第15話:ジュリエットの情事指南
「アイテムボックス……ね」
冒険者ギルドでランク試験を終えて。俺……辺根斗レイトは宝石に金属で装飾した飾り物を見ていた。魔法の道具とは聞いているが、このアイテムボックスを持って念じれば空間が歪んで、その歪みからアイテムを出し入れできる。色々な意味で規格外だ。
どういう理屈か分かるか? ハミルトニアン。
『え、エッチなことですか?』
いや、アイテムボックスについて。
『そもそもマテリアルアブソーバーが異界を構築する宝石だというデータはありますね』
つまりアイテムボックスってのはこの異世界とはまた別に小さい異界を作って、そこにアイテムを保存していると?
『そうなるねー』
お前のいる神の座とは違うのか?
『まぁハミルちゃんは言ってしまえば大日如来みたいなものだから』
宇宙そのものであり、全ての根源であり、異界の一部とかそういう話ですら次元が違うらしい。フーンってな感じ。とりあえず王都の隅っこにある安値の宿に泊まって、事情を聞かれるわけもなく一人部屋を占拠していた。ジュリアンとジュリエットは個室を用意しようかと思ったが、二人で一部屋でいいというのでそうしてもらった。俺は部屋に入るとセルフミラージュを解いて、デブでブサイクの姿をさらす。宿の店員は不干渉だし、お湯とタオルはジュリエットが持ってくることになっている。高い宿なら風呂にも入れるが、こういう安い宿はサービスでお湯とタオルを支給してくれるだけだ。それで身体を拭けって事だろう。
『チェックメイト』
特に食事が出るわけも無いので、それは既に食堂で終わらせていた。後は「少し時間が欲しい」というハミルトニアンの要望に従って、軍警察に捕捉されないように安宿で待機して、グダグダしているだけだ。Dランク冒険者になったわけだが、特に身体作りに余念が無いわけも無く。デブでブサイクの俺が、今から何をしようと変わらないだろう。なので脳内でハミルトニアンとチェスをして、アンノウンスキル【バリアフリー】のスキルマスタリーを拡張していくだけのお仕事。
「レイト様。よろしいでしょうか? お湯を持ってきました」
宿のサービス。お湯とタオルの支給。ソレを受け取ってから出向くとはジュリエットに言われていたが。
「ああ、入ってくれ」
「失礼します」
で、あっさり入ってきたジュリエットに。
「pぉきじゅhygtfrでswq!」
俺が盛大に狼狽えた。ジュリエットは産経婦だ。ジュリアンを産んでいるんだから間違いない。だがまさか下着姿で現れるとは。夫については聞いていないが、ジュリアンがスリで生活費を稼いでいるところを見れば、夫がどういう風になったかは聞かずともわかる。
人妻。あるいは未亡人。とはいえ、その魅力的な身体が下着姿で現れると童貞としては辛いところ。
「ちょ! 服着ろ!」
「女性の身体には興味ありませんか?」
あるけどさ。
「どうせレイト様のお裸は拝見しますので。私だけ服を着るというのも不公平かと」
「え? 俺の身体を拭くの?」
「もちろん。レイト様の手を煩わせはしませんわ」
「いやー。自分で出来るし」
「ここは私にお任せください♡」
「俺の身体なんて見ても不快なだけだろ」
デブでブサイクで、あっちの方は他の男子と比べたことないからどうなのかは知らんけど。
「大丈夫ですわ。それも含めて指南しますから」
「指南って……」
「非処女の未亡人ですけれど、レイト様の情事の指南役になれればと思い、こうしてはせ参じました」
「それって……えーと」
「もちろんそういう意味ですね」
「いや、俺とヤって嬉しいか?」
「とても光栄です」
ああ、さいで。
「なのでレイト様。私がレイト様の初めてを奪ってしまうことに抵抗はありますか?」
いや、やっていいならやりたいけどさ。興味津々なお年頃だし。でもそれにジュリエットを巻き込むのは如何なもので?
「私なら大丈夫です。レイト様にベタ惚れですから♡」
それはそれは光栄なことで。
「なのでまずは女体についてお勉強しましょうか」
下着姿のジュリエット。衣擦れの音がする。ラになった彼女が俺をベッドに押し倒す。
「レイト様。女性を取り扱うにはまずは何より経験が必要ですわ。私がその一助になれればこの上ありません」
「いや、その、避妊とか」
「亜霊種と純霊種では子供が出来ませんから」
あ、そう。
「まずはキスの仕方から教えますね」
えーと。お手柔らかに。こんなキモデブに快くキスをしてくれる女性がいることに驚きだ。キモい。臭い。醜い。俺を表現する三大描写。
「ん♡ ちゅ♡ レイト様の唾液は甘いですね」
「えーと。ありがとうございます?」
「私の唾液はどうでした?」
「エッチな感じだった」
「光栄ですわ。レイト様」
「マジで最後までやるのか?」
「レイト様の指南役として責任をもってレイト様にプレイのプロへと導きますから」
こんなキモデブに積極的に抱かれようとする女が他にいるかが問題なんだが。
「胸も触ってみますか?」
だからさー。童貞には刺激が強すぎるわけで。
「ちなみにこっちが女性の最も敏感な場所で……」
懇切丁寧に。色っぽい雰囲気を崩さないまま、だが手取り足取り、ラである自分の身体を使ってジュリエットは俺に女体の仕組みを教えてくれる。
助けてハミルトニアン。
『え、エッチなことですか?』
エッチなことです。
『ジュリエットも結構いい身体してるよねー』
おっぱい大きいしな。FとかとかGはあるんじゃないか?
『お兄ちゃんのスケベ』
しょうがないだろう。童貞拗らせている俺としては、そういうことには興味津々なんだから。俺とシルエットを重ねて、そうしてジュリエットは俺を指南してくれる。
「いいけど。ジュリアンには許可取ってるのか?」
「あの子にはまだ早いですから」
まぁそうだよな。こういうことを言うわけにもいかないのは確かにその通りだが。
「レイト様。ではレイト様のソレで私を貫いてください。責任は発生しないので安心して貫いてください」
何で何を、とは言わなかったが、あくまで悪魔の証明なだけで大体やることはネットコンテンツで知ってはいる。こっちではスマホはネットに繋がらないけど。しかもそれで安心できるなら俺もキモデブ童貞を拗らせていないんだよなー。
「夫とも死別したので、私も久しぶりです。レイト様のお慈悲を頂戴したく存じます」
まぁやっていいんならやるけどさ。ジュリアンのことがチラリと頭に浮かんだが、それもすぐに忘れた。お湯とタオルで身体を拭く前に一運動。汗をかいて、それからだ。




