第61話:エロ自撮り
「どうする?」
「どうすっかー」
「どうしましょう?」
「どうするっすか?」
ダンジョン攻略もそこそこ進んでいるのだが、今は五十五階層。中層に入って大体後半。下層に通じるポータルは城の玉座に有り、そこを守っているボス……とまでは言えないけど強いモンスターがいて、それが妖精だった。風の妖精。風圧で俺たちをポータルに寄せ付けないように嫌がらせをしている。単純に風が具象化した存在なので、どちらかと言えば霊的な対抗手段が必要になるのだが。俺のバリアフリーはミラークールエフェクトによってバリアリブルを展開し、強風から全員を守っている。
ハミルトニアンさん?
『え、エッチなことですか?』
違うって。どうすればいいと思う?
『風だって大気の成分に圧力をかけているんだからジュリエットの侵食触診でニュートリノに変換すればいいじゃない』
なるほど。盲点だった。
「というわけでジュリエット。お願いできるか?」
「ニュートリノというのはレイト様から聞かされていますけど、ふんわりとしか理解していませんよ?」
「それで構わん。俺もバリア張ってるけど理屈は理解してないし」
「では」
というわけでバリアリブルから外に出て、荒れ狂う暴風をニュートリノに変換して、無害化せしめているジュリエットはマジで空恐ろしい。俺が言えた話でもないけど。
『お兄ちゃんお兄ちゃん。スマホ見て』
すまん。今ダンジョン攻略中で。車運転する時にスマホ見るより危険すぎる。
『いいから見てー! クレナイのエロ自撮り送られてきてるからー!』
はあ? ここは異世界だぞ。スマホが通じるはず……。
『次元壁フリーを応用して元の世界の電波とネットにお兄ちゃんのスマホを繋げたの』
それも盲点だったな。次元壁フリーを応用すれば異世界でもスマホが使えるのか。電池式のバッテリーと大量の電池もアイテムボックスに入っているし、電源が切れることは無いのだが。
『どうせ強風が終わるまでバリアリブルを張るだけでしょ?』
異論の余地もない一言だった。で、アイテムボックスからスマホを取り出して起動。新しいお知らせにSNSの新規コメント通知。相手は百八クレナイで、そのままセキュリティを突破して、彼女のコメントを見る。
「新しい下着を買いました♡ 一番にレイト様に見てほしくて写真を送ります♡」
というコメント。そしてネグリジェ姿のエロ自撮りがSNSで俺に届けられていた。
「これは……」
『はわー! 抜ける! クレナイちゃん可愛い~!』
ハミルトニアンが俺の脳内で大騒ぎ。大丈夫かお前?
『だって百八財閥の令嬢のエロ自撮りだよ? アレも大きくなるでしょ?』
否定はしない。っていうかお前は全知なんだからいくらでも見れるだろ。
『だから知ってることと体験は違うんだって。豚骨ラーメンの美味しさを弁舌を尽くして説明されて、その説明だけで豚骨ラーメンを美味しいと思える?』
まぁ俺というインターフェースを介しないとハミルトニアンが世界を知覚できないのは俺も熟知しているのだが。
「あ、既読付きましたね! レイト様! 電波繋がったんですか!?」
「そうみたいだな」
風の精霊から身を守りながらスマホでクレナイと会話するこの無益性。
「じゃあこれからは連絡が取れますね。いっぱいお話ししましょう」
「すまんが忙しい時の方が多いので、返信には時間がかかるぞ」
「いつまでも待ちますわ♡」
文の終わりにハートマークをつけるほどか。
「さて、そうすると」
さっきまで轟々と吹いていた暴風が鎮まった。風の精霊に触れたジュリエットが、そのまま精霊をニュートリノに変換。こうして五十五階層は踏破されたわけだ。そのまま五十六階層。城には武装したゴブリンジェネラルがウヨウヨいて、浅層だと強いモンスターだが中層では雑魚モンスター扱い。
「じゃ、やっちゃって」
血在魔法。修羅疾患。それによって叩きのめしているジュリアンとジュリエットを見ながらスレイブに気を配って、堅実に攻略していると。
『お兄ちゃん! スマホ見て!』
またかよ。一応まだダンジョン攻略中なんですけど。
『クレナイのコスプレ自撮りが送られてきたから』
ソレはちょっと見たいかも。というわけで見る。ゴブリンジェネラルを叩きのめしているジュリアンたちを横目に、俺はスマホを見る。
「どうですか? レイト様?」
魔法少女まさかマジか……そのまさかのコスプレをしたクレナイが映っていた。とても可憐で可愛い。ジュリエットやグラディオみたいな神秘性は無いが日本人らしい大和撫子の可愛さがクレナイにはある。その彼女がピンク髪のウィッグを付けて魔法少女のコスプレ。スタイルいいし、魔法少女というには大学生だが、まぁそこはいいとして。
「超可愛いぞ」
「ありがとうございます♡ じゃあこっちも♡」
と、今度はまさかマジかのコスプレでパンツの見えている自撮り写真が送られてきた。
「こういうの送っていいのか?」
「レイト様がネットに流出させなければ大丈夫ですわ♪」
信用されているのか舐められているのか。
「こういうのも」
と、魔法少女の際どい零れそうな胸の谷間の画像が送られてきた。
「抜けますか?」
『抜ける!』
黙っとれ。ハミルトニアン。
「まぁおかずに使わせてもらいます」
社交辞令だけ送って、スマホをアイテムボックスへ。それからコンキスタドームでマッピングし、最短距離でポータルまで。現れたのはゴブリンロードだったが、フロアボスでもあるまいし。ジュリエットの侵食触診の敵ではなかった。
「さて、じゃあ五十七階層に潜ってから帰るか」
「そうしましょう」
ジュリエットも賛成らしい。ダンジョンで睡眠が要らないとはいえ、疲れはたまるし集中力も削られる。リソースの問題だ。
「あのー。それでさ。ジュリエット」
「わかってますわ。夜のお相手ですわよね?」
ペロリと唇を舌で舐めて、俺を性的に見るジュリエット。おっさんの姿でされても気持ち悪いんだが、一応セルフミラージュさえ解けば、ジュリエットは立派な爆乳バツイチ奥さんだ。
「そう言えばスマホを見ていらっしゃいましたよね? その……通信? こっちの世界には繋がらないのでは?」
「なんか次元壁フリーで繋がるようになった」
「じゃあカレンさんやクレナイさんとも会話できると」
そういうことになるのかな?
「何を話していたんですか?」
「…………」
俺はそっとクレナイのコメントを見せる。エロ自撮り写真が載せられていて、ソレを見てジュリエットはクスリと笑う。
「それで辛抱たまらないと」
というわけでジュリエットの爆乳で処理してくれ。男の性欲の厄介なことよ。




