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天女降臨

カイン 主人公30歳 異世界転移済み。

 右目負傷につき眼帯使用中

イナホ 天狐、天女 転移使い

ギース ランクブロンズ シルビアの婚約者

マスター 酒場のマスター

メイリン ギルド兼酒場のウェイトレス

ソルデ  ギルド兼酒場のウェイトレス

聖ニノ 高位治療術師 

    カインの娘のニイナの可能性あり


いつもと同じ時間に目が覚めたものの、今日の朝は特別なものになった。


ここ数日の間ずっと寝泊まりしているギルドの安宿。

その部屋の間取りはベッドが置いてあって申し訳程度に鏡台と椅子があるだけの殺風景な部屋。


部屋の奥、東側には比較的大きめの窓があり、遮光の効かない薄手のカーテンは朝の日差しを遮るには心許ない性能だった。


カーテンの隙間から差し込む光の筋に一緒にいる天狐のイナホが座って太陽を崇めている光景は、見慣れて特に違和感も感じなくなってきている。


ただ、今日はいつもとは違ったのだ。

イナホが……天狐が……天女になっている。


光度の高い朝日の筋が彼女のために降り注いでいるようだった。

彼女は白銀の髪を纏い、まつ毛や眉も白く、髪の間には、純白の耳が主張している。

色白の肌を覆うように真っ白のシャツと赤いスカートを履いており、スカートからは純白な尻尾が見えている。

ピンクの瞳は真っ直ぐに朝日の方を捉えており、いつもと同じ習性だけがその女性がイナホだと認識するのを補助している。


「イ……イナホなのか?」 


「あ、おはようカイン。そうだよ。ボクだよ。

その驚き具合、素直に嬉しいねぇ。色々迷った甲斐があるよ」


「き、昨日楽しみにとか言ってたけど……

き、きれいすぎるわっ!」

俺はあまりのイナホの美しさに目をそらしながら顔を赤らめてしまった。


「ハハハハハ。キミの世界で言うツンデレってやつだね。まさか死を超越した存在のはずのボクがそんな扱い方をされるとは思いもしなかったよ。でも、キミのデレ具合が心地よく悪い気はしないね」


相変わらず的確なコメント過ぎて言葉が出ない。俺はとりあえず容姿の話題からそらすことにした。


「と、とりあえず今日も東の広場行きたいんだろ。俺も太陽浴びに行きたいし、い、行こうぜ」


「そうだね。それがいい」

イナホは腕を組んできた。


「な!?お、おまえ、からかいすぎだっ!そんなキレイになってそんなことされたら誰だって照れるわっ」


「フフフ。冗談だよ。キミが普通に振る舞えるよう部屋から出たらいつもどおりにするさ」


イナホに"いつもどおり"とは言われたがここまで美人な娘を隣につけて歩いていれば既に"いつもどおり"を通り越している気がする。


ただ、そうは言ってもどうすることも出来ず、俺はイナホと東の広場へと向かった。


東の広場に向かうとき、いつも当たり前のように大多数の人が足を運び、祈りを捧げているので、今日イナホが人の姿であっても気づく人はおらず、声をかけられることはなかった。


広場につくと俺とイナホはいつものように太陽を拝みつつ、瞑想を始めた。


今日は無心で目を閉じて呼吸を繰り返す。

それだけをやって時間を過ごした。


太陽の暖かさが少しずつ熱くなってきたところで、目をあけてイナホに声をかける。

30分近く瞑想していたんじゃないだろうか。心なしか集中力が上がってきているような気もしている。 


振り向くとギースが立っていた。


「あ、ギースさん。おはようございます」


「おぅ。今日の朝は厨房の手伝いはいいのか?」


「あ、ご存知でしたか?朝はメイリンさんとソルデさんがなんとかするそうで、夜の忙しい時間帯だけ手伝うことになってます」


「そうか。カインが昨日、厨房でオーダーミスいっぱいやらかしてるのは、メイリンちゃんやソルデちゃんが騒いでたからな。たぶん昨日酒場にいたやつはみんな知ってるよ。

にしてもおめぇ案外料理上手いんだな。俺もオーダーと違うものが来たものの安くうめぇ食えたからよかったよ」


「あ、え、できる限りオーダーミスを減らすよう善処します」


「まぁ、ミスがあっても当然な環境ってのはメイリンちゃん達もフォローしててくれたから大丈夫だと思うぜ」


「ありがとうございます。」


「それとよぉ。シルビアの容態だがあの聖ニノの腕がホンモノだったみたいでだいぶ良くなってんだわ。おめぇの目はどうだ?」


俺は先日アウルベアに噛まれたところを"聖ニノ"が治してくれている。傷は想像以上に治りが早く、目は開けられないが外観は目をつむった状態で包帯を必要としていないところまで回復していた。とりあえず眼帯だけはつけている。


「やっぱりもう治ってきてんだな。普通ならあんなケガしたら治るどころか死んでてもおかしくねぇぞ。イナホが転移してくれたおかげもあるがホント助かったよな」


「気にすることはないよ」


「ん?誰だ?あんたは?」


「ボクさ。イナホだよ。人の身なりになっただけさ。」


「な、めっちゃ美人じゃねぇか。カインの連れとは思ってもなかったわ」


いや、俺も捨てたもんじゃないと思いますけど。まぁーそこはいいか。

イナホは相変わらず照れ隠しが下手くそでデレデレしている。


「イナホの変化には僕もびっくりなんですよ。どうもこの姿になると人間と同じ声帯もあるから普通に会話も問題ないそうです」


「そうか。仲間が増えたみたいで良かったじゃねぇか。」


「えぇ。ありがとうございます。

ギースさんは当面シルビアさんのサポートですか?」


「あぁ。ただ、シルビアの回復も早いし明らかに良い方向だ。このまま様子を見ながらギルドの仕事をこなすさ」


「もう治療は終えたんでまとまったお金も必要じゃないんですよね?いっそランクシルバーの昇級試験も受けるんですか?」


「あぁ。考えてはいるがな。この前のおまえがアウルベアの生首に襲われた件が気がかりだから調べようかとも思っている。あんなことは俺も聞いたこともねぇが、アンデッドが生まれる環境ができつつあるなら早めに対処しないといけないからな。アンデッドの大量発生とか願い下げだ」


「あ、確かにアンデッドみたいな状態でしたもんね。でも、そもそもアンデッドなんているんですか?」


「カイン。ボクみたいな死を超越した存在がいることが正にその生き証人になるんじゃない?

高い次元の霊は僕みたいのだけど、低い次元の霊はアンデッドみたいなもんだよ」


「あ、そういうことか。じゃあもしかしたら低い次元の霊が少しずつ集まってきてるかもしれないんですね」


「そうだな。その可能性はあるが、そもそもなんでそんなことが起こるか?が問題だ。その理由を調べるのが村の安全に直結する。

こういった話は自衛団案件だが、正確な報告と追加情報はすべて金になるんだ」


「なるほど、じゃあ僕も時間が空いたら起きたことの整理してみますね」


「おう。それがいい。また何か気づいたら俺にも教えてくれ」


そう言ってギースと別れた。

アンデッドか。霊とかあんまり得意じゃないから会いたくないけど、とりあえずギルドでアンデッド対策だとか情報集めとこうかな。


−−−−−−−−−−


「メイリンさん、アンデッドについての情報が知りたいんですが」


「あらっ?カインくんもう仕事?」


「いえ、ただこの前の目をやられたのはアンデッドの可能性があるんで情報を整理しようと」


「なるほど、でもカインくん、文字読めないんでしょ?」


「あ……。はい。」


「じゃあまずそこからになるかもしれないわね。いいわ、マスターが厨房に立てない間の厨房のお手伝いの報酬の変わりに読み書き教えてあげる。昼間は依頼受けに来る人とかも少なくて暇ができるから。」


「あ、ありがとうございます」


こうして俺はメイリンから文字を習うことになった。メイリンさんはちょっとセクシーだから、少しだけテンションが上がっている。


教師と生徒のいけない関係 in 異世界。


ちょっと期待しただけなのになぜかイナホに殴られた。人型になったから、ツッコミが結構イタイ。



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