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デブで無能と蔑まれた俺はアンノウンスキル【バリアフリー】で全てを手に入れる ~俺を蔑み虐げた王族と勇者は地獄を見るようです~  作者: 揚羽常時


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第4話:バリアフリー


 なぁハミルトニアン。


『え、エッチなことですか?』


 いや、そういうんじゃなくて。俺的にはそろそろスキルマスタリーが上がったように感じるんだが。二日ほど寝るとき以外はハミルトニアンとチェスを打っていたのだ。それにどういう意味があるかはわからないが、スキルのリソースが底上げされたのは無意識の内に感じ取っていた。


『そうだね。もうお兄ちゃんは牢を抜けられるんじゃない?』


 そんなわけで拘束バリアフリーと移動障害バリアフリーを実践してみる。腕と首の拘束が外れ……というか幽霊のようにすり抜けて、それから牢屋の鉄格子もあっさりとすり抜けた。例えるならター〇ネーター2のアイツみたいな感じ。あっちは不定形金属で形を対応させたという感じだが、こっちはマジですり抜けている。


「とはいえだ」


 牢屋を抜けても俺に戦う術がない。バリアフリーっていうくらいだからなんか色々とスルーしたり解除したりする能力だろうが攻撃に転用できるかと言われると、それはそれで難しいような気も。


 ハミルトニアンは何かできないか?


『え、エッチなことですか?』


 この脳内妹は頭の中がお花畑と見える。


『まだお兄ちゃんのリソースがギリギリなので――――とか――――とか――――とかは出来ないけど……』


 おいおいおい。バリアフリーってそんなことできるの? チートすぎねぇ?


『アンノウンスキルだからねー。そもそもハミルちゃんと会話できるだけでもレジェンドの枠組みに収まらないし』


 でも今は使えないんだろ?


『天啓検閲規律のセキュリティが強すぎるから。その接続維持にお兄ちゃんのスキルマスタリーを全振りしているね』


 で、その維持する行為でバリアフリーの習熟度を上げて、今は拘束フリーと移動障害フリーを手に入れたわけだ。感覚的にはもうちょっとリソースあるんだが、何か使えないか?


『え、エッチなことですか?』


 脳内妹とエッチなことして何が楽しいんだよ。いいから。さすがに前例で上げた無茶苦茶な奴でなくていいから。せめて自衛手段くらい提起してくれ。ハミルトニアンなんだろ? この宇宙のルールブックだろ? 全知だろ? だったら有益な情報を提供しろよ。


『そーだなー。じゃあエレクトキシンとかは?』


 エレクトキシン?


『漢字で書くと毒芯帰属と書いてエレクトキシンと読むんだよー』


 どうやら俺の頭の中の妹は中二病らしい。どういう効果だ?


『毒』


 あっさり言っているが、バリアフリーで毒効果を再現できるのか?


『わけないね』


 またしてもあっさり言ってくれる。


『バトラコトキシンって知ってる?』


 暗い地下牢の中。獣油で明かりを灯している以外は、他に光源が見つからない。ちなみにバトラコトキシンについては知らん。


『まぁそんな難しい話でもないけど、神経毒の一つでナトリウムチャネルを全開放させて神経と筋肉に不調を起こして死亡させる毒なんだよ。ヤドクガエルとかが持ってる奴だよ』


 なるほど。つまりバリアフリーで、その神経のフタみたいなのを開きっぱなしにしてバトラコトキシンみたいな効果を得るわけだな?


『そゆこと。しかも毒じゃなくてスキルで効果を及ぼすから時間差なし! 即死効果!』


 そういうのは却下で。


『えー』


 まぁたしかにナトリウムチャネルを解放させて神経と筋肉に不調をきたす、と言うのは盲点だった。そういうのにもバリアフリーは使えるんだなー。


『問題はお兄ちゃんがじかに触れないと効果が無い事なんだけど』


 あれ、でもスキルって無意識で感じる限り、身体能力フィジカリズムでも知的能力インテリズムでもなくて感覚能力フィーリズムだよな? つまり感覚の延長線上にあるという。究極的に突き詰めれば固有と言う能力が存在しないというか。ヴァイオリンを知らない人は、あくまでその感覚を知らないだけで、人体スペック上はG線上のアリアを軽やかに弾くことも不可能ではない。素人がモナ・リザを書くことも、ペーパードライバーがプロレーサーの運転をすることも、アマチュア作家がロミオとジュリエットを書くことも、「あくまで極論なら」と言う暴論を振りかざせば全く不可能ではないのだ。


『まぁそうなんだけど。それで何か解決するの? お兄ちゃん……』


 するかしないかで言えばするんだが。そうして俺はクオリアを体外に広げた。


「コンキスタドーム」


 自分の意識。頭蓋の中にある世界を体外へと投射する。というと理解に困るハミルトニアンだろうが、要するにハンタのエンだ。自分の自己認知感覚を体外に投射して、広げた感覚をそのまま脳内に注入する。地下牢の上にいるのは扉を見張っているやる気のない警備兵が二人。装備は剣と鎧。ただしもう一度言うがやる気は無い。まぁそもそも地下牢に無許可で侵入するメリットが無いし、地下牢側の囚人が逃げ出す可能性も万が一だろう。その万が一を俺がしているのだが。


『ちょっとちょっと!? ナニコレお兄ちゃん!?』


 俺の脳内で狼狽えているハミルトニアン。全知のハミルトニアンなら知っていると思うんだが、あくまで使っているOSが俺の脳であるため、何でもかんでも知っているという話でもない。そこは二日間チェスをすることで俺の方も把握していた。


 コンキスタドーム。頭蓋領域を外の世界に投射する技術だ。


『なんで使えるの?』


 昔自殺を図ったことがあってな。心停止した自分を別の自分が冷静に見ていた。そっから奇跡的に生還して「クオリアって脳外でも働くんだなー」と自認。それから自己の意識を体外に投射する術を覚えたわけだ。


『無茶苦茶だよ……』


 まぁハミルトニアンが言うかって話だが。そうしてコンキスタドームの領域内にいる警備兵にエレクトキシンを適応させる。コンキスタドームは俺の感覚領域なので、感覚で現実に適応させる術があるなら、それはつまり能力の効果範囲内となる。


「ぐ……?」


「が……?」


 二名の警備兵が足をもつれさせて倒れ伏した。俺はナトリウムチャネルの開放を足にだけ適応させたのだ。さすがに心臓とかにやっちゃうと殺しかねないからな。


 これって一生歩けなくなるとかそんなんか?


『ううん。ポーションを飲めば治るよ』


 便利な世界。じゃあ遠慮なく使ってやろう。そうして地下牢の石階段を上がって、鍵のかかっている扉を移動障害バリアフリーで突破。そのままコンキスタドームを広げて索敵しながら城の中を練り歩く。まずは腹が減った。飯を思いっきり食いたい。そんなわけでコンキスタドームで食糧庫を探し。ヒットすると壁をスルーしてそっちへ一直線。城の食糧庫は厳重に閉め切られていた。まぁ王族の口に入る食べ物が鼠に齧られたりゴキブリに齧られたりするのも極刑モノだろうしな。


「美味い。チーズ美味い」


 調理される前の食材だが、粗末なパンを与えられるだけの地下牢の百倍マシだ。チーズ。ハム。野菜。炭水化物も欲しいが、さすがに王族には焼き立てを提供するのだろう。小麦粉があるだけでパンは無かった。いいんだけどさ。


『お兄ちゃん。お兄ちゃん』


 なんだ? 何かあったか?


『封印魔術が施されている書庫があるよ。行ってみない?』


 まぁ壁のすり抜けが出来るんだから不可能じゃないんだろうが。封印魔術を施されている書庫……か。たしかにちょっとワクワクするが俺の魔力はEランクなんだろ?


『そこは大丈夫。ハミルちゃんがお兄ちゃんをフォローしてあげる』


 フォローって。脳内で会話するだけの自称妹が何をするんだ?


『大丈夫だって。いいから行こ』


 まぁそう言われるなら否やはないが。封印された書庫か。ちょっと興味湧くしな。禁断の魔術とかあるかもしれないし。俺、魔力Eランクだけど。


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