人形
「お母さんが亡くなった時のお葬式が印象に残ってるって言ってたね」
「――そうです。お金がないからおそうしきできないかも、て思ってたらおじさんがちゃんと見送ってあげないと、っておそうしきしてくれて。だから風香はおそうしきはしないといけないって」
空くんの視線の先、掘った穴がある程度大きくなると風香ちゃんは早々にそれを埋めようとしていた。
それは少女の西洋人形だった。
かなりの大きさで、まっすぐ立たせたら風香ちゃんと背の高さは一緒ぐらいかもしれない。
穴に据えられた人形に土をかけていくと、まるで本当に人を埋葬しているように感じた。
おじいさんは体調がすぐれないというのに、杖をついてゆっくりと墓の近くまでやってきた。
「娘の大事な葬式だからね」
といっても埋められた人形が本当におじいさんの娘さんの訳ではない。娘さんのお気に入りだったらしいけど。
娘さんが亡くなられた時、入院していたおじいさんの容体は悪く、その時のお葬式に出席することはできなかったそうだ。
「手をあわせて」
風香ちゃんの呼びかけは学校の給食を思い出した。
代わりに人形で葬式をするのはどうなのかとか、そもそも数年前に亡くなった娘さんの葬式を今更やるのかとか否定的な気持ちはあったけど、こうしてお墓の形を整えて、風香ちゃんとおじいさんの二人が真剣に手を合わせる姿を見るとやって良かったと思えた。
「ありがとう――ありがとう」
おじいさんはこの空間に捕らわれ、十分な治療を受けられない状態で短くない歳月が経った。あとどれだけ元気に過ごせるのだろうか。
「えへへ。よかったねえ」
風香ちゃんは微笑んでいた。
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書き漏らしがありました。
11行目の「といっても埋められた人形が本当におじいさんの娘さんの訳ではない。娘さんのお気に入りだったらしいけど。」の後。
追加↓
娘さんが亡くなられた時、入院していたおじいさんの容体は悪く、その時のお葬式に出席することはできなかったそうだ。




