2 恋の予感?
2人がどーーーしても、『精霊姫』もとい、友人優華のお披露目に行きたいと言うから、仕方なく城下町へ行くことになった。
ステップニーの町から城下町まで、転移魔方陣を2回使い、7日かかるため、それだけで疲れる。
ほんとに、この世界は魔法があるのに、どーーーして移動にこんなに時間がかかるんだ!
たぶん、新幹線、飛行機の方が早いと思う。うんうん。
魔法で簡単に移動できる手段を作って、金をとったら儲かるだろうな。
あ~~それいい商売だ!金ががぼがぼ!
「どこで○どあ~~」
を作れたら、億万長者も夢じゃないか!
好きなアイテムや防具を買いたい放題!!自宅を購入したり、あんな事やそんな事も・・・どんな事って?フッそりあ・・・夜の営みって奴だよ。
なんてさ、現実はそんなに甘くない。はああ・・・
1つ目の転移魔法陣を通って、2つ目の転移魔法を徒歩で目指す事になった。
これが遠いんだ!!
転移魔方陣まで、徒歩で3日まるまるかかる。
馬に乗れたら、1日ぐらいで着くだろうけど、極貧冒険者にはそんな高級なものは無縁。
それでも今回は、神官のフィージリアのおかげで、麻痺薬と解毒薬を持参しなくていいだけ、金銭的にすっげえありがたい。
しかし、問題は夜の就寝の時間だ。はああ・・・・
「おふたりの邪魔にならないように離れたところに寝てますね♪」
「いやいや、夜は危ないから近くに」
「そんなとんでもない!おふたりの仲を邪魔するなんて!きっと、あんな事やこんな事や・・・いやんーーーー私の口から言わせないで下さい!きゃあ~~」
おい、おい!なぜそこで赤面して、嬉しそうなんだよ!おかしいだろ??
覚悟はしていたが・・・非常に屈辱的で、あれほどダメージを受ける攻撃はないというぐらいHPが削られた。これ以上の攻撃を受けると、HPがふたりともゼロになるじゃないか!と思えるほどの精神的苦痛だ!!
こ、これがずっと続くのか・・・かんべんしてくれ。
いや、耐えるんだ。ダンジョンのためだ。金のためだーーー!!!そう金のためさ。
金・金・金・金・金・金!!
はああ・・・
「一樹?今日はため息が多いな」
伴って歩いているグリシンが、一樹の顔を覗き込んで話しかけてきた。
そりゃあため息も出る。夜のやっかいなフィージリアとのやり取りも含めてだが
ようやく神官がメンバーに加わって、ダンジョンに行けるというのに
別段会いたくもない友人に会いに、7日を費やすなんて・・文句も言いたくなるさ。
はあ、お宝満載のダンジョンなら、7日ぐらいどーってことはないけどさ
今回の理由が、友人の『精霊姫』もとい、『優華』を見に行くことだろ?
はああ・・・・・
「早く着かないか、イライラしてんのか?」
まったくない、断じてない、ありえない。
「まあそりゃあ、そうだろうなあ。精霊姫様に会える機会なんて、めったにないからな。」
大学で毎日会ってましたけど?
「この機会を逃すと、お会いできる事はないですよね。さあ、急いで転移魔法陣まで急ぎましょう!」
グリシンとフィージリア誤解がいろいろありすぎて、いちいち反応するのも疲れた。
2人の歩く速度が、急に速まったので、ついて行くので精一杯だ。ぜえはあ、ぜえはあ・・・。オレは、肉体派じゃないからもうちょい速度遅くしてくれよ~。ふたりのハイテンションにあてられて、疲れる。
まあとりあえず、このお披露目とやらが終わったら、ダンジョンに行けるというので、お楽しみは後にとっておくか。
3日かけて徒歩でようやくついた2つ目の転移魔法陣の建物には、今まで見たことない人だかりができていた。
「なんじゃこりゃあ!」
建物の周りには、冒険者だけでなく、行商人や多種多様な種族が列をつくって、しかもその列が、建物からはるか1キロほど離れたところまで続いているじゃないか!なんだこれは、ネズミーランドのアトラクション待ち状態か?
あまりにも異常事態のため、行列にいる行商人の男に話を聞いてみることにした。
「いやーみなさん精霊姫様見たさに、城下町へ急いでいるようで、2~3日前からこの状態だそうです。」
はあ?優華見たさに??ありえねえ・・・。
「そうですよね!精霊姫様にお会いできる貴重な機会ですもの!」
「うんうん。当然だな」
2人とも納得して、当然といったような感じだが、いったいこの世界での優華の位置って、どんだけ高位なんだよ!おかしいだろ?
ただの普通の女子だぞ。しかもちょっと頭弱い天然女子だぞ!
あああ、言いたい・・・言えない・・・言いたい・・・言えない・・・言いたい・・・。
もうこの際、この場でぶっちゃけて、あらいざらい優華の事を言ってしまいたい。
『ばらしますか?それとも人間辞めますか?』
仕方なく、列の最後尾に向かおうとすると、あれ?あの騎士見たことあるな?
「!!」
騎士は、一樹と目が合った瞬間、声にならない声を張り上げていた。
通常であれば、城勤務の騎士だが、お披露目により、転移魔法陣に人が殺到し、トラブルが続出し、応援要請のため来ていた。以前一樹が騎士の訓練所で大暴れした時に、お世話になった、いや、迷惑をかけた騎士のひとりだ。
ちゃーんす。偶然ゲットしたレアドロップ並のラッキーさ。これを逃さずにおれるか!
驚いている騎士をなんのその、耳元で水戸黄門の印籠なみの言葉をヒソヒソとささやいてやった。
『いやー久しぶり!
こんなに混んでるとは思わなくてさー。
姫様の友人がこれからお披露目を見ようとしてるってのに、この行列で・・・もしもさ、もしもだよ。も・し・も、お披露目が見れなくなったら、さぞかし姫様は残念がるだろうな~』
それを聞いたと同時に騎士の表情はこわばり、俺たちのパーティーメンバーだけ裏の騎士専用の入り口へ通されて、行列を難なく回避することができた。
ラッキー♪もつべきものは、コネだな。
「一樹、いったいどんな手を使ったんだ?」
「そうです。一樹さん、お知り合いの方でもいるのですか?」
「いや、まあ。それは企業秘密って事で。」
苦笑いをしてやり過ごそうとしたが、ふたりには、しつこく何度も聞かれた。正直にほんとの事話すと、また王様に牢にぶちこまれる可能性大。それだけは、かんべんしてほしい。牢は、冷たくて、寒くて、さみしくて、あんなところに1秒だっていたくないさ。
転移魔方陣から、運よく城下町へ行く商人の馬車と遭遇し、警護してくれるならと、タダで乗せてもらえた。うんうん、『タダ』って言葉はいい響きだよな。これ以上ないぐらい心に響くいい言葉だ。
城下町に着くと、以前城から優華達と行った時とは、雰囲気も人の賑わいもあきらかに変わって、世界中の人々がこの町に集まっているらしく、どの通りも人であふれかえって大賑わい状態。
はあ、すげえなあ。こんな大勢人がいるなら、商売でも始めたらよかったか。これだけ人が集まっているんだ。儲かること間違いなしじゃないか!
商売を始めるには、やっぱり商売ギルドに登録が問題だ。うーん・・真剣に今後は考えなければ。
商売の事は、また考えるとして、こうなると、問題は宿屋だ。お披露目まであと2日ある。これだけの人が集まっているという事は、宿屋はどこも満員で空いているところなどないだろう。という事は、野宿決定か・・・。と思いきや、フィージリアから
「大丈夫ですよ。城下町の神殿に知り合いがたくさんいますので、2日ぐらい宿泊は可能です。」
おお!持つべきものは知人、友人、フィージリア様だ!
夜の事では、ダメージは計り知れないけどさ。こうゆう特典がついてるなら、少々我慢もできるな。
ああ~神官がメンバーに加わるって、特典がてんこもりだな。宿代3名の2日分の金が浮いた。ありがたや、ありがたや~。7日間野宿生活だったから、そろそろ布団で寝たいと思ってたんだよな。
そんなこんなで、フィージリアの紹介で、神殿の宿泊施設で2日間泊まれることになった。お礼として力仕事やら、雑用を手伝うということになった。グリシンは、普段から女性慣れしてない上に、冒険者の女性達はあらっぽい性格や、きつい性格が多い。普段接する事のない上品で美しい神官の女性たちに囲まれて、珍しく鼻の下をのばして、はりきっていた。
「ここは天国だな!一樹、2日と言わずに1ヶ月ぐらいいてもいいぞ!」
グリシン、そのニヤニヤした顔、しまりがないぞ。もちろん、2日以上延長する予定はないときっぱり言うと、さみしそうな子どもの表情になっていた。そんな様子じゃ、神殿に1ヶ月もいたら、骨抜きになること間違いなしだな。ここは、さっさと予定通り2泊で出て行った方がいいな。
しかし、神官達のおかげで、城下町に来てから、奇跡的にグリシンが酒を飲むことがなくなった。
酒に弱いくせに、あんなに毎日酒を飲んでいたのにさ、飲まなくてもよくなったのは、神官達で心が満たされるからか?
うーん。わからんな。
城下町では、お披露目の前日の夕方から、場所取り争奪戦が始まり、トラブルが続出したため、城下町の警備の兵士だけでなく、騎士達まで鎮圧するのに時間がかかったぐらいの大騒ぎだったようだ。
オレ達は、お披露目の当日は、神官の専用席にちゃっかり座れることになり、そんなトラブルから回避できた。
黒髪で端整な顔立ちの超イケメンの副騎士団長が、馬に跨って登場する。お披露目がようやく始まった。
今日は朝からグリシンとフィージリアがものすごいテンションで、正直気持ち悪いぐらいだ。
『精霊姫様』『精霊姫様』ってうるさいのなんの。
「きゃあーーカバリュオ様がいらしたわ~~。馬車の先頭よ!」
女子たちが大騒ぎで、黄色い奇声をあげて、うるさい事この上ない。耳栓用意しときゃあよかった。
おいおい~~!!よぼよぼのばあさんも、乙女に戻ったように目を輝かせて、凝視してるって!
当の本人は、黄色い声が飛び交っても微動だにしない堂々とした態度で、なんかむかつくなあ。
同じ男として、なぜか悔しさを感じる。神様ってやつは不公平だ!イケメンの上に騎士で、副騎士団長だろ?俺にもちょっとはそのイケメンを分けてくれ~~~。
「精霊姫様!!」
馬車から『精霊姫』もとい『優華』の姿が見えると、町中の人々か歓声をあげて、どよめきが起こる。隣に座っているフィージリアとグリシンは必死で優華に手を振っている。うーん、優華の何がすごいのか、皆目分からん。
馬車の脇には、馬に跨った長髪の淡い水色が風にさらさらと揺れ、瞳も水色の見目麗しい美男子、『守り人』のディークラールハイトことディーたん!!
ああ・・・ディーたんは、相変わらず麗しいなあ。これが女子だったらと・・・何度思ったことか・・・トホホ
ああ、そうだ。『守り人』の説明を忘れていた。
この世界で王の次に力のある存在、この世界を守るために絶大な力を持つ事を許された4人の人物。
4人は、「火・水・土・風」の精霊王の加護をそれぞれ受けている。ちなみに、ディークラールハイトことディーたんは、『水』の精霊王の加護を受けて、このうえなく美しいのだ。
見た目は、美女にも美男子に見えるから、勘違いしないように!ここ重要!!
ん?ちょっと待て?優華の横にいる紫のドレスを着たすげえ色っぽい艶のある美女はーーーー!!
キタコレ!!ドストライクーーーー!!
なんだよ。誰だよ。その美しい女性は!!
そして、俺の大好物な手に収まるぐらいのジャッスフットのすばらしい胸~~~!!
優華の奴、あんな美女をどこに隠していたんだよ!
ああ、ディーたん以来の興奮。
一目惚れってこうゆう事を言うんだな。
『紫の君』と名づけておこう。うんうん。我ながらピッタリくるネーミングだ。
一樹は、馬車から『紫の君』が見えなくなるまで、力強く手を振って見送っていた。
不定期更新になりますが、よろしくお願いします。




