第72話:ジャイルの誘い
「ふい」
別にダンジョンが快適というわけではないが、食事、睡眠、排泄の要らない空間ではちょっと別の法則が働く。九十レベルの階層の攻略も進んでおり、時折強敵も現れるが何とかはなっている。俺たちのパーティーで一番相性が悪いのは精霊系のモンスターだ。自然現象を操ってくる上に、実体を持たないので殴って解決というわけにもいかない。俺が殺すにはそもそも切るカードが激しすぎ、ジュリアンは後始末で後出しジャンケンは出来るが攻撃手段は修羅疾患に頼っている。なのでこういう時はジュリエットの侵食触診に頼ることになる。こうなるとジュリエットにもコンキスタドームを教えるべきだろうか。タッチタイピングの性質上、触れないと効果が無いのでクオリアを展開するコンキスタドームで意識そのものを接触する術を教えるのも一つの手かもしれない。とはいえ、あの感覚を言葉にするのは俺にはちょっと難しいのだが。
「レイト様♡」
で、最高級のホテルに泊まることになったのだが、そこら辺はわきまえており、ホテルの側もベッドメイクは完璧だ。そしてその俺の部屋にネグリジェ姿のジュリエットが現れた。もちろんセルフミラージュは解いた状態で。溢れんばかりの爆乳に目が行くが、腰がくびれていて、お尻は大きい。男であれば活ホッキが避けられない必中効果。俺としてもジュリエットのエロさは良く知っていても抗い様がない。
「するのか?」
「乗り気ではありませんか? レイト様は?」
「いやー……超したい」
「ん♡ ちゅ♡」
ネグリジェの姿のまま俺にキスをしてきて、そのキスがまた淫靡で。唇を離すと唾液が糸を引いた。
「レイト様のモノをいやしい私にお恵みください♡」
「そこまで持ち上げなくてもいいぞ?」
「レイト様は私のご主人様ですわ♡ 尊崇するのは当然です」
そこら辺の感覚にまだ慣れんのだよなー。
「じゃあ……いただきます」
「どうぞご随意に♡」
そうしてレディとレディファイトして、それも二回や三回では終わらず。ジュリエットの淫靡な声が部屋に響き、俺とジュリエットの汗が混じり合う。そうして終わると、汗を流すために二人でホテルの浴室を借りる。バラの香りのする風呂に入れてもらい、ジュリエットに背中を流してもらう。
「ジュリアンには見せられんな」
「あの子はまだ純粋ですから」
母親としてはもうちょっと純粋でいてほしいのだろう。そもそもジュリアンが惚れる女の子って誰だろうな?
そうして二人で入浴するのだが、ジュリエットの豊満な胸が湯に浮く現象を見て、また俺の中のエロ心がちょっと興奮してしまう。股間の方は出しつくしたのでどうにもこうにもだが、意識だけでも眼福で、マジでジュリエットの爆乳が規格外であることを物語る。
「お揉みになられますか?」
「遠慮しておく」
そのままゴールしていいよねの展開になりそうだ。そうして雑談と猥談を交えながらジュリエットと汗と色んな液を洗い流し、さっぱりして風呂をあがる。タオルで拭って水気を落とすと、衣服に着替えて部屋へ。そうして俺の中のビーストも鎮められたのだが。
「レイト様」
ホテルマンが、俺に連絡事項を持ってきた。
「何か?」
「お客様が来訪されております。失礼ながらレイト様にお話を、と」
「名前は?」
「ジャイル様と申します」
ああ。カジノの支配人か。また俺たちをカジノに誘いたいのかな? ジュリアンとジュリエット(おっさん仕様)を呼び出し、ホテルのフロントに顔を出す。
「おお。レイト様。夜遅くにお呼びだてしてしまい申し訳ありません」
「だったら昼に声をかけろ」
「そうしたかったのですが。お昼はギルドにいるとのことで……」
まぁそれもその通りだが。
「レイト様はSランク冒険者であらせられるのですよね?」
「まぁ一応。一つだけダンジョンクリアしてるし」
「その実力を見込んで、お願いしたい儀がございまして……」
そう言ってペラペラと滑らかにジャイルの口は動いた。
「闇武闘?」
「ええ、カジノの地下に闘技場がありまして。強者同士が戦って、その強弱を決めるのです」
「はあ」
つまり趣味の悪い決闘だ。どうせコイツの事だから、それすらも賭けごとにしているのだろう。参加するなんてまっぴらごめんだが、しつこいほどに「お願いします」を連呼するジャイル。
「Sランク冒険者の沽券を私たちにお見せください。レイト様であればどんな敵もかないませんでしょう?」
「殺人ありか?」
「ええ、ルール上そうなりますな」
「俺は殺人はしたくないんだが」
モンスターならいいのかという話はあるが。まぁ仮に敵対するなら人も殺す覚悟はあるんだがな。
「レイト様ならどんな相手も鎧袖一触でしょう?」
まぁ本気を出せば、と注釈は付くが。
「是非とも闇武闘に。お客様もレイト様をお待ちしておりますれば」
腐臭のするような笑みで、ジャイルはそう言った。
「どうか。どうか」
心底からお願いされて、断り続けていたのだが、最後は俺が折れた。
「一回だけだぞ」
「おお。流石でございます。レイト様。私もレイト様に全財産を賭ける所存にございます」
やっぱり闇賭博か。裏のルールはおそらくだがジャイルより上の何かの意思が働いているのだろうな。
「では時間は明日の深夜。武器はこちらで用意するので、ご心配なきように」
別に武器なんて持たなくても圧勝する気概はあるが。
「それでは明日。深夜にまたこちらに訪問させていただきます」
「ああ、よろしくな」
そんなわけで俺たちは別れた。
「ダンジョンの攻略もあるのに……さらに闇賭博か」
「断った方が良かったんじゃないか?」
ジュリアンがそう言ってくる。その通りではあるんだが。
「まぁレイト様が負ける姿を想像するのも難しいのですけど」
ジュリエットのほうはあまり心配もしていないらしい。
「アニキ。大丈夫っすか? カジノの支配人は腹黒そうだったっすよ?」
「まぁ百階層のダンジョンマスターよりは相手も弱いんじゃないか?」
「それもそうっすね」
ちなみにだが、スレイブは百階層のボスを知っている。そんな気がする。ハミルトニアンは把握しているらしいが、俺に教える気は無いらしい。
「じゃ、明日は元世界に帰るか」
「刺身が食べたいです!」
ジュリエットは生魚をいたく気に入ったらしい。たしかに生鮮食品を異世界に求めるのも酷だが。
「じゃあ海鮮丼でも食いに行くか」
店の予約はクレナイに任せよう。異世界でもスマホは通じるし。




