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デブで無能と蔑まれた俺はアンノウンスキル【バリアフリー】で全てを手に入れる ~俺を蔑み虐げた王族と勇者は地獄を見るようです~  作者: 揚羽常時


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第30話:ブリリアントカッター


「なるほど。私が封印されている間にそんなことが……」


 で、俺の頬に真っ赤なモミジが出来上がって、それについての謝罪は受けたが、俺の微妙な感情についてまでは決着がついておらず。


「それで私を探しにセイントブルク神殿ダンジョンを攻略したと」


「そういうことに相成ります」


 猫耳親子が土下座して頭を下げる。


「どうかアリフレム王国をお救いください。暴虐のヘルメス聖国を浄化してください」


「私もそうしたい……というかすべきなのでしょうけど……」


 困ってしまって、というのが聖女の本音らしい。


「何か問題でもあるのか?」


 俺が聞く。俺に対してはジトーッとした目を向けて聖女は言う。


「今、私はダンジョンに封印されている状況です。つまりどうしても現世に戻れないんですよ」


 まぁそもそも自分の意志で出れるなら、問題なんて起きてないわけで。


「とある人物にダンジョン封印刑……プリモーディアル・プリヴェント・プリズン・プリンシプル……通称4プリって呼ばれる封印式でダンジョンマスターを強制されていて」


「それをどうにかしないと出ることもできないと」


「そういうことになりますね」


 聖女グラディオは、そのように言った。とするとダンジョンマスターをやめなければならないのだが。ハミルトニアン?


『え、エッチなことですか?』


 違います。なんとか聖女グラディオを助けられないか?


『可能だよー』


 え? 可能なの?


『超余裕』


 なーんだ。ソレを早く言ってくれよ。なんだ。可能なのか。


「というわけで可能らしいんだが」


「本当か?」


 藁にでもすがるように聖女様は俺に真意を問うた。バリアフリーのスキル内で可能らしい。次元壁バリアフリー。宇宙と宇宙を分け隔てているドメインウォールを突破するスキル。まぁバリアフリーって結構なんでもありなところあるし。


「ただし条件がある」


「え、エッチなことか?」


 大きい乳房をドレス越しに腕で隠しながら俺の獣を警戒する聖女グラディオ。


「違います。俺をイケメンに出来る?」


 と、聞いたはいいが、そもそも出来るわけねーだろってのが俺の意見。しかしハミルトニアンによると、聖女様にはそれが可能らしい。


「えーと。そんなことでいいのですか?」


 可能なのかよ! 俺としてはそっちの方がビックリだわ。とはいえだ。出来ると言うならやってもらいたいのが人情で。


「ちなみにどういうイケメンがいいんだ?」


「できれば女子にモテる感じでお願いします」


「了解しました」


 了解できちゃったのか、と思ったが、出来たのならしょうがないよな。そうして三本ほど腰に差してある剣の一本をグラディオは抜く。


「まさかソレで斬るとか言いませんよね?」


「切るつもりですけど」


 オーマイガッ。殺す気か。


「いえ。この聖剣はブリリアントカッターと言って、斬ったものを理想の形に変化させる聖剣です。つまりあなたのそのだらしない脂肪を全部筋肉に変えて、身体は細く、イケメンに。そういうことを欲しているのでしょう?」


 ブリリアントカッター……ね。


「ちなみにあと二本は?」


「一つはディレクターズカッター。現実を編集して無かったことを有ったことに、有ったことを無かったことにする聖剣です」


 ああ、事象の改変がそれか。


「もう一つはショートカッター。距離を無視する聖剣ですね」


 もう好きにしてくれ。チートすぎて何も言えねぇ。


「では、参ります」


 そうして聖女グラディオはブリリアントカッターを抜剣して、そのまま俺を切る。全ては一瞬のことだった。剣が俺の身体をすり抜けた。と思ったら肉体が変容していた。あれだけだらしなかった脂肪の塊みたいな身体が筋肉バッキバキの細マッチョになっていた。


「おお。身体が動かしやすい」


 グッグッと屈伸運動をするが、今までの動きにくい感覚が綺麗さっぱり失せている。


「…………」


「…………」


 で、そのまま猫耳親子を見つめると俺をポーッとした目で見ていた。


「そんなにイケメンになってるか?」


「最の高だぜ」


「素敵ですわ♡ レイト様♡」


「そ、そこまでか……」


 ちょっと照れてみたり。


「ミラー」


 で、コールをして、聖女グラディオが俺に鏡を見せる。魔術は当たり前のように使えるらしい。そうでもしないと聖女じゃないんだろうけど。


「おお、イケメンじゃん!」


 鏡に映った顔はまさにイケメンというか。ファッション雑誌の表紙になりそうな顔だった。あのキモデブがこんなイケメンになっていいのか? なんかまつ毛長いし、髪もサラサラだし、造形は神だし。


「ありがとうございます! 聖女グラディオ様!」


 俺は聖女グラディオの手を取ってブンブンと上下に振る。


「それでこのダンジョンの封印を解けるとレイトは言ったんですけど」


 大丈夫だよな? ハミルトニアン。お前が大丈夫って言ったんだぞ?


『大丈夫だよー。だからお兄ちゃんは次元壁バリアフリーって唱えてみて?』


 うん。まぁ。信じるより俺に出来ることは無いんだが。


「よし、じゃあ、次元壁バリアフリー」


 そうして俺たちは次元の壁を越えた。次元壁……つまりドメインウォールも障害とみなせば、それを無効化できるのがバリアフリーだ。そういう意味では便利な能力と言えないこともない。そうしてドメインウォールを超えて、俺たちは元の世界に戻ってきた。ダンジョンが異界でソレを繋ぐのがマテリアルアブソーバー。だとは聞いていて、ついでにそれが俺の次元壁バリアフリーの適応能力だとも悟ってはいるのだが。それにしてもこれは予想外。ざわざわと大量の人間が会話している駅構内。スーツを着たサラリーマン。女をナンパしようとしているチャラ男。化粧とファッションに気を使っているギャル。例えるなら……というか例えるまでもなく現代日本だった。駅構内を無数の人間が歩いていて。俺たちは悪目立ちしていた。俺は学校制服なのでまだよかったが。とは言っても体形が変わったのでちょっとダボダボではあるが。ジュリアン。ジュリエット。聖女グラディオは悪目立ちしすぎている。素朴というか獣の革を使って縫われたジュリアンとジュリエットの服装は現代日本だと異質だし、グラディオの服装は宗教的な服。コスプレと誤魔化すこともできないではないだろうが、それにしても人目を引く。警察が飛んでこなければいいけど。


 ハミルトニアンさん?


『ちょっとラーメンが食べたくて』


 お前食えるの?


『お兄ちゃんが食べてくれたら一緒に味わえるよー』


 さいですかー。


「あの。レイト様?」


 グラディオが俺を様付けで呼んだ。


「ここは?」


「俺の出身の世界。日本って呼ばれる島国だ」


 つまり異世界というわけで。


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