第62話:国営カジノと後始末
「レイト様。御面会を申し出ているお方がいらっしゃるのですが……」
俺がジュリエットと一夜のお楽しみをしていると、そんな風にホテルマンが報告してきた。
「面会?」
キョトンとして、それから全ラのジュリエットを見て、二人で瞬き。こんな夜遅くにか?
「スレイブは寝ているでしょうし。私とレイト様でお相手しましょうか」
「ジュリアンも呼ぼうぜ」
「まぁ起きてはいるでしょうけど」
一応セクロスも終わっているので、出すモノは出しているのだが。面会相手も急な訪問で申し訳ないとホテルマンを通じて言ってきているので、まずはシャワーで汗を流す。さすがにセクロスの匂いを残したまま他人に会うわけにもいかないし。そうして俺は正装をして、ジュリエットはナイトドレスを着て、俺の腕に抱き着いている。ジュリアンは日本で買った服を着て面会相手に相対した。日本の服はチクチクしないので、ジュリアンはかなり気に入っているらしい。
「おお、お待ちしておりました。レイト様。このようなSランク冒険者のお方に面会出来て光栄の極みでございます」
それが要件というわけでもないのだろう。
「で、何の用だ?」
「わたくし。国営カジノの支配人をしているジャイルと申します。今宵はレイト様をカジノに招いて、娯楽を提供したく存じまして」
国営カジノね。エイテル庭国ではカジノは国営らしい。まぁ妥当だとは思う。国営カジノならならず者どもの仕切るギャンブルと違って金は国庫に入るし。そう言う意味では外国に金の流れるパチンコを廃止して日本も国営カジノを運営すれば、国庫も潤うと思うんだが、やっぱり賭け事はマイナスイメージが付きまとうので、国としてもフットワークは重くなるのだろう。俺はどっちかってーと日本の国営カジノは賛成派。どうせ金を落とすなら国に還元してくれというのが本音。
「というわけでどうでしょう? VIP待遇でご案内しますが……」
「賭け事は別にいいんだが」
チラリとジュリアンを見る。コイツのアンノウンスキル、後始末を用いれば賭け事においては無双できる。俺はジュースでも飲みながらジュリアンに遊んでもらって金を稼げればいいか、と思ってカジノの支配人ジャイルの誘いに乗る。
「是非とも楽しい一夜をお過ごしください」
ホテル前に止められていた豪奢な馬車に乗って、カジノまで。ライティングの魔法で、夜だというのに目が痛い光源が確保されていた。そこではナイトドレスを着た淑女。スーツを着た男性。誰も彼もが大商人か貴族だろう人間どもがたむろしている。
「ここって何するところなんだ?」
ジュリアンはまだ少年だし、知らないのも無理はないか。
「賭け事。金を賭けて遊ぶ施設だ」
「金をか?」
「そ。詳しくはジュリエットに聞いてくれ」
「母さん……」
ジュリエットは流石に知ってるらしく、トクトクとジュリアンに語っていた。
「レイト様。お飲み物をご用意しましょうか?」
支配人のジャイルが揉み手をして俺のゴマをすってくる。あんまり自覚はないが、Sランク冒険者の立場というのは国にとっても無視できないらしく、カジノの支配人でも横柄な態度はとれないらしい。果てしなくどうでもいいが。
「オレンジジュースをくれ」
「アルコールも揃えておりますが……」
「酒は禁止している」
別に日本じゃないんだからいいとは思うが、自重しても損するわけじゃないし。
「テーブルゲームが基本なのな」
ポーカー。ブラックジャック。ルーレット。バカラ。さすがに電気インフラが無いのでスロットの類は存在していないらしい。機械文明が無いという意味では残念だが、まぁ逆にそれがいいのだろう。
「レイト様は賭け事をお楽しみにならないのですか?」
「見てるだけで楽しいから。ジュリアンとジュリエットが遊ぶからそれでいいだろ?」
「ライカンスロープの奴隷ですね。もちろんレイト様の財産ですので礼は尽くしますよ」
そうじゃなかったら叩きだしている、とも受け取れる。まぁ二人とも猫耳を付けているが、一応服はまともなモノを着ているので場違いではない。ジュリエットはナイトドレスで爆乳を強調し、男どもの視線を集めている。一応今はセルフミラージュをかけていない。
逆にジュリアンは日本のデニムファッションで固めており、この世界ではまだ見ぬ文化の衣装。だがその特異性というかデザインの統合性はしっかりしたものだから、カジノの客が注目している。特に大商人の中にはジュリアンのデニムファッションに目を付けて、どこで売っているのか聞こうとしている。まさか異世界で、というわけにもいかず。適当な意見でお茶を濁していた。
「ジュリエット様はお酒をたしなみますか?」
「そうね。ワインを貰いましょうか」
「すぐに用意させます」
そうしてSランク冒険者の歓待をするためにカジノの人間が奔走し、それから賭け事が始まった。俺はノータッチ。ジュリアンはルーレットに興味をもったのか。どう言うゲームなのか聞いて、それから理解を深めた後、挑戦するのだった。ああ。先の展開が読めるようだ。白金貨二枚をチップに交換して、それからルーレットに望んだ。
「じゃあ」
とルーレットの賭け事のルールを理解して、番号指定で全チップを投入し、他にも参加しているギャンブラーに溜息をつかせていた。うん。まぁ。番号指定……つまりインサイドベットで全ツッパは普通に考えて大損コースだが、ジュリアンには後始末があるからな。ハスラーと揶揄されてもしょうがないがコイツはそう言うレベルを超えている。そうしてルーレットが回り出し、弾が放られる。参加しているギャンブラーはドキドキで見ているが、ジュリアンだけは普通に平常心。そしてジュリアンが賭けている番号のポケットに収まる玉。レートはインサイドベットなので数十倍。白金貨二枚分のチップがさらなる大金に増幅する。それでギャンブラーたちの目の色が変わった。
「あら、また勝っちゃいましたね」
インサイドベットで異常なまでの金を稼いでいるジュリアンとは別に、テーブルに座っているジュリエットがディーラー相手に無双していた。ポーカーフェイスでポーカーに臨み、ディーラーを翻弄してチップを着々と増やしている。ジュリアンはスキルによるものだが、ジュリエットの方は普通にギャンブラーの才能があるらしい。
「は、はは、お強いですな。御二方とも」
支配人が青筋を立てていた。まぁインサイドベットに全ツッパして勝っていれば、そのレートは数十倍。金を稼ぐだけならダンジョンに潜らなくてもカジノがあるだけで稼げるレベル。まぁダークブルク夜城ダンジョンはスレイブが用があるらしいから攻略はするのだが。既にチップがカジノの想定を超えて高まっているジュリアンのやり方に、恩赦を申し出るカジノの店員。このままインサイドベットで全ツッパして数十倍の数十倍の数十倍にチップを増やされるとカジノが破綻する。どうかお情けを、と泣きつかれて、俺もジュリアンの肩を叩いて首を振る。ここまでにしておけ。
「レイト様がそう言うなら勘弁するっす」
そうしてチップを全て換金すると白金貨で三千枚を超えた。おそらくこの国営カジノでは破滅的な数字だろう。支払えないわけではないが、出禁を喰らってもおかしくない。
「あら、もう終わり?」
そうしてホクホク顔で換金した白金貨三千枚をアイテムボックスに収納したジュリアンと一緒にジュリエットを迎えに行くと、こっちもこっちでディーラー相手にボロ勝ちしており、元金の五十倍程度勝っていた。だいたい白金貨で百枚程度。
「は、はは、さすがはレイト様とその従者ですな……」
さすがに正式に賭け事で勝った金を返せとも言えず。支配人は冷や汗をハンカチで吹いていた。まぁ金に困ったらジュリアンとジュリエットに稼いでもらおう。ダストリウムを白金に変換するよりカジノでぼろ儲けする方が話が早いのはわかった。




