強襲
カイン 30歳 異世界転移済み。コック。 アマチュアサイコメトラー メイス,くない
イナホ 狐+美女 ボクっ娘 神
ショーン きのこの精霊
モモス 聖教国ロウ行きのキャラバン隊長
ガイ ウゴの村出身、自衛団隊員
キャラバン護衛任務中
この世は常に弱肉強食。
そうは言うものの優しさや慈しみの心はいつの時代も称賛されるべき美しいモノだ。
そういうものが重要視される世界が来るべきだと思われる。
ただ、今ここで魔物の群れに食われたからといっても何も変わらない。
弱肉強育できるような世界になるよう少しでも努力する必要はある。
魔物がどんな想いでこっちを襲ってきているかはまだわからない。
けれど想いが届くこの世界なら、能力開花で魔物の考えも読み取れるようになるんじゃないだろうか。
「皆さんにご報告があります。
今夜はどうも魔物が近くにいるようです。男性陣で、交代で仮眠を取りつつ備えます」
モモスさんがキャラバン全体に声をかける。
基本的に戦えるガイと俺達、モモスさんが3時間ずつ受け持って、その他のキャラバン内の男性陣を見張りとして振り分ける。
俺達はイナホが夜に弱いから朝方担当にしてもらった。
時刻は現在午後8時半。
すっかり夜にはなっているが、キャラバンの四方に焚き火を分散させているためか明るさはキープできている。
幸い木々の近くの野営地なので、薪も困ることはなくいくらでも火は焚べられそうだ。
「カイン。もぉ寝に行こうよ。
ボク今寝れるなら早めに寝ておきたいんだぁ」
「わかった。粗方食器類も片付けたから寝に行こう。
モモスさん。俺達、就寝に入りますね」
「あぁ。朝方は頼んだよ。」
モモスに後を託して、金属の皿をざっと水洗いして布で拭き、口をゆすいで就寝準備に入る。
ただ、頭の中ではまだまだぐるぐる葛藤があり、正直寝つけない……
1時間時が過ぎた頃、イナホはスッカリ夢の中だ。
寝ている間に襲われて気づいた時にはもぅ生きてなかったらどうしよう……
ワイルドドックはどんな気持ちで襲うんだろう。やっぱり復讐の念で襲ってくるのだろうか……
死んだら俺はどうなるんだろうか……
世界を転移してきたが、俺は普通に死ぬのか?
死んだら無かな?無ってなんだ?
その無も感じずにいるのかな……
死んだらまたすぐ新しい人生が始まればいいけど、そうしたらニイナには一生会えないか……
考えても仕方のない妄想が頭の中を駆け巡る……。
本当に仕方のない妄想。
さっき瞑想してスッキリしたつもりだけど、全くスッキリでききってない……
俺はどうなっちまったのかなぁ……
「宿主様……。もういい加減にするッスよ。
さっきからネガティブな妄想ばっかり出てるッス。
まぁ僻んでない分いいッスけど、宿主様が怨霊的な思考になるともれなく自分も怨霊化するッスよ。」
「ショーン……。悪いな……。
ただ、考えちまうんだよ。
なんかよくわからんけど、どうしようもなく考えちまうんだ」
「それ、考えて意味あるッスか?
なんにもならないッスよ。
多少のストレスは成長するために欠かせないスパイスになるッスけど、宿主様のそれは"低迷"してるだけっぽいス」
「そうか……」
「考えない。
心を凪にして。波紋1つない水面のような心をイメージするッス。
今の宿主様は心を乱すような精神攻撃食らったら一発でダメになるッス」
「そう、なのか……」
「そうッス!
考えないで心を凪にして、そのまま寝落ちするのが今は必要なことッス」
寝落ちが正解なのか……?
なんかショーンが言うと胡散臭いが、確かに今はしっかり睡眠を取らないといけないから休むべきかもな……。
心を凪に……凪に……凪に……
−−−−−−−−−−
カァーーン!カァーーン!カァーーン!
「おい、起きろ!
ワイルドドックの群れだ!」
!?
魔物の夜襲って、そんなことしないだろうと真に受けてなかったが、まさかホントに夜襲するなんて……
俺は意識を取り戻しすぐにメイスとボウガンだけ持ってテントから出る。
テントから出た瞬間目の前を真っ黒なワイルドドックが走って横切った!
!?
どうなってる!?
様子を見ると他のテントの周りもワイルドドックが走り回っている!
何が狙いだ!?
何かの作戦?いや、ワイルドドックはイヌと変わらない知能のはず……
気配を殺しながら考えていると、イナホが声をかけて来た。
「カイン。イヤなのがいるよ。
このワイルドドックは普通の魔物になった犬じゃない。飼い主がいる……」
「なに?どういうことだ?」
「そのまんま。着いてきて。」
俺はイナホについて歩くことにした。
イナホの物音の消し方は流石の一言。
元々暗殺者かなにかか?と思うほど、無音で移動する。俺はそれを真似るように気を配りながら歩く。
敵への気配の察知は今はイナホがいるから二の次だ。とにかくイナホの後を気配を消して着いていく。
野営ポイントから離れて木々の中をそのまま進む。
と、突然イナホが止まって口に人差し指をあてる。そしてゆっくり目標の方を指差す。
そこには、ガイと同じくらい190cmくらいの体格をした真っ黒で胸元に白い三日月模様のついたウェアウルフ、狼男が立っていた。
仁王立ちして、先程からテント周辺を走り回るワイルドドックの群れを眺めている。
どうする?
ヤツがこのワイルドドックを操っているのか?
俺が頭で色々考えていると、急にイナホがテレパシーを送ってきた。
『カイン。あれがワイルドドックをけしかけてる犯人だ。ボウガンで狙いたいかもしれないけど、ヤツらの目的が掴めない。
ココはちょっとボクがやるね』
俺は何も言わずに頷いた。
その瞬間、イナホは俺の前から消えた。
えっ?
一瞬で移動したとかそんな次元じゃない。
完全にテレポート、転移している。
そして手にはククリナイフ2本を交差してウェアウルフの首元にあてている。
あのまま手をひけば明らかにウェアウルフは首の大事な血管を損傷して助からないはず……
一瞬で空間転移しているので、1番驚いているのはあのウェアウルフだろう。
明らかに反則攻撃だ。
俺は気配を消しながらイナホに近づいていく。
「ウェアウルフくん。
キミはなんであのキャラバンを襲うようにワイルドドックに命じているんだい?
事と次第によってはキミの存在を犬の毛皮と同じ価値に一瞬で落としてあげるけど」
「い、いや。こ、これは聖教国ロウへ行くのを邪魔しているだけだ……あの国は良くない」
「そんな理屈でボクたちを襲ったのかい?」
「あ、いや、上手く言えないが、良くないんだ」
ようやく二人の会話が聞こえる声まで近づいたがハッキリしない返答をウェアウルフがしている……
誰でもあんな風にナイフ2本あてられたら焦って上手く応えられないわなぁ。
「そう、じゃあもう一つ質問キミは誰に頼まれてこんなことをしている?
見たところウェアウルフはあんただけだ。しかもワイルドウルフは誰も傷つけていない。目的が全くわからない」
「ベ、べつに人を襲いたくてこ、こんなことしてるわけじゃない。俺もこれ以上は言えない……
た、ただ、俺が言えるのはこの先も危険はあるから行くのをやめるなら今のうちだ。という警告がしたかっただけだ」
「ふん。ウソを言ってる感じにも聞こえなかい……」
「そうか。わかった。アンタ、名前は?」
「お、俺はヘズナルだ」
「アンタはどこから来た?」
「に、人間の街じゃねぇ。お前に言ってもわからねぇよ」
「いいから言って」
「シャイアンだ」
「シャイアンのヘズナルだね。このまま何も傷つけずにひくなら見逃してあげる」
「なに?!ほ、ほんとうか!」
「あぁ。ボクは脅かした程度で命も金も取ろうともしないものに罰を与える必要もないと思う。
ただし、誰も傷つけていないならだけど……」
「そ、そこは保証する。あ、あの犬どもはしっかりと訓練してある」
「わかった。誰にも見つからないように去れ」
そう言ってイナホはククリナイフをおろした。
「思わぬ命拾いさせてもらったわ。もうアンタらの邪魔はしねぇ。
だが、聖教国ロウには気をつけろよ。」
それだけ言ってウェアウルフのヘズナルは暗闇の中に去っていった。
ま、あんだけ圧倒的なレベルの差が出た脅し方されたら引くわな。
それにしても……
「イナホ、聖教国ロウってなんなんだ?」
「ボクもわからない。
わからないけどきな臭いところということはわかったよ」
「そうだな。このことはモモスさんやガイ、他の人には?」
「さすがに言わないよ。
モモスさんはこれをビジネスにしてる。
言うとしてもこっそりとした助言レベルかな」
「そうか。わかった。だが一挙に片付いて良かったよ。ありがとな」
俺達はその後キャラバンに戻った。
キャラバンでは急に犬がいなくなり、誰も襲われてないことに盛り上がっていた。
見張りの男達やガイやモモスの活躍あってのこととお互いに讃えあっていた。
しれっと俺達もその中にはいる。
「あ、カインさん。無事でしたか?」
「えぇ、森の方まで少し追ってもう気配がないか確認しておきました。
どうやらもうよさそうですね。」
「そうでしたか。我々の武勇を前に何もせずに逃げ帰ってしまいましたわ。アハハハハ。」
「ハハハハハ」
乾いた笑いしか出そうにない。
ただ、今日はこのあと平和な夜を迎えた。
聖教国ロウのことはわからないままだが、とにかく行ってみるしかないのだろう……。
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