第68話:聖女の行進
「聖女様じゃ……」
「聖女様」
「賢王グラディオ様が戻ってこられた……」
感涙にむせび泣くところ悪いが、ヘルメス聖国がアリフレム王国にもたらした被害についてはどう清算するんだ? 涙を流して聖女グラディオの帰還を歓迎したアリフレム王国の民。今まで搾取されまくって、低賃金でマテリアルアブソーバーを取引され続けた。そのマテリアルアブソーバーも適正価格で取引されるようになり、商人たちも適正価格でアイテムボックスを売るようになる。全て順調、と言えればいいのだが。俺から見てもヘルメス聖国のアリフレム王国に対する賠償金はちょっと常軌を逸している。別に賠償するのはいいのだが、それによって得られる対価が存在しない。
「とするとだ」
俺としてもどうしたものか?
「どうしたものかね。本当に」
今は聖女を乗せた引き車がアリフレム王国を横断しており、喝采に沸く国民の皆様にどうしてもファンサービスをせねばならない。大仰な造りをした神輿の上にグラディオと、それから俺が乗って、ニコニコと微笑みながら、グラディオは手を振っていた。
「大丈夫か? こんなことしていて」
「大丈夫だと思いますよ別に何をするでもないんですから」
まぁお前がそう言うなら俺から言えることはそう無いが。そうしてアリフレム王国の街中を手を振りファンサしながら神輿で練り歩き、歩いているのは神輿を担いでいる男どもだが、ソレはまぁよく。
「フレイムバースト!」
もちろん、そんな聖女様の命を狙う不届き者は枚挙にいとまがなく。火炎が濁流となって流れ出し、担がれている神輿を燃やし尽くさんと襲い来る。まぁご苦労様としか言えんのだが。ミラークールエフェクト。バリアフリーをバリアリブルに鏡面反転させる御業。これある限り、グラディオの暗殺は無理だ。というか順転エネルギーを無限に持つグラディオを殺すのがまず物理的に無理なのだが。あえて出来るとすれば俺くらい。一応殺す手段をグラディオにも説明したのだが、「よくわかりませんが殺したいならどうぞ」という有難い御言葉を頂いている。ちなみにここでやった場合宇宙そのものが別の空間に変質し、人間どころか原子レベルで違う法則に支配される。一種の真空崩壊という奴だ。
「グラディオ様! 賊を捕まえましたぞ!」
フレイムバースト。Bランク魔術。火の属性。炎の濁流を流して前方の敵を焼き尽くすのだが生憎とそんな可愛げのある女ならまだしも暗殺は楽だろう。
「牢にでも放り込んでおいてください」
他に言う理由もなく、そう言ってしまうグラディオの気持ちたるやいかばかりか。
「まったく聖女様を狙うとは」
「不届き者」
「信じられん行為だ」
「南無三」
最後のはちょっと違うような。そうして一時問題は起こったものの、グラディオの行進は最後まで終わって、最終地点であるアリフレム王国の王城に出向くことになった。ついでに俺まで……何故よ?
「パレードの最中、賊が襲ったことをまずは謝罪したい」
「いえ、立場はわきまえていますので。陛下がお気にするの事ではありませんわ」
ニコッと微笑むグラディオだったが、それこそ悪魔の笑みに見えたろう。俺でも震える。香取閃光を手に入れて、刀を持てば最強。しかも地平線まで切り裂く距離無視の斬撃を操れるのだ。場合によっては聖女の機嫌次第で軍隊が消滅する。と、そこまで分かっているので、あえてニコニコしているのだろう。グラディオは。
「そのー。そちらは?」
「救国の英雄。レイト・ペネト様ですわ」
晴れやかな笑顔で説明してくれて恐縮だが、そんな御大層なモノでも無いぞ。
「グラディオ陛下の賠償金によってアリフレム王国も持ち直してきました。経済も健全になりましたし、感謝しかございません」
「むしろ謝るのはこっちですわ。まさか百年もダンジョンで放浪する羽目になるとは」
正確にはダンジョンマスター。つまりセイントブルク神殿ダンジョンのラスボスだったのだが。そこまではリップサービスをする理由も無いわけで。
「それでも賢王グラディオ陛下の復活を我々は待ち望んでいたのです」
「あら、ありがとうございますわ」
「ところでフェイクリストの皆様はちゃんと働いていますか?」
「…………」
軽やかな井戸端会議……のつもりだったのだろう。少なくともグラディオの方は。それが何故か苦虫を嚙み潰したようなって奴。
「いくつかあるマテリアルアブソーバーの採掘場の一つ。そこで虐殺が起きました」
「穏やかじゃありませんね」
「実際に穏やかじゃありません」
でしょうよ。
「虐殺を起こしたのはおそらくユウシ・ヤサマ。どうやってか奴隷契約の解除をして、採掘場の上司を虐殺。逃亡を成功させたそうです」
「行方は?」
「足取りはまだ……」
まぁそうなるよな。
「ではそれはそれまでということで」
「グラディオはいいのか?」
「襲ってきたら返り討ちにしますし」
恐ろしい御仁やでぇ。
「ところで癒しの時間ですけど……」
「既に王城にはケガ人や病人が集まっております。聖女様のお力をお貸しください」
言われて力を貸すバカが何処に……という議論が無駄なほど聖女グラディオはアリフレム王国の国民にその力を分け与えた。ヘルメス聖国の悪感情を消したい。その意図もあったのだろう。だが何をするにしてもグラディオの異常なまでの再生能力は正に神業で。
「ありがてぇありがてぇ」
「これ、ウチのカボチャで……」
「流石聖女様じゃ」
特に老人は多大な列を作って聖女様にあやかりたいらしい。気持ちはわかるがやりすぎではありませんか? 腰が痛いのも筋肉痛が酷いのも、全部自分で直せよと思うのは俺の傲慢か? そうして次々アリフレム王国の国民のケガや病気や障害を治していき、ヘルメス聖国の印象を上向かせて、それを持って贖罪とする。
「ヘルメス聖国! 天誅!」
という賊も出たが、ご退場願った。俺は別にいいんだが世の中コンプラがあるからな!
「そ・れ・でぇ♡ レイト様ぁ」
「やるのか?」
「そのためにアリフレム王国の王城の部屋を一緒にしたじゃないですか♡」
なるほど。そういう意図があったのか。衣擦れの音がする。フワリと服がはだける音がして全ラのグラディオが俺の前に立つ。
「言っとくが……手加減しないからな」
「レイト様のお望みのままに♡」
そう言ってくれるのは嬉しいが。
「まずはどこでしますか? 口? 胸?」
「じゃあ――――」
俺は要望を伝えた。その通りにやってくれるグラディオ。まさかアリフレム王国の一室で聖女グラディオが俺相手に腰を振っているとは思うまい。
「あ♡ あ♡ あ♡」
俺のマーラ様を受け取ってほとばしる性欲に腰が動くグラディオ。ここにジュリエットがいなくて本当に良かった。三人でやると俺が限界まで搾り取られる。意外とジュリエットって積極的なんだよな。
『おほぉ♡ グラディオの身体最高♡』
俺を通じてグラディオの身体を感じているハミルトニアン。気持ちよさそうに俺の脳内で遊んでいるというかそうじゃないというか。
『お兄ちゃ~ん。次の体位だけどぉ』
だからそういうのはグラディオと相談すべきで。二回戦。三回戦。四回戦。
「はぁ♡……はぁ♡……はぁ♡」
さすがのグラディオも体力が持たないらしい。何でも聞くにブリリアントカッターで俺をイケメンにした際にアレをでっかくして絶倫に。ついでに戦闘能力まで過積載したらしい。どれだけ俺の以前の様が酷かったのか。ソレを思い知った気分。




