第41話:たまには日本に帰る
「相変わらずゴミゴミとした街ですね」
ジュリアン。ジュリエット。グラディオ。と俺。四人で次元壁フリーを行使して庵宿区に来ていた。
「もしもーし。ハルカ? 帰ってきたぞー」
スマホだけは持っていろと言われ、「異世界では使えないだろ。衛星も電波塔も無いんだし」と言ったが、帰って来た時は連絡を入れろと言われて渋々所持。そのまま持っていても電池が減るだけだが、一応充電用バッテリーも持たされて。そうして帰ってくるタイミングで充電するようにと厳命された。いいけどさ。
「あ、アニキ!? 帰ってきたんだ!」
スマホの向こうで嬉しそうな声を出すハルカ。
「まぁ週一で帰ってくると言ったしな」
そこは親とも約束した。
「アマプロがアニキを引き込みたいってうるさくて……」
アマプロの社長にもジュリアンたちが異世界出身だとは言ってある。それでも引き込みたい人材なのだろう。まぁ実際に可愛いというか美少女だし。年齢的にはちょっと……ねぇ?
「ソレでお前はどうなんだ? グラドルちゃんとやれてるか?」
「もっちろん。まだ掲載までは言ってないけどね!」
さすがに一週間やそこらでは雑誌には載らないか。
「今日は撮影があるから見学だけでも……って社長が」
既成事実を作る気か。
「ってなわけでー。アニキ。あたしの撮影に付き合ってくれない?」
「すまんが醤油ラーメンを食べるという使命がな」
ハミルトニアンが醬油ラーメンを食わせろとうるさいのよ。
「じゃあラーメン奢るから」
金持ってないのは事実だが。
「じゃ、車よろしく」
「庵宿区の駅でしょ? まーかせて」
なわけで、辺根斗家の私用車を回してもらう。
「醤油ラーメンかぁ」
スマホで検索しながらハルカが言うが、それよりジュリアンたちは車にドキドキしていた。この前も乗ったはずだが慣れないらしい。異世界に持っていってもいいのだが、ガソリンも無ければ道も舗装されていない。オフロードならワンチャン? と思ったこともあるが一々ガソリンを補給するために元の世界に戻るのも億劫だ。そうしてラーメン屋。
『うーん。美味しい』
俺の口を媒介にラーメンを堪能するハミルトニアンだが、こいつが美味しいと思っているということは、俺も美味しいと思っている証拠だ。正確には俺のラーメンの感想を共有しているだけで、コイツ自体が味わっているわけではない。ジュリエットとのエッチの時もそんな感じだしな。
「にしても……本当に綺麗ですよね。ジュリエットさんとグラディオさん」
ブリリアントカッターによって美少女化した妹のハルカだが、それでもジュリエットたちの素の愛らしさには敬意を表すらしい。
「あらあら。嬉しい御言葉」
「ハルカ様も存分に可愛いですよ」
「っていうかお前の学校で大騒ぎになったんじゃないか?」
グラディオのブリリアントカッターは対象の質量を一部減らす代わりに理想の形に収斂させる。その意味で脂肪を取り除いておっぱいの大きい美少女に転生したハルカは普通にありえない。
「あっはっはー。この一週間で三回告白されちゃった」
「まぁそうなるよな」
ズビビーとラーメンを食いながら俺はジト目になる。
「ってわけでー。社会勉強と思って一つ!」
パンッと手を合わせて、妹のハルカが希う。グラビア撮影の見学に来てくれ、という案件だ。いいけどさ。
「ほんと!? 助かるー」
「じゃあ行くか」
「車回す?」
「いや、ワープしよう」
距離フリー。運転手さんには後で先に帰っておいてくれと通達してもらう。
「っ……と」
そうして指定された撮影現場のビルに着いて。
「どもっす。アマプロの者でーす」
その一言で警備をすり抜ける。
「あら。ハルカちゃん……と……あらぁ。あらあら。レイトちゃん達じゃなーい。帰ってきていたの?」
「日曜日に帰ってくることになっていまして。異世界でも結構忙しいんですよ」
「ウチに所属してくれる気になった?」
「お断りしようかと思っているんですが……」
「そんなこと言わずに、ね?」
「じゃああたしは着替えてきますね。社長」
「ええ、ゆっくりでいいわよ」
軽やかにウィンクしてハルカを送り出す社長。
「ね~え。悪い事言わないからうちでデビューしてよーん」
「猫なで声はやめてくれ。マジでゾワゾワする」
「グラディオちゃん達も同意見?」
「まぁこっちで稼いでも、という根本的な問いはありますけど」
「そうよねぇ。私たちの活動場所とは世界が違いますし」
グラディオもジュリエットも乗り気ではないらしい。まぁあんまりな。
「惜しいわねぇ。レイトちゃんなんてハルカちゃんと並べば最強兄妹ってキャッチコピーが使えるのに……」
本当に社長は残念そうだ。
「ちなみにハルカはどうです? ちゃんとやれてます?」
「もちろん。業界を知らないから拙いところはあるけど、助言するとちゃんと聞くし、同じ間違いは二度しないわ」
「だったらいいんですけどね」
「心配?」
「まぁアニキなんで」
そういうところはやっぱり気になるじゃん?
「大丈夫よ。ちゃんとやれているから」
「これからもよろしくお願いします」
「ハルカちゃんの可愛さを日本中に届けるのがプロダクションの仕事だから」
「まぁ一週間前までデブだったんですけど。まぁそれは俺もか」
「過去のレイトちゃんも見せてもらったわ。可愛かったわよ? たしかグラディオちゃんの……ブリリアントカッター……だったかしら?」
「そう相成りますね」
グラディオが一礼した。
「何というか……品が良いわよね。グラディオちゃんって」
「一国の王様だぞ」
俺がそう教えてやる。
「王様なの?」
「ええ、まぁ、ヘルメス聖国という国を治めております」
「あらあら。それは。総理大臣みたいな?」
「そーりだいじん?」
「政治の決定権を全部握っている独裁制だから、民主国家とは比べられませんよ」
「まぁ異世界だものね」
そゆことです。俺たちが雑談をしていると最初のグラドルが撮影を終えているところだった。撮影の順番にもグラドルの序列がある。ハルカは新人なので後の方だ。




