第49話:検問と都市と
「じゃあエイテル庭国の都市には付いたわけだ」
相変わらず忙しそうに書類に判を押しているグラディオ。馬車の旅はそこそこしていたが、途中途中で距離フリーによってヘルメス聖国にも顔を出していたのだ。盗賊程度ならジュリアンとジュリエットだけで事足りる。
「ヘルメス聖国に異変はないか?」
「商人の数は少し減りました。だが問題と言うほどでもない」
「まぁマテリアルアブソーバーが値上がりすればな」
「大丈夫です。聖女グラディオが返り咲いたのだ。治癒をしてもらいたい人間が私への面会を求めて大陸中から訪れる。マテリアルアブソーバーに頼らなくてもヘルメス聖国は安泰ですよ。むしろ私がいなくなったことで、あの愚王どもは経済の根幹をマテリアルアブソーバーに依存せざるを得なかったのだろう」
なるほど。そう言うからくりか。
「で、都市には入りましたか?」
「まだだ。検問があるからな。商人とは別れて、座標はチェックしたし、距離フリーを使えばいつでも戻れるから、お前に顔を見せに来たってだけ」
「嬉しい事です。レイト様に会えるなんて」
「一国の王が俺に様付けはいいのか?」
「レイト様は私を支配してください。玉座に座るとダモクレスの剣の問題に突き当たりますから、その危険性は私が飲みます。レイト様は安全な場所で一国を支配する王を陰から支配する闇の支配者として君臨なさってください」
それも悪い気がするんだが。
「ところでグラディオ。プラチナほしいか?」
「白金ですか? まぁ貰えるなら欲しいですが……」
「いいよな。ジュリエット?」
「もちろんですとも。レイト様のご意向に異論はありませんよ」
ニコッとジュリエットは笑った。
「プラチナを譲渡してくれるのか?」
「ん。ああ。だが大量にありすぎてな。どこか人目がつかないセキュリティのしっかりしている宝物庫とかあるか?」
「無論だ。地下倉庫でいいだろうか?」
国庫とは別に希少品を保管する場所があるらしい。そこに案内されて、意外と広い地下倉庫に俺もちょっと驚き。俺が最初に閉じ込められた城の地下牢はあまりに狭かったので、何というか比較してしまう。
「じゃあほい」
アイテムボックスから大量の白金を取り出す。
「国の経済の下地にしてくれ」
「こんなに大量の白金を……どうしたんですか? まさか鉱脈から横領?」
間違ってはいないな。ジュリエットの侵食触診について話す。
「むぅ。そうか。ダストリウムを。それなら我が国にもダストリウムの鉱脈はあるから後日それも貴金属にしてもらえると……」
「いいか? ジュリエット」
「レイト様の御心のままに」
じゃあ、そういうわけで。ジュリエットの淹れてくれた茶を飲みながら、執務室でダラダラする。ジュリアンは下町に遊びに言っている。まぁ後始末があるから最悪の事態にはならないだろう。
「それでそのー。レイト様。夜の事なのですが……」
頬を赤らめて、グラディオが恥ずかしそうに俺に言う。
「まぁいいけどさ」
「レイト様。私にもお慈悲を♡」
「はいはい。ジュリエットもね」
そうして城に一拍して、その夜はジュリエットとグラディオ相手にレディファイト。レディとファイトするという意味で。
「Sランク冒険者ですか!?」
ヘルメス聖国で一泊した後、ワープでエイテル庭国にとんぼ返り。検問があったので、身分証明になるものを、となると冒険者のカードで対応した。既にグラディオの口利きで、俺はセイントブルク神殿ダンジョンの攻略者として認知されており、Sランク冒険者の地位を得ている。
「ちなみにこっちの二人は俺の奴隷で、何か問題を起こしたら俺が責任を取る」
「あ、はい。了解しました。ではお通りください」
税金はとられたが銀貨二枚だ。既にそんな金を問題にしない程度には稼いでいる。で、俺たちが何をしているかというと旅行だ。せっかくファンタジー世界に来たのだ。エルフやドラゴンを見たいだろ? グラディオは仕事があるので連れて行けないが、まぁジュリアンとジュリエットがいるだけでも一国滅ぼせそうなので何の問題もない。というかまず俺がバリアフリーの扱い方を間違えてこの星を蒸発させないかが心配だ。次元壁フリーの応用である「はめかめ波」は場合によって恒星系どころか銀河系が吹っ飛んでもおかしくないレベル。微細な調整はハミルトニアンの推理大説に任せるとしても、総エネルギー量が膨大すぎて、それこそ超銀河グレ〇ラガ〇と正面から戦えるレベル。
「とりあえず飯にするか」
そんなわけで都市部に入って、飯屋を探す。肉とか食えたら嬉しいんだが。基本小麦社会らしく、パンやパスタが何処でも食えるとのこと。
「レイト様、この後はどうしますか?」
王都に出向いて冒険者ギルドに顔を出す。ダンジョンとか挑戦してみたいしな。
曰くダンジョンを作るのはプリモーディアル・プリヴェント・プリズン・プリンシプルという原理によるらしい。世界にとって危険とされる存在を封印処置して、その封印された存在の心象風景が異界として広がり、一つの異世界に認定されるとそれをダンジョンと呼ぶとか。つまりセイントブルク神殿ダンジョンが荘厳な神殿の造りをしたダンジョンだったのはアレが彼女の心象風景だったのだろう。趣味がいいのは流石王族か。
「では目指すは王都ですね。適当に馬車でも借ります?」
「交通の便としてロードランナーが引く車があるんだろ? 乗ってみたい」
馬より早く走るトカゲ。ロードランナー。ドラゴンとは言えないが、これもファンタジー世界の醍醐味。
「俺たちの国にも車ほしいよなー」
一々ガソリン補給するために元の世界に戻るのがな。オフロードの車ならワンチャン。まぁ週一で戻る約束はしているし、異世界では免許もいらない。さすがに異世界の大陸を走るにしても一週間でガソリンが切れることはないだろうが、いちいちアイテムボックスにオフロードカーを収納するのか?
「あー……」
で、飯屋で定食を食べながら、俺はジュリエットを見た。
「何でしょう?」
「侵食触診ならワンチャン……」
ガソリンを作れる?
「まぁ可能か不可能かなら可能だと思いますけど」
ということは車もあり? 異世界でオフロードカーを乗り回す。それもまたロマンかもしれないようなそうでないような。まぁ今回はロードランナー一択だが。
「ちなみにSランク冒険者って凄いのか?」
定食を食いながらジュリアンが聞いてくる。
「ダンジョンを制覇した人間に送られる階位なので、すごくはありますよ。まぁ私とジュリアンは特A級ですけど。あくまで非公式に」
ほぼSランクも同然。まぁそりゃな。修羅疾患とか持っていると。
「今日はここで一泊していきますか?」
そうするか。金はあるし。いいホテルに泊まろう。
「レイト様♪」
軽やかにジュリエットがウィンクした。あー、はいはい。ジュリアンには聞かせられんなぁ。まぁ全員個室を取るので、俺がジュリエットとよろしくやってもバレることはないんだろうけど。
「じゃ明日からはロードランナーだな」
すまん。ジュリアン。お前の母親とヤる。




