3 美しさは罪
男の子ってみんな巨乳好きではないのね。
あの麗しの美女『紫の君』が脳裏に焼き付いて離れない。
ああーードンピシャ、ストライクど真ん中の好みの彼女だったなあ。
あれは、運命の出会いというのだろうか?
特に胸のあたりがいい感じだった。オレの好みの手のひらサイズジャストフィット!
すばらしいじゃないか!!
「おーい!一樹、どうしたんだ?お披露目からもどって、様子が変だぞ」
「どうしたんですかね?戻ってから、ずっと心ここにあらずですね。まさか!精霊姫様に一目惚れしたとか!」
「ああ~それなら仕方ないなあ。」
「ですよね。って・・・グリシンさんはそれでいいんですか?」
「へっ??」
「やんごとなきご関係のお二人が、引き裂かれてしまうのですよ!」
「あああ・・・いやその・・・」
「うう・・・そんなの悲しすぎます」
「いや、あのさあ・・・」
「グリシンさんは、それでいいんですか!!ふたりの愛はそんなものだったんですか!!」
「ふ、ふたりのあ・・・愛???」
グリシンとフィージリアの漫談のやり取りを眺めて、オレの顔はニヤニヤして、元に戻らない。
顔をぱしぱしと叩いてみても、元に戻らない。
美しさは罪~微笑みさえ罪~♪ なんて歌があったなあ。
ああ~これがきっと恋というものだ。あの美しい顔が頭からずっと消えないでいる。
なんとかして、もう一度彼女に会いたい。しかし・・・おそらく城にいるだろうし・・・
またあそこに戻るのもなあ・・・。
城から出たいと、散々駄々をこねまくって、脱走を企てた身としては
「ただいまー」
なんてお気楽に戻るなんて、できないしな。
「だいじょうぶですか?道ならぬ恋に負けてはいけませんよ!私は、お二人の事は応援してますから」
おいおいーーフィージリアさんよ~。いきなりなんなんだ。
どーして涙目になっているのやら、なーにーを勘違いしたらそうなるんだ。
オレがグリシンとの仲を悩んでるなんて、どこの脳ミソがそう判断したんだ!
相変わらず、おつむが少し足りないな。
そんな事より、『紫の君』の事だ。
城の門番には顔は割れているしな、正面突破は避けたい。
だとすると、変装でもして、ひそかに忍び込んで、もぐりこむか・・・
最悪、問題を起こしたら、また牢送りなんて事になりかねない。それだけは避けねば・・・
「ああ、そうだ!おふたりのやんごとなき関係の事で、すっかり忘れてしまっていました。実はですね。お城で精霊姫様が参加される祝宴が開かれるそうです。その祝宴に高位の神官が何人かご招待されているのですよ。」
おお!キタコレーーー!
イベント発生ちゃーんす!
神はオレを見捨てないでくれた。いや、神とは限らないな。仏様、神様、アッラーの神ありがとう!!
その祝宴とやらに潜り込んで、『紫の君』を探せば・・・
「今回は、ラッキーな事に、大司祭様のお付きとして、私が同行できる事になったんです。」
「「だれが?」」
「私がです。」
「「だれが?」」
「だから私がですってば!!もう!!」
「「へ?」」
「こう見えても、私は大司祭様の付き人なんです。エッヘン」
「「へ???」」
グリシンとオレは、ふたりで顔を突き合わせて、『???』が頭にいっぱい浮かんだ。
そんなに神殿に詳しくないオレでも知ってる『大司祭』
この世界のすべての神殿の頂点に立つ人。最高権力者である人物。
フィージリアが恐れ多くも、自分は最高権力者の大司祭の付き人なんぞと言っている。いよいよ、妄想まで語りだしたか?やばいなこりゃー。薬でもやり始めたか?
「あのさ・・・ウソはいけないよう。嘘つきは泥棒の始まりと言うし。」
グリシンも「うんうん」とオレの横で激しくうなずいていた。
「だから!私はもともとこちらの神殿の神官なんです。今は外に修行にでている身なのです。」
「まじで?」
「まじですってば!こんなウソ、神殿の中で言えませんよ!」
確かに・・・確かにそうだな・・・。ここは神殿の宿泊所。
この中で、大司祭の付き人なんてウソをつける神官は・・・いない・・・な。
どーりで、すげえ急なのに、神殿で難無く泊まれるはずだよ。それに、お披露目の時にも何気に前の方の良い席だったしな。大司祭の付き人なら、簡単に融通も聞くわけだ。
しかし、おつむが怪しいフィージリアがほんとに、この神殿の最高権力者の付き人なのか?
そもそも付き人が神殿から自由に出ていいのか?
「大司祭様が、私はもっと世の中の事を知り、苦労した方がよいと、神殿から放り出されてしまったのです。」
うーん。それは非常に、非常に、激しく納得できる理由だ。
フィージリアの性格から、人に騙されても気づかないだろうし、空気読めなくて、ちぐはぐな事は言うしな。もっと人にもまれた方がいいだろうな。
可愛いいわが子に旅をさせろってかんじか?
フィージリアがまさかの大司祭の付き人だつたは、人は見かけによらないとは、まさに今回の出来事がぴったりはまるな。
「なあ、フィージリア。その祝宴とやらにオレも同行させてもらえないか?」
「ええ?そ、それは無理ですよーー。精霊姫様にお会いしたい気持ちは分かりますが・・・」
だよなあ。いくら大司祭の付き人だからと言って、城の行事に部外者を同行させることは難しい。
しかし、しかしだ!このチャンスを逃しては、いつ『紫の君』に会えるか分からない。
ここは踏ん張り時だな。
「それは分かってるって、そこを何とか。」
「何とかと言われましても」
「フィージリア、いや、フィージリア様お願いします!」
フィージリアに頭を下げて、手をついてやった。
恥も外聞なんて、気にしちゃいられない。
「そんなに、精霊姫様にお会いしたのですね」
いやーまったく会いたいとは思わんが、フィージリアが誤解しているから、そのままにしておこう。
その方が、都合がよさそうだしな。
「わかりました!何とかしてみます!」
何とかしてみますという言葉に、一抹の不安を感じながら、それにすがるしかない!
よしゃあ!やってやる~~!
このチャンスを逃さずにおるべきか!
2泊の予定だったが、急遽5泊する事になり、ダンジョンへ行くはずだった予定は大幅に遅れる事になった。が・・・『紫の君』に会えるなら、ダンジョンなんて二の次、三の次!!
金より、愛だよ!愛!!
予定より長く町に滞在する事になり、グリシンが珍しく喜んで、小躍りしていた。よっぽど、神官のお姉さんたちと離れたくなかったのか。
オレもハッピー、グリシンもハッピー!万事丸く収まったってことで、よしとしよう。
「えっと、実は、少し気になる事があって、大司祭様に報告したのですが、お披露目の時、精霊姫様が私たちの前を通り過ぎた後、すごく禍々しい黒いエネルギーを感じたのです。祝宴は何事もなく開かるようですが・・・」
そんなフィージリアの言葉など、浮かれてまったく耳に入っていないオレは、後になってよく聞いておけばよかったと後悔する事になるが・・・この時のオレはまだ知らない。
挿絵を描いて頂ける方募集中です。




