第2話:勇者の歓迎パーティー【矢佐間ユウシ視点】
「それでは魔王を倒してくださる英雄! ユウシ様に乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
そうして俺様の歓迎パーティーが開かれた。どうやら俺様は本気で異世界にやってきたらしい。そして勇者として国民に望まれている。くくく。これほどの栄誉が他に有るか? 俺様は選ばれし者だったんだな。一緒についてきたデブリアンがこの際目障りだが、まぁそれは良しとしよう。アイツは今頃地下牢にぶち込まれているはずだ。俺様の佐藤を破滅させたんだ。こっちではたっぷりと後悔して貰わないとなぁ?
「それでは勇者様。この剣を持ってくださいますか?」
言われて差し出されたのは、一つの剣。鞘に収まっており過剰な装飾がされている。例えるならゲームで見るような聖剣が近い。っていうか異世界だし。聖剣じゃね?
「できればお抜きになってくださると嬉しいのですが」
「わかった」
言われて俺様は剣を握り、その鞘を払った。現れたのは装飾に対してはシンプルなロングソードの刀身。だが何か違和感の様な。
「おお、あの剣を抜くとは」
「さすが勇者様だ」
「これでヘルメス聖国も安泰ですな」
周囲が俺様の抜剣に賞賛を浴びせる。どういうことかと聞くと、ルシアが答える。
「それは王族に伝わる聖剣ですわ。名はアイアンカッター。斬鉄剣の異名で知られる最高位の剣ですわね」
「おいおいおい。俺様はそんなものを引き抜いたのか?」
「何かスキルのようなものをお持ちでは?」
「スキルってーと。この意識の隅っこにある違和感みたいな奴か?」
「そうです。おそらくそれですわ。異世界へと召喚される際に勇者様にはスキルが与えられますの」
「千剣適合とあるが……知っているのか?」
「宰相。聞いたことありまして?」
「はい。ヒーロースキルと呼ばれるレアスキルの一つだったと記憶しております。あらゆる剣に適合する……まさに勇者様のスキルかと」
「まぁ! さすが勇者様ですわ。その聖剣で魔王もお倒し下さいますわよね?」
魔王を倒せと言われてもな。ロープレでもないし。魔王城まで出向けって事か?
「それについては後ほど説明を。それからもう一つ。魔力量も測らせてもらえませんか?」
「魔力。そういうものもあるのか」
さすが異世界。なんでもありだ。
「勇者様。この水晶に手を触れてください」
臣下の一人が水晶を持ってきて、俺様に差し出す。言われて手を伸ばす。瞬間弾けるように閃光が光った。勇者の歓迎パーティー。その参加者全員が目を白黒させている。
「魔法審問官……これは?」
訝しむようにルシア王女が聞く。
「間違いありません。宮廷魔術師と同じレベル。Aランクの魔力です」
「ふわぁ。流石ですわ! 勇者様!」
言われて俺様はポカン。その俺様に抱き着いてくるルシア王女。
「さすがだ。異世界の勇者様」
「聖剣を抜剣したのも頷ける」
「これでヘルメス聖国は安泰だ」
おいおいおい。聖剣を操るスキルに、魔力がAランク? それってつまり最強じゃねえ? 俺様ってそんなにすげえの? 召喚された時は不満だったが、今はそんなことすっかり忘れていた。俺様は選ばれた救世の勇者。そうしてこの世界で最強になるのだ。
「そうだ。あのデブリアンは?」
「ご要望通り、地下牢に閉じ込めてありますわ」
「なるほどな。ありがとな。俺様のお願いを聞いてくれて」
「勇者様ですもの。このくらいは聞きますわ」
俺の腕に抱き着いてくるルシア王女が可愛い。完全に俺に惚れ切って疑っていない。まぁ相手はこの国の王女だし? ちょっとつまみ食いするのも悪くねえな。もし既成事実が出来たら俺様も王族の一員って事になるんだろ?
「勇者様はお酒は嗜みますか?」
「いや。俺様の世界では大人になるまで禁止で……」
「こちらでは年齢制限はありませんわ。少し飲まれてはいかがでしょうか?」
「そう言われるなら少しだけ……」
そうして俺様はアルコールのフワフワした気分を味わって、そのまま歓迎パーティーをつつがなく終えた。途中貴族達に話しかけられ、我が娘に会ってほしいという要望をたくさん聞いて、時間があればとだけ答える。王女だけじゃなく貴族の娘まで食えるとか。勇者って最高じゃね?
「ねぇえ。勇者様ぁ♡」
で、歓迎パーティーが終わり。城の一室。そこを手配されて俺は寝ようとしたのだが。ネグリジェ姿のルシア王女が現れて、いやらしく肢体を揺らして俺様を誘ってくる。
「ルシア王女……」
「もうちょっと飲みましょう? ついでにいいこともぉ♡」
酒とグラス。後は自らの身体でもって俺様を楽しませてくれるらしい。
「ん。酒も悪くないな」
「でしょう? 気分を高揚させるにはもってこいですわね」
「それでルシア王女……」
「あら、勇者様。目がエッチですわ」
クスクスと彼女が笑う。
「そういうルシア王女も期待しているのでは?」
「バレちゃいました?」
悪戯っぽく舌を出して、怒られた言い訳をするようなルシア王女。俺様はそのルシア王女にアルコールの匂いのするキスをした。相手の口からも果実酒の味がする。同じ酒を飲んでいたのだ。当たり前だ。
「勇者様ぁ。いぃぃっぱい恥をかかせてください」
甘えるようにルシア王女が言う。言われて俺様も拒絶できなかったし、するつもりもなかった。王族が俺様に媚びているのだ。据え膳食わぬは男の恥と言うじゃないか。
「勇者様。わたくしと婚約いたしませんこと?」
来た来た。いい話。
「俺様で、その、いいのか?」
あえて困惑するふりをする。本音ではガッツポーズだ。
「ええ、もちろんですわ。王族の聖剣を抜いた勇者様にはその資格が御有りですわよ」
「それは嬉しいな」
「ではそのように。もう放しませんからね?」
ギュッと俺様を抱きしめるルシア王女。これで俺様も一国の王族の一員だ。これからは好き勝手やるぞ。魔王討伐? 暇な時でいいだろ。貴族たちも俺様に娘を引き合わせたいらしく、媚びるような目で見ていた。王侯貴族が下手に出る。その快感に俺はアルコール以上に酔っていた。
「勇者様。ああ、わたくしの勇者様……」
「ルシア王女は可愛いな」
「どうか今宵だけでもルシア……と呼び捨ててください。一人の女の子になりたいんです」
「ではルシア……と」
「ユウシ様。もう一度恥をかかせてくれますか?」
「俺様から提案しようと思っていた。なんか性欲が……」
「エッチな気分になるように。酒に少量……ね?」
薬を盛ったのか。どうりでさっきから股間がギンギンなはずだ。あと一回くらいは出来る。そうして俺様とルシアの影が重なった。そのまま二人で愛し合い、朝まで遅く語らった。王宮ではちょっと問題になったが、それでも処罰まではされない。
ほら、何せ俺様は勇者だから。
「勇者様。昨夜はその……娘が」
と、この国の王、ラシア・フェイクリストが謝罪してくる。こちらも丁寧に対応だ。開き直ってもいいが、王族とは事を構えたくない。




