第39話:奴隷刑
「さて、貴様らには雁首を揃えてもらったわけだが」
城の庭でのこと。王命によって捕らえられたフェイクリスト一族並びに、悪徳貴族の皆様方。俺が地下牢までご案内したわけだが、それはともあれ。全員手枷足枷を付けられ、首輪で拘束されて、ズラリと魚河岸の魚の如く並べられていた。
「貴様らから搾り取った財産でも賠償金の三割程度にしかならなくてな。さてどうしたものかと途方に暮れている最中だ」
「グラディオ陛下。これからは心を入れ替えて領地経営をしますので……何卒お慈悲を」
「何もギロチンで首を切ろうという話ではない。むしろ逆だ。貴様らには不死の祝福を授ける。光栄だろう?」
ここでありがとうございますとか言う奴がいたら本気でバカだがな。そうして一人一人に触れて、膨大な順転エネルギーを施すグラディオ。百年前の宰相が地下牢で生き延びて、しかも若い身体を保っているのも、この効果のおかげなのだろう。流石聖女と言ったところだな。
「さて、そんなわけで貴様らは死ねなくなったわけだが。これから余と奴隷契約をしてもらう」
「どうか! どうかお慈悲を! 我々はヘルメス聖国の繁栄を願って……ッ」
「アリフレム王国を地獄に堕とした……と?」
「あんな亜霊種の住まう僻地など鑑みる必要もな――」
ズドォォォンッッッ! と拳を受けた釈明しようとした貴族が吹っ飛んだ。殴ったのはジュリエット。亜音速で吹っ飛ばされ城の壁に激突。
「あらあら、本当に死にませんね」
ニコニコ笑顔で怖いことを言うジュリエット。コイツを怒らせるのは止めておこう。
「ボコりたいなら幾らでもしていいぞ。コイツ等はそうされるだけのことをした」
「純霊主義が繁栄しているのは知っておりますが。不愉快な話ですわ」
「な、わけでだ。これよりお前らは奴隷契約を結んでもらう。嫌だという奴は自分から奴隷契約をして欲しいと懇願するまで拷問するからそのつもりで」
そうして奴隷商を呼んで、悪徳貴族を一人残らずグラディオの奴隷とへと貶めた。
「グラディオ様。ソレで何をなさるおつもりですの?」
ジュリエットが問う。
「ヘルメス聖国がアリフレム王国から搾り取った金をすべて返済する。悪徳貴族並びに悪徳商人から没収した財産を全てアリフレム王国に返済する。これで損害分の三割が補填される。残り七割の内、四割はアリフレム王国のマテリアルアブソーバーをアリフレム王国の自由設定の関税で買い取って、その利益で還元する」
「で、残り三割は?」
「私の奴隷どもを低賃金で労働奴隷にする。アリフレム王国に派遣して、残り三割の借金を返済してもらう」
「お待ちを!」
「さすがにそれは!」
「お慈悲を!」
「伏してお願い申しあげます!」
「ならぬ。貴様らのその太った身体を見ればわかる。アリフレム王国を虐げて、美食を食い美酒を飲み、美女を抱いてきたのだろう。それに使われた金を労働奴隷として返済してもらう」
絶望によぎった貴族どもの顔が見ものだった。
「俺は関係ないだろ!」
雁首を並べているのは矢佐間も一緒。既に奴隷契約は終わっている。
「魔王討伐税……ということで金貨十万枚相当を徴収したそうじゃないか。低賃金労働をしてすべて返済するのだな」
「そん……な……」
青ざめる矢佐間。
「ちなみに貴様はレイト様を公開処刑しようとしたらしいな? しかも国家反逆罪を押し付けたとか。そんなことを余が許すと思ったか」
「あんなデブなんて生きる価値無いだろ!」
今度はジュリアンが勇者を思いっきり蹴った。城の壁まで吹っ飛んだ。
「というわけで白金貨三千六百枚を返済するまで貴様らはアリフレム王国で低賃金労働奴隷として働いてもらう。もちろん奴隷契約したので命令するが、自殺、逃亡、反抗、策謀は許さん。ただひたすら長い時を借金を返すことに費やせ」
ソレで決着だった。
「お待ちください! 陛下!」
一人提議したのはルシア・フェイクリスト。
「それでしたらわたくしは慰安奴隷になりますわ。そちらの素敵な男性にお仕えして、夜伽で借金を返済しますわ!」
「と言っているが?」
「勘弁してくれ。悪夢に相違ない」
「そんなことを言わず! あなた様のお名前は?」
「レイト・ペネト」
「は? 何を仰って。貴方様のようなイケメンがあんなデブリアンなわけ……」
「事実だ」
別に信じてもらう必要はないが。
「そん……な……」
ルシアが青ざめる。
「分かりましたわ。レイト様に全てを捧げます。レイト様の慰安奴隷になりますので、どうか低賃金労働だけは……」
「じゃあ俺の言うことは聞くのか?」
「え、ええ、もちろんですわ……」
「じゃあ俺の目の届かないところでトロールやオークの慰み者になれ。アリフレム王国で慰安奴隷として借金を返せ」
「そん……な……」
絶望するルシア元王女。
「なわけで貴様らには三つの選択肢がある」
握り拳から指を三本伸ばしてグラディオが言う。
「低賃金労働奴隷となるか慰安奴隷となるか……もしくは臓器培養体になるか……だな」
臓器培養体って何だ?
『読んで字のごとく。臓器を摘出して、ソレを高価で買ってもらう実験体。まぁ聖女の順転エネルギーがあるから、いくらでも臓器は再生するだろうしね。手っ取り早く金を返すなら候補なんじゃないかなー。まぁ麻酔無しで臓器を摘出される地獄を無視すれば、だけど』
ハミルトニアンが残酷なことを言う。
「一日熟考する時間を与える。貴様らが後悔しない道を選べ」
そうして城の衛兵に引っ立てられて地下牢へと戻されるフェイクリストならびに貴族一行。そして勇者を自称していた矢佐間。まぁ矢佐間は金貨十万枚の借金を返すまでだから他の連中に比べればまだしも救いはあるだろうが。低賃金で金貨十万枚なら百年か二百年あれば返せるだろう。その間の地獄については知らないが。
「なぁ! レイト! お前からも言ってくれよ! 俺様たち同郷のよしみだろ?」
どの口でほざくのか。
「単なる他人だろ」
だから俺は切り捨てた。別に矢佐間の今後には興味ないし。
「お願いだ! グラディオ陛下を説得してくれ!」
「自分でやれ」
あまりに見苦しい交渉に俺の方が頭痛がする。そうして全員の処罰は決まった。ほぼ全員が低賃金労働奴隷を選び、そのことを承認したグラディオは地下牢に閉じ込めている貴族たちに、今後のことを説明していた。さて、どうなることやら。
「これでアリフレム王国は……」
「ええ、救われますね」
ジュリアンとジュリエットが感極まっているらしい。ま、気持ちはわかるけどね。
聖女グラディオ・トリスメギストスが玉座に戻った。かの賢王がトップに立ったのだ。それはアリフレム王国にとっては朗報に相違なく。
「ではアリフレム陛下に謝罪に行きますか」
そうして大陸の最西端。半島国家アリフレム王国にグラディオは向かうらしい。もちろん俺も。距離フリーを使えば一発だ。




