第14話:勇者によるダンジョン攻略【矢佐間ユウシ視点】
「なぁ。いいだろ? このエリアの攻略が終わったら俺様とワンナイト……」
セイントブルク神殿ダンジョンでのこと。王命で従えた冒険者たちとパーティーを組むことになり、俺様はその内の一人を口説いていた。勇者のダンジョン攻略に友好的な冒険者はそこそこいたが、あくまで肯定的なのは男性冒険者が多い。というか職種上、女性の人材が少ない仕事だ。実力派ぞろいのパーティーを組んだのはいいのだが、むさい男ばかりで辟易していたので、低ランクの女性冒険者を無理矢理パーティーに入れて、連れて行った。やっぱりこういうのには花が無いと。ダンジョンは、攻略すればするほど上書きされて、アイテムで脱出しても次の挑戦は続きからになるという親切設計。なわけで序盤のモンスター退治はパーティーメンバーに任せて、俺様は低ランク女性冒険者にコナをかけているわけだ。
「俺様とワンナイトすると稼げるぜ? 冒険者がバカらしいほどの金をやるよ。だから俺様のハーレムにだな……」
「お戯れを。勇者様。ジョークはその辺で」
「ジョークじゃねえって。王様から褒賞貰ってからさー。俺様のハーレムに入れよ。俺様に尽くすだけで大金が手に入るぜ?」
「勇者様の御名を怪我すわけにはいきません」
くそっ。手強いな。おっぱいも大きいし、腰も細いしで抱き心地が良さそうだが俺様に遠慮しているのか。中々首を縦に振らない。
「何なら俺様の血の入った子供は王族の血筋になれるんだぜ?」
「矮小なる身には余る光栄です」
「そう言わずにさぁ」
女性の首に腕を回し、チョンチョンと乳房の上の方を突く。揉ませろという合図だ。
「勇者様。御身の立場をご理解ください」
どうしても俺様に身体を差し出す気が無いらしい。
「お前も親を楽させたいだろ? 俺様のハーレムに入れば家族ごと保護してやるよ」
「ご温情だけ有難く」
くそ。これでも釣れねえか。
「勇者様。ここらのモンスターは掃討しましたぜ?」
俺が女性とイチャついている間に、ダンジョンのモンスター討伐は終わったらしい。
「ああ、じゃあ先に行くか」
とは言っても、俺は最後方。うっかりダンジョンの罠が発動したら、先にメンバーに死んでもらう。俺様は魔王を倒すまで死ねないのだ。
「っていうか勇者様も戦ってくださいよ。聖剣なんでしょう? それ」
「魔王を倒す切り札だからな」
斬鉄剣アイアンカッター。王族が脈々と受け継いできた伝説の聖剣だ。確かにこれを使えばあらゆるモンスターを切り裂けるだろう。俺様のヒーロースキル【千剣適合】もあり、剣を握るとバフがかかる。剣の取り扱いに限り、その道の頂点と同じ技量になるのだ。マジで俺様って選ばれし者じゃね?
「しゃーない。次の層からは俺様も戦ってやるよ」
百聞は一見に如かず。低ランクの女を口説くにはカッコイイところも見せる必要がある。俺様の圧倒的な実力を見れば女も考えを改めるだろう。
パーティー共有のアイテムボックスにモンスターの素材を収納し、それを女に持たせてある。ダンジョンを抜けた時に分配するためだ。俺様は魔王討伐税があるからダンジョンの利益は要らないぞ、というと今のパーティーメンバーは仲間になるのに積極的になった。勇者の仲間になって美味しい素材を手に入れようって魂胆だろう。俺様は後ろで女を口説くだけの簡単な仕事だったと思うのだが、中々女が落ちないのでイライラしていた。いっそ言うことを聞かないと殺すくらい言うべきか? 俺様に抱かれるのは幸せだろうと何度も言ったんだがな。
セイントブルク神殿ダンジョンは主にトカゲ型の亜竜種と、アンデッド系、ゴーレム系が出る。俺の仕事はアンデッド以外の討伐だ。こればっかりは単純な斬撃でどうこうなる相手ではないしな。だが既に魔術師もパーティーにいるため、浄化魔法であっさりとスケルトンは昇華していた。
「おら!」
ヒュンと、聖剣が奔る。冒険者が驚いた時にはゴーレムをあっさりと切り裂いていた。さすがヒーロースキル。選ばれし者にだけ与えられるスキルだ。それに比べてデブリアンと来れば。ピッキング? 地下牢の脱出には使えるだろうが、鍵を開けるだけのスキルとかマジねえわ。宝箱の鍵でも開ける低ランク冒険者で、高ランクに搾取されるだけの存在。魔力をEランクだしな。マジで未来が無い。まぁ、とは言っても公開処刑を諦めたわけじゃないが。
「おらよ!」
サクサクとゴーレムを斬っていく。罠が無いのは確認済みだ。まだ二層だし、そこまで凶悪な罠も無いらしい。脱出のアイテムは常に携帯しているし。そもそもそうじゃなくても最強の俺様が敗北することは無いんだがな。魔王を倒す使命を背負った俺様が、ダンジョンの最下層まで行けないわけがない。
「ほら。拾えよ」
「あ、はい」
女は俺様が倒したゴーレムのドロップアイテム……ゴーレムの核を集めてアイテムボックスに収納していった。
「わかっただろ? 俺様は最強だ。俺様の女になれば幸せにしてやるぜ?」
「有難い話ですが、お断りします」
ま、そう言っていられるのも今の内だ。最悪法律を盾に迫ればいいんだからな。ルシアにも側室を作ることは認めてもらっているし、コイツをハーレムに入れるのは決定事項。ただ合意の上でないと強姦罪が適応されるので、甘い言葉で囁くしかないのだが。勇者がワンナイトしてやるって言ってるんだ。普通は応じるだろ?
「とっとと拾えや。Eランク」
吐き捨てるようにパーティーメンバーが言う。
「まぁま。低ランクでも荷物持ちの役目は果たしているしな」
見下している高ランク冒険者の文句に、俺様が勇者の威光で仲裁する。優しさを見せるのも時に肝要だ。
「お前はよくやってるよ。戦えなくても冒険者には必要な仕事もあるしな」
「……ありがとうございます」
ま、役立たずって言ってもいいんだが。こっちにヘイト向けられても困るし。抱くためには味方の振りをするのも必要だろう。
「とっとと次の階層に行きましょうぜ。勇者様」
「そうだな。十階ごとにボスモンスターが出るんだったか」
「ええ、とはいえ俺たちは七十階くらいまでは行ったことあるんで。そんなに構えなくてもいいですよ」
まぁ高ランク冒険者がそう言うならそうかもな。っていうか魔王倒すのが目的なんだからボスモンスターとか雑魚に過ぎないだろ。魔王を倒す聖剣を引き抜いた俺様に敵がいるとも思えないし。
「じゃあサクサク行こうぜ」
そうして俺たちは集中力のリソースの限界までダンジョンを探索した。ダンジョン内では食事と睡眠と排泄は必要なくなる。ただ体力と集中力はガリガリ削るので、眠らなくていいとはいえ、一度の攻略で最下層まで行けるわけでもない。そうしてボスモンスターのフロアまで足を運んで、そのまま攻略するかと思えば、今日はこれくらいにしておこうと提案があり、俺様も女を口説きたいしそれに頷いた。
「なぁ。酒奢ってやるから一緒しねえ? お酌してくれよ」
「家で家族が待っていますので」
相も変わらずふてぶてしい女だ。俺様に酌もしないとは。
「お前が稼げるのも俺様のおかげだろ? 付き合ってくれても罰は当たらないと思うぞ?」
「勇者様のお立場を心配しているのです」
「大丈夫だって。悪く言う奴なんていないしな」
「そうでしょうか?」
勇者を侮辱するようなやつがいれば公開処刑にしてやる。
「ま、考えておいてくれ。この国で暮らす以上、俺様に逆らうのがどれだけ愚かか。後から後悔したくないだろ?」
ハーレムに入るのにふさわしい女だ。処女だったら最高だな。




