも異界を作らないとマテリアルアブソーバーだけあっても。


「拙がSSランクの魔術で異界を創造。その異界に繋がるマテリアルアブソーバーをジュリエットが創造。そして、ソレを使って効率的に戦闘卿の間合いに入れるジュリアンが戦闘卿をダンジョン封印刑に処したっす」


 とすると、戦闘卿をダンジョンマスターにした異界ダンジョンが一つ生まれたってわけか?


「そう相成るっすね」


 攻略する気は毛ほども起きないけども。


「あとは冒険者が戦闘卿のダンジョンをクリアして戦闘卿を殺せば、また一人Sランク冒険者が生まれるってシステムっす」


 つまりこれで一件落着と。


「ところでこの無尽蔵のゴーレムはどうすんだ?」


「土に還すっすよ?」


 パチンとスレイブが指を鳴らすとジャブロー線のサクとサムみたいなゴーレムの集団が、全員地面へと還っていった。


「ってーことは……これでめでたしか?」


 まぁ真空崩壊を起こすよりはまだしも穏便な決着ではあるだろうけど。


 南無三。


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