第71話:九十階層の謎
「は? 情報が無い?」
俺がポカンとしていると、そんな俺に申し訳なさそうに受付嬢が謝罪する。
「申し訳ありません。ダークブルク夜城ダンジョンの九十階層に到達したのはレイト様たちのパーティーが初めてでして……」
なるほど。元々エイテル庭国のギルドが解放しているダンジョンの中でも高難度で知られるダンジョンだ。情報が無いというのも不思議な話ではない……というのはわかるのだが。
「そうするとどういうボスモンスターが現れるのかもわからないと」
「そう言うことに相成ります」
それはそれで困ったなぁ。事前情報が無いということは初見殺しのボスモンスターが現れる可能性もある。とするとバリアフリーのミラークールエフェクトでどうにか対処するしかないわけで。コンキスタドームを展開するのも視野に入れるべき……か。
「あの、大丈夫でしょうか? レイト様たちが強いのは十分に承知しておりますが、ダークブルク夜城ダンジョンの九十階層はまだ未踏破エリア。危険も存分にございます」
虎穴に入らずんば虎子を得ず、だな。
「スレイブは百階層に行きたいんだよな?」
「うっす。足引っ張ってますけど。百階層に行きたいっす!」
「じゃ、そゆわけで」
「どうか十分にお気をつけください。Sランク冒険者はギルドの宝です。せめて生きて帰ってください」
「大丈夫だろ。聖女様の加護もあるし」
不老の祝福は受けているし、不死に関しては、まぁ死ぬの死なないのという意味では死ににくい程度の祝福を受けている。パーフェクトポーションも大量に購入しており、最悪の事態は……まぁ無いわけじゃないんだろうけど。
『お兄ちゃん! スマホチェック!』
今度は何だ。ハミルトニアン。とか言いつつ、スマホを見る。次元壁フリーで元の世界の電波とネットとも繋がっているので電話もSNSも出来はするが。
「レイト様♡ サービスです♡」
ネグリジェ姿のクレナイのエロ自撮りが送られてきていた。
「エッチだな」
俺はそう返信する。
「抜けますか?」
「お世話になると思います」
大嘘ぶっこいたが、まぁ社交辞令。抜きたいも何も、写生(誤字に有らず)したい時はジュリエットとグラディオが相手してくれるし。
「お兄さん♡ サービスサービスぅ♡」
異世界ともネットが繋がると認識した一理カレンも、ちょくちょく俺にメッセージを送ってくるようになった。今日はバニーガールのコスプレをした自撮り写真だ。まぁエロ自撮りの一種だな。グラビアアイドルらしいこぼれそうなおっぱいが前面に押し出されたバニーガール。網タイツの足も眩しい。まぁカレンもいい身体はしているんだよな。
「ウサギさんですか?」
俺のスマホを覗いたジュリエットがそう感想をくれる。
「そ。俺の世界のエッチ衣装」
「私も着ましょうか?」
それは……魅力的だ。こぼれそうな爆乳のジュリエットのバニーガール。股間が滾るというか。見るだけで活ホッキしそうな光景だ。
「想像しちゃいました?」
「そりゃするだろ。ジュリエットのバニーガールかぁ」
きっとバインでボインで、エッチなんだろうなぁ。今度元世界に戻ることがあれば特注で作ってもらおう。できればグラディオの分も。次に元世界に戻った時が楽しみだ。
「ほら。お兄さん♡ 女の子の大事なところ♡」
際どい写真を送ってくるカレンだが、まぁエシュロンも悪い事はしないだろう。一応カレンの名誉のために言っておくが十八禁じゃないからな。R15かと言われると、まぁその議論はまた今度にしよう。
「で、九十階層だが」
なんかエロ自撮りで出鼻をくじかれた感はあるが、それはそれとしてフロアボスである。初見殺しでSランク魔術が飛んでくる可能性も考えて、どうにかしないといけないわけだが。そうしてダンジョンに侵入。スマホはカレンとクレナイから送られてきたメッセージで震えているが、さすがに反応はしない。ダンジョン内でスマホとか、車の運転中より自殺行為だ。八十九階層。そこに飛んで、そこから九十階層に続くポータル。そこを潜り抜けて九十階層へ。既にコンキスタドームを展開はしているので、一瞬でボスフロアを把握はしたが、城のダンスホールの様な空間。だがその広さはダンスホールの十数倍。広ければいいというわけではないが、逃げ回る空間があるのは有難い。で、ボスを見ると。
「――――」
言葉を発さないデカブツ。
「警戒して損したな」
現れたのはダストリウムゴーレム。ただしコンキスタドームにはゴーレムを操っている他の存在は認知できない。つまり、あのダストリウムゴーレムは完全自律状態。このボスを倒せというのが九十階層のコンセプトなんだろうけど……。
「ジュリエット……」
「はい」
今回に関して言えばあまりに相手が悪すぎた。本来であれば生半な装備ではダメージの一つも通らない無敵のモンスターだ。ダストリウムはあらゆる意味で加工できないうえに無駄に重い金属なので、刃物も熱も圧力も何もかも聞かない。圧倒的防御力による、その自律ゴーレムは、ある意味で無敵。それこそSランク魔術のエクスカリバーで光子に変換するとか、そういう圧倒的な威力の手段を必要とするのだが。
「わお。白金がこんなにいっぱい」
ジュリエットが驚いているように、巨大なダストリウムゴーレムは侵食触診によってすべて白金の塊に変換されていた。うーん。これでは八十階層のリッチの方がまだしも強敵だったな。あくまで性質の問題なのでしょうがない理由はあるのだが。白金の塊はジュリエットのアイテムボックスに収納して。ボスのドロップアイテムは。
「何これ?」
赤く光る球体。おそらくだがゴーレムの核なのだろう。
『第二種永久機関だよー』
あっさりとハミルトニアンがありえないことを言った。第二種ってマクスウェルの悪魔のアレか?
『それそれー。だからそれでゴーレムを造ると半永久的に動くの。売ったら白金貨で一千枚はかたいかなー? 錬金術師に売ったらもっと値がつくと思うよー。ギルドに売っちゃうのはもったいないね』
じゃあ適当に錬金術師を見つけて交渉してみるか。そうして九十階層をクリア。深層の後半を攻略しながら、俺たちは百階層を目指した。
「お帰りなさいませ。その様子だと九十階層も?」
「ああ、クリアした」
「そのー。不躾ですけど、九十階層のボスについてお聞かせ願えませんか? あ、情報料はギルドが支払いますので」
というわけでダークブルク夜城ダンジョンの九十階層のボスは自律型ダストリウムゴーレムと判明したわけだ。まぁそれはいいんだが。
「こんなに貰っていいのか?」
と白金貨三十枚を貰って、俺はちょっと申し訳ない気持ちになる。
「九十階層のボスモンスターの情報ですから。むしろありがたい限りです」
さいでっか。
「ドロップアイテムも良ければ買い取りますよ?」
第二種永久機関はここで売るつもりはないが。
「ジュリ。あの白金の塊。売ったらどうだ?」
「まぁ確かに持っていてもどうしようもありませんしね」
彼女も納得した様だった。見た目おっさんをジュリエットと呼ぶわけにもいかないので、俺はジュリと呼んでいる。そうして巨大な白金の塊を売ると、またそれで大金が。




