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デブで無能と蔑まれた俺はアンノウンスキル【バリアフリー】で全てを手に入れる ~俺を蔑み虐げた王族と勇者は地獄を見るようです~  作者: 揚羽常時


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第48話:侵食触診《タッチタイピング》


「のどかな日常だなー」


 馬車の通り道で倒れている盗賊たちをそのままにして、俺はホケーッとそう言った。


「さ、さすがですね」


 馬車を所有している商人さんが手綱を握って、冷や汗をかいていた。しばらく街道を進んでいると。


「あ」


 ジュリエットが、ポヤッと何かに気付いたように。


「どうかしたか?」


「商人さん。たしか、ここの道からは鉱脈がありましたよね?」


「ん? ああ。たしか放棄されたダストリウムの鉱脈がありましたね」


 ダストリウム?


「ちょっと寄り道しませんか? 損はさせませんから」


「予定より早く進んでいるので、それはいいのですが……」


 とはいえ山道を馬車で進むわけにもいかず。ジュリアンを馬車の護衛に置いておいて、それから俺たちは鉱脈に寄り道することになった。俺とジュリエットで、だ。


「いいのか? 勝手に鉱脈に入って?」


 普通こういうのは土地を所有している貴族の財産……ひいては国のモノだと思うんだが。


「ああ、ダストリウムは基本的に嫌われていますから」


「ダストリウムって何」


「何と申しましょうか。とっても硬くて重い金属です」


 そんなもんがあるなら、鍛冶職人とか欲しそうなもんだが。


「まぁ普通はそうなんですけど。ダストリウムは密度が酷いくらい重くて、欠片だけでも運ぶのに苦労する有様なんです」


 中性子塊みたいなものか?


『この世界特有の物質構造だよー』


 ハミルトニアンが教えてくれる。


「重さだけでも冗談じゃないのに、高熱でも高威力でも加工ができないという厄介さがありまして。何かに利用するということが絶望的に出来ない金属なんです」


 はぁ。まぁそりゃそんなもんが出土する鉱脈を国や貴族が放棄するのも当然ではあるが。


「まさかそれを発掘しようと?」


「というか試したいことがありまして」


 ニコッとジュリエットが微笑んだ。おっさんの姿をしているので、俺の性欲が微妙に残念性を覚えている。そうしてダストリウムの鉱脈について、金属を掘るために空けられたのだろう洞穴の中に入っていく。魔術で光源を確保して中に入ると、黒い黒曜石の様な金属がそこらでゴロゴロ転がっている。これがダストリウムか? 塊がごろごろ転がっていて、鉄でも持てそうにない大きさのダストリウムが放置されていた。


「で、どうするんだ?」


 俺が聞くと、ジュリエットは論より証拠、とダストリウムに触れた。同時に少し蛍の光の様な光源が振りまかれると、ダストリウムの体積が大きくなって、白色に輝く金属へと変換された。


『へえ。アンノウンスキルだね』


 ハミルトニアンが感嘆とした声を上げる。まぁ声じゃなくて俺の脳内の思念なんだが。


「何をしたんだ?」


「ダストリウムをプラチナに変換しました。もしよろしければレイト様のアイテムボックスに収納してくださいませんか?」


「ん? ああ。そうだな」


 巨大な白金をアイテムボックスに収納する。その間にもゴロゴロ転がっているダストリウムをジュリエットがプラチナに変えていき、ソレを追いかけるように俺はプラチナをアイテムボックスに入れていく。


 なぁハミルトニアン。


『え、エッチなことですか?』


 いや、ジュリエットが何してるのかなって。


『ハミルちゃんはこのアンノウンスキルに侵食触診タッチタイピングという名前を付けるね!』


 タッチタイピング?


『触れた対象のタイプを変えるスキル。だからタッチタイピング。その気になればそこら辺に生えている樹も黄金に錬成できるんじゃない?』


 そんなすげえ能力なのか。


『ううん。もっとえげつないよ?』


 例えば?


『自分に触れた事象や対象。例えば敵だったり防御だったり攻撃だったり。そういうのを触れた瞬間にニュートリノに変えればどうなると思う?』


 …………。


 沈黙せざるを得なかった。電荷をもっていない粒子であるニュートリノはあらゆる物質をすり抜ける性質を持つ。つまり無害で意味のない粒子だ。いや、物理学者や宇宙科学者には意味があるんだが、このファンタジー世界でビッグバンの観測とかする意味無いし。


侵食触診タッチタイピング……ですか?」


 とりあえず鉱脈に転がっているダストリウムをあらかたプラチナに変えて押収した後、俺はハミルトニアンとの会話というか議論をそのままジュリエットに伝えた。ただしハミルトニアンそのものは黙秘のままで。コイツの存在は有益すぎる。例えジュリアンたちでも明かすのは危険だ。


「触れることで属性を変えるからタッチタイピングですか。いい名前だと思います」


「ということはジュリエットが俺の傍にいる限り、金の心配はしなくていいのか?」


「そう言うことになりますわ。レイト様♡」


 スルリと俺に近寄って、爆乳を俺の腕に押し付けるジュリエット。


「ニュートリノですか?」


 とりあえずの稼ぎが終わったので、馬車に戻って、ジュリアンとジュリエットに素粒子物理学の基礎の基礎を教える。俺たちがこうして存在しているのは、目に見えないくらい小さな存在が寄り集まって出来ており、実は実際の密度的には人間も金属もスッカスカなんだぜ、とかなんとか。信じてもらう必要はない。スキルに説明書はない。なのでスキルを持っている存在は説明書を読まずに家電を取り扱うように、活用することができる。俺とハミルトニアンの関係もその一種。ただニュートリノなる粒子が存在して、そのニュートリノはとっても小さくてあらゆる質量を素通りする無害な存在だと知っていればいい。で、もしジュリエットが侵食触診タッチタイピングを使いたいなら、戦闘においては対象をニュートリノに変換できれば最強無敵だと俺は言いたいわけだ。


「ニュートリノですかぁ」


 ニュートン力学も発達していないファンタジー世界で素粒子物理学を語る不毛さも承知しているが、ジュリアンに続きジュリエットまで次元壁バリアフリーで世界の壁を越えてアンノウンスキルを会得したとなれば、有効活用して欲しいのだ。


「ちなみに俺の後始末ラストレーターとどっちが強い?」


「二人で戦えば千日手になるんじゃないか?」


 後出しジャンケンで最適解を演算するジュリアン。触れたものをニュートリノに変えるジュリエット。つまりジュリエットはジュリアンに攻撃が対処されるし、ジュリアンはジュリエットに触れることができない。どちらもが防御性能が攻撃性能を上回っているので、決着がつかないわけだ。


「お母さんは強いんだな!」


「ジュリアンに言われると困っちゃうわね」


「なによりレイト様が最強だからな」


 まぁなぁ。ハミルトニアンの推理大説オシノコトワリのせいで、銀河系くらいは軽く吹っ飛ばせるエネルギー運用を可能としている。頭が痛いとはこのことだ。その内ゲ〇ターエンペラーとかと戦えそうでちょっと怖い。


「そろそろエイテル庭国ですよ」


 国境という意味では既にエイテル庭国なのだが、その最も西端にあるヘルメス聖国に近いエイテル庭国の都市があるわけだ。


「美味しい飯があるといいな」


「俺はラーメンが好きだぜ!」


「私は寿司が気に入りましたわ」


 じゃあ次の日曜はそれらを食おうな。


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