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デブで無能と蔑まれた俺はアンノウンスキル【バリアフリー】で全てを手に入れる ~俺を蔑み虐げた王族と勇者は地獄を見るようです~  作者: 揚羽常時


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第54話:Sランク冒険者同士の決闘


「そもそも君たちの様な冒険者では浅層を攻略するので精一杯だろう? そこの腰巾着を百階層まで案内するなんて出来ないだろう。心から忠告しておくよ。止めておいた方がいい」


「あー。御忠告だけいただいておきます」


 なぁハミルトニアン。


『え、エッチなことですか?』


 だから違うって。コイツって……。


『今検索するね。Sランク冒険者、ウォールだよー』


 俺が関係すると、あっさりとハミルトニアンは検索してくれるんだよな。強いのか?


『そこそこね』


 ハミルトニアンの口ぶりから言えばあんまりそうでもないらしい。


「君如き冒険者では百階層までなんて無理だ。それはSランク冒険者のボクが保証しよう」


 さいですかー。


「じゃ、そゆわけで」


 対応するのも疲れるし、ここは普通にスルーしよう。


「ボクは君たちを思って忠告しているんだよ? 聞き入れるのが初心者冒険者の態度というものじゃないかな?」


「どう思う?」


 俺はジュリアンとジュリエットに聞いてみる。


「聞く価値のない情報で」


「ですね。忠告にしては意味がないというか」


 あっさりとジュリアンたちはウォールを貶めた。もちろんそれで激昂しないわけもなく。


「ボクを蔑ろにするのか?」


「聞く価値ありませんし」


「せめてもうちょっと建設的な意見を言えれば話を聞く気にもなるがな」


 ジュリエットもジュリアンも言いたい放題だった。


「あの。アニキ。ウォールさんはガチSランク冒険者でして……」


「さいですかー」


 俺にはまさにどうでもいいというかなんというか。


「そこまでいうのなら君の実力を見てあげるよ。まさか逃げはすまいね?」


 逃げてもいいけどなー……と思ったりなんかして。Sランク冒険者であればそこそこ出来るのだろう。


「表に出ろ」


 クイッと親指で外を差して、それから一人外に出ていく。追いかける必要はないように感じるのだが、まさかここでスルーすると報復が待っているようで怖い気もする。


「仕方ない」


 ハミルトニアン。何とかしてくれ。


『え、エッチなことですか?』


 だからウォールなるSランク冒険者にどうすれば角を立てずに決着がつけられるのか。


『ボッコボコにすればいいんでない?』


 新米冒険者と目されている俺がか?


『どっちにしろいずれバレるって。それだったらいっそバレた方がいいんじゃない?』


 言っている意味は分かるが。


『あと今日はジュリエットを抱いてね♡』


 お前、エッチだな。


『お兄ちゃんがそうさせるんだよ♡ 調教されちゃった♡』


 いや、大日如来に調教とかありえないから。


「じゃあ始めようか。君は素手をむねとするのかい?」


「はぁ。まぁ」


「察するにスキルホルダーかな。剣を用いない戦いなら、それも納得だ」


 さすがにバカではなかったらしく、Sランク冒険者の経験則をあっさりと語る。まぁ何と言われてもいいっちゃいいんだが。


「じゃ、いくよ。君が一体どれだけできるのか。ボクが見測ってあげるよ」


 言われた瞬間、ウォール氏が突撃してきた。速さはそこそこ。斬撃は流麗。さながら流れる水の如く。


「ふ、ほ、は」


 ヒュンヒュンと剣を振るウォール氏に、俺はスルリスルリと避けて見せる。思ったより身体が動く。何というか。グラディオのブリリアントカッターでイケメン細マッチョになったが、それとは別にフィジカル強化も付与してくれたとのことで、その性能を試していたのだ。ヒョイヒョイと避けながら、焦る風でもないウォール氏の剣閃を躱す。


「やるね。じゃあもう一段ギアを上げようか」


 さらに剣閃が鋭くなる。だがそれすらも避けきって見せた。


「やるぜ。アイツ」


「ヒラメキのウォールの剣を避けている……ッ!」


 ヒラメキってのは二つ名かな。


「いいから最速で来い。俺の腕を試すなら、その程度じゃ物足りないぞ」


「オーライ。わかったよ。新米冒険者と侮ったことは謝罪しよう。君はボクが本気になるに値する冒険者みたいだ。でも、全力のボクは肉眼では捉えられないよ?」


 ニコリと微笑んで、ウォール氏はかき消えた。まっすぐ突っ込んで来れば効率的だろうに、わざわざ背後をとる。回り込むだけ無駄だと思ったが演出があるのだろう。これだけ無駄なことをしても相手が反応できないだろうという。残念ながら、俺はコンキスタドームを半径三メートル程度広げているので、この領域内で起こることは全部知覚している。その上でフィジカルを強化しているので、背後から振るわれるウォール氏の剣を背中を向けたまま避け続ける。さすがに最初こそ俺がついて来れてないと侮って寸止めを考慮した斬撃だったが、じわじわと気づきだす。俺が背後を見ないで、しかしウォール氏の斬撃を全て知覚していることを。最高速。剣を寸止めする躊躇いを非効率と断じたのだろう。今度は殺気こそないが、有り得ない速度の斬撃が俺を襲う。


「よ、と、ほ……」


 その斬撃すらもヒョイヒョイと避けて、そのまま今度は俺がウォール氏の視界から消えた。


「ッッッ???」


 そこに見えていた俺が消えた。その意味を理解し、気配を探って周囲を見る。だが俺は見つからなかった。当たり前だ。俺は今ウォール氏の頭上にいる。ムーンサルトの要領で身体を上下逆にしてウォール氏の頭上を取る。人の視界は横に広いが縦に狭い。テレビの画面のアスペクト比が16:9なのは、つまり人間の視界が横に広い事に対応するが故の生物的な科学検証の結果なのだ。つまり上下の動きは、左右の動きより捕らえられにくい。


「どこだ!」


「ここだよ」


 ウォール氏の頭上で身体を上下逆にして、そのまま彼の頭部に触れる。さすがに街中で兜はしていないので、頭に直接触れる。


『やっちゃえお兄ちゃん!』


「エレクトキシン」


 ウォール氏の細胞孔バリアをフリーにする。さすがに肺や心臓を止めるとマズいので、手足だけ。痙攣した筋肉が言うことをきかず。剣を取り落して膝をつく。そのまま倒れようとしたところに。


「ヒール!」


 とっさに回復呪文を唱えて、毒を解除。そうしてたたら踏んで、姿勢を立て直すと。


「御明算かね?」


 ウォール氏の剣を握って、それを彼自身の首に添えている俺がいた。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 ウォール氏。そのパーティーメンバー。ついでに野次馬。全員がポカンとして、それから野次馬が喝采を上げた。彼らが俺たちをダシに賭け事をしていたのは知っていたし、ジュリアンとジュリエットも俺にそこそこの額をベットしたのも知っている。大穴狙いの俺の勝ちで、俺に張っていた野次馬が喜んでいるのだ。


「お眼鏡にかなったかな?」


「Sランク冒険者のボクを下すなんて……君は?」


「一応Sランク冒険者だったりして」


 ヒョイ、と冒険者カードを見せる。


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