王都騒擾 目覚め
来週投稿出来ないかもしれません。
すみません。
冒険者たちは墜落した竜を探し森に入る。
この魔物の森は以前、フェルとエメラルという多重人格の鬼を討伐するため捜索に入った冒険者が多い森だ。
それにもかかわらず日々、姿を変えるこの森は彼らを惑わす。
そうこうしてる間に夜の闇を打ち消すように太陽が東から上がってくる。
ここからは人の時間だ。
光は人に際限なく希望を与える。
「あぁ、温かい。まるで勇者である俺のようだ。」
異世界から来た訪問者はまるで怖いものなどないというように森を突き進んだ。
よって誰よりも早く龍の大樹にたどり着いたのだ。
彼は大樹のそばで静かに横たわっている竜に剣を突き刺し叫ぶ。
「やはりこの勇者であるハルバード・セイント・サンクチュアリが選ばれたようだ! 選ばれし者は竜をも倒す! 」
もはや瀕死であった竜にトドメを刺しハルバードは意気高々に笑う。
彼にとって過程などどうでもいい。
竜を倒したという事実さえあればいいのだ。
「スキル発動、、、「略奪」。」
竜に突き刺した剣から光がハルバードに流れ込む。
スキル「略奪」はハルバードがこの世界に来た時、女神を名乗るものから貰った他人からスキルや魔力などを奪うスキルだ。
基本、スキルは経験を積み重ねその先に発現するものであり、種族により例外はあるもののこの世界ではスキルを見ればその者が歩んだ人生が分かるとまで言われている。
それを奪うなど どこの世界でも卑怯と言われるだろう。
だが彼はそれを使う事を厭わない。
「俺は勇者だからね。これは平和のために貰っていくよ。」
固有スキルを変化させ種族「人」用にします
スキル「部分復元」を習得しました
スキル「触手化」を習得しました
スキル「検索」を習得しました
スキル「種まき」を習得しました
スキル「寄生」を習得しました
脳内に響くスキル獲得の音声にハルバードは満足げに頷く。
(今回は豊作だ。やっぱ竜は持ってるものが違う。)
「ゴードンさん、もう出てきていいよ!」
その一言で茂みからゆっくりと小太りの中年男性が出てくる。
そしてそれに続くように馬車も。
「いやぁハルバード様はお強い! 前に雇っていた奴など、とんでもなく使えませんでしたので本当に助かります!」
ゴードンはまるで宗教徒のようにハルバードを褒め称える。
内心は別だが。
「まぁ勇者としては商人の護衛も当然だよ。それより例のものは大丈夫?」
「はい! もちろんです。こちらですよね?」
ゴードンが取り出しのは赤黒い親指サイズの小さい石。
「ああこれだ。「服従」の魔法が込められた魔石。」
ハルバードはそれを受け取り大切そうに冒険者用の多機能コートの内側ポケットに入れる。
「確かに渡しましたよ。」
ゴードンはそう言い残し、馬車に戻る。
「さぁ早く行きましょう。道のりは長いですからね。」
沈黙。
ゴードンの催促にハルバードが返事をしないせいだ。
「あのハルバー」
「そこだぁぁぁ!」
雄叫びにも似たような一言とともにハルバードは腰にぶら下げていた剣を居合の要領で引き抜く。
一瞬のうちに引き抜かれた剣は飛んできた光の剣を粉々に砕いた。
もちろん日本にいた彼がそんなことは出来ない。
光の剣が飛んできたのを感知したのも居合抜きが出来たのも他人から奪ったスキルだ。
剣が飛んできた方向を見ると一人のエルフが宙に浮いている。
「あなた、、、さっき彼に何をしたの?」
目を覚ますと木にぶら下がっていた。
魔力切れで竜から落ちたとこまでは覚えているがその先が思い出せない。
「ッ! お花さんは!?」
慌てて周りを確認する。
すると遠くに見える龍の大樹に何かが横たわっているのが見えた。
安心と更なる不安が同時に襲ってくる。
無事では無いが龍の大樹まで辿りつけたのはいい、だがもう朝日が出ている。
下手したらもう冒険者たちに見つかっているかもしれない。
竜は何が目的だったかわからないがそもそも龍の大樹を目指したのは森の最深部であったからが故の時間稼ぎ。
冒険者に見つかってトドメを刺されたら意味がないのだ。
「体が軽い、、、やっと毒が抜けた?」
試しに魔法を軽く使ってみる。
その試みは難なく遂行され指先に魔力が集約、光が灯る。
「飛行。」
ルティアのその一言で体が宙に浮く。
完璧だ。
完全に魔力が戻っている。
だが落下したダメージは残っているので油断は禁物である。
「今行きますから! 」
空中を高速で移動し遠くからだとぼんやりしていた竜の姿がどんどん鮮明になってくる。
同時に男が竜の体に剣を突き刺しなにかを吸い出しているのも。
嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘
一瞬頭が真っ白になるがルティアは即座に自分の周りに何本もの光の剣を展開させる。
自分ではわからないがきっと酷い顔をしているだろう。
(、、、もしかしたらまだ間に合うかもしれない! )
そんな淡い希望を持ち無造作に一本、剣を撃ち出す。
それに気づいた男はすぐに居合の構えを取り、剣を抜き放つ。
残念ながら剣は冒険者に打ち落とされてしまうがそんなこと計算内だ。
ルティアは竜に剣を突き刺していた男に問う。
「あなた、、、さっき彼に何をしたの?」
「力を貰ったのさ。俺は勇者だからね。当然だ。」
「何を言って、、、」
「それより君、美しいね。エルフっていう点もサイコー。特別に俺のパーティに入れてあげてもいいよ?」
自分勝手な勧誘に対しルティアは無言で剣を撃ち出す。
しかし冷静を欠いている彼女が撃ち出した剣は男には当たらず後ろの馬車に直撃した。
「ああああああ!」
野太い奇声とともに馬車の破片とそこに乗っていた荷物が散乱する
「なんてことだ!私の商品が!」
小太りの男性が物陰から出てきて壊れた馬車の前で崩れ落ち膝立ちになる。
「おい ハルバード!護衛が全然なって無いじゃないか! どうするんだ!」
「うるさい! 俺が失敗するわけないだろ! ゴードン!これはそういうイベントなんだ! 」
二人が言い合っている間にもルティアは光の剣を展開していく。
「クソッ! せめてこいつだけでも! 」
ゴードンが壊れかけの木箱から引きずり出したのは緑色の髪をした女の子。
四肢は縄で縛られ猿轡と目隠しをされている。
それを目の端で捉えてしまったルティアは我を忘れ敵に突っ込んでいく。
戦況を観ると敵に背を向けるなど無謀そのものだが今の彼女には余裕がなかった。
「その子に触るなぁぁぁぁぁぁ!」
ルティアは絶叫と共に衝撃波でゴードンを吹き飛ばす。
ハルバードを素通りし、女の子に近寄る。
「大丈夫? 三千ちゃん。今、外してあげるからね。」
心臓は周りに聞こえるのではないかというほど大きく鼓動をうっており、口から出た言葉は思わず早口になる。
目隠しを外し、猿轡と縄を光の剣で切断する。
「脈はある。息もしている。大丈夫、、、生きてる。」
パクパクと口を動かす三千。
だいぶ疲労しているのだろう。
「ぁ、ぉ姉、ちゃ」
「貴様ぁぁぁぁぁぁ!」
「──────────!」
三千の掠れた声はゴードンの叫びによってかき消されルティアの体は彼のタックルによって数メートル吹っ飛ばされた。
戦闘能力など少しも持たない男のタックル。
だがすでに満身創痍だった彼女にとっては致命傷にすらなりうるだろう。
「があぁ、、、三千ちゃ、ん。あそこまで逃げて、、、。」
ルティアが指差したのは大樹の近くで横たわっている竜。
三千は言われた通りふらつきながらもそこへ向かう。
それを見てルティアは地面に倒れながら一息つく。
(あれなら大丈夫。私は──にはならなかった。)
目の端にゴードンが映る。
「貴様ぁ!」
体に衝撃が走る。
大方、腹部でも蹴り上げたのだろう。
「よくも!」
衝撃
持っていた道具が散らばる。
「私の!」
衝撃
目眩がしてくる。
「商品を!」
衝撃
体が動かなくなる。
「逃してくれたな!」
衝撃
吐血する。
「ああそうか!いいことを考えた!お前が代わりに商品になれ!幸い壊れてる方がいいっていう特殊なお客様もいガァッ!」
「これは俺のだ。」
ハルバードはゴードンに剣を突き刺し、そう言い捨てる。
その隙にルティアは気力だけで落ちた道具を一つ拾い、念を込め竜が横たわっている方へ投げた。
(私の考えがあっていれば、、、!)
それは空中で眩しく目に刺さるような光を放ち砕け散る。
「解除」の魔石だ。
路地で確認した残りの魔石の一つ。
「なんだ?今のは、、、」
光が止むと竜の姿はどこにもなく青い花だけがポツンと残っているだけだった。
──残念だ。お前は竜 もどき であったがために龍になれなかった──
いや、意味わからん。どなたですか?
──残念だなー久しぶりの竜だったのになーやっと仕事かと思ったらこれだよ──
なんで俺初対面のやつにこんな愚痴られてんの?
──ハイ、変龍できなかった失格者はこっちに行ってくださーい。つべこべ言わず参加賞持って行ってくださーい──
あれ?ここは、、、。
目を覚ますと龍の大樹にいた。
エメラルと戦った場所ということもあり記憶に新しい。
しかし何故だろう?何やってたか覚えてない。
覚えているのはあの変な夢だけ。
「お父さん!」
グエッ!しまってる!しまってるって!
起きて早々に三千に抱きしめられる。
抱きしめるというよりかは握りしめるだけど。
「お父さん お姉さんを助けて! 」
は? 今どうなってる?
急いで辺りを確認する。
ルティアが血を吐きながら倒れてる。
うん、一大事だ。
デブが剣に刺さりながら倒れてる。
あれはまぁ、、、いっか。
何か見たような顔がルティアさんにキスしようとしてる。
あら、ラブラブねってあれ 山田くんじゃん!学生時代で隣の席だった!
俺がこっちにきた時、雑草と色の鮮やかさ比べしてた時のノリツッコミに使われた影の薄い山田くんじゃん!
「お父さん、、、知り合い?」
妙に元気な俺に怪訝そうな顔で心配する三千。
ああ、そんな娘も可愛い、、、じゃなかった、、、流石にキスはヤバイ。
あんなもの娘に見せるわけにはいかぬ!
娘よ、「山田くん」と連呼してあいつを止めるのだ!
「うん、わかった。」
よしこれでだいじょうおおおおおおおお!?
三千が俺を持ったまま疾走したせいで首が思い切り曲がる。
首ないけど。
「山田くん!待ってー山田くん山田くーん」
「誰だ!俺のこと本名で連呼してるやつは!?」
あ、やっぱ山田くんだ。
本名連呼しすぎて目ギンギンに見開いてるけど山田くんだ。
「お姉さんにちゅうしたらだめだよ!」
「仕方ないだろ、記憶消すにはこれしか無いんだ。」
は?記憶を消す?なんでそうなった?
同郷の者を見つけて喜んだところに不穏な風が吹く。
「な、なんで記憶消しちゃうの?みんなのこと忘れちゃうよ? 」
恐る恐る疑問を投げかけた三千に対して山田くんは腕を組んで胸を張り自信満々に答える。
「それはな、勇者である俺の勧誘を断ったからだ。だから記憶を消して最初から俺の仲間ってことにするんだ。な?いい考えだろ?」
ヤバイ。こいつサイコパスだ。
一応、三千と交代しとくか。
スキル「寄生」発動。
、、、あれ?
スキル発動!
、、、発動しない?
検索!
だめだ、こいつもか!
「そうだ!君も俺の仲間になろう?一緒に魔王を倒すんだ!」
三千の肩を掴もうと手を伸ばす山田。
目には見えないがそこに悪意があるのは確かだ。
スキルが発動出来ないなら命令するしかない。
避けろ三千!
「わかった!」
命令を受けた三千は迷いなく後ろに飛ぶ。
「わかった?じゃあなんで逃げるんだい?ねぇ?」
「あなたに行ったんじゃないよ!山田くん!」
山田は顎に手を当て少し考える動作をするとニタリといやらしい笑みを浮かべる。
「今の俺は山田じゃなくて ハルバード ・セイント・サンクチュアリだよ?」
ハル、、、なんだって?
いやそんなこと問題では無い。
今の問題はあいつの笑みに何が隠されているかだ。
絶対なんか隠してんだろ、、、。
言ってるそばから彼の右手がタコの足のようにウネウネとキモい動きをする。
「え、それ、何?」
うわぁうちの子、明らかに汚物を見るような目でアレ見てるよ。
「これかい?これはねさっきそこで寝転がってた竜から奪ったスキルで「触手化」っていうらしいよ。」
は?俺のスキルじゃん。
何?竜から奪ったって。
──残念だ。お前は竜 もどき であったがために龍になれなかった──
、、、俺か!
おい娘よ 絶対あいつに触るなよ。
理由はわからんがスキルを盗られる。
あと変な病気持ってるかも知らないからな。
「わ、わかった。がんばる。」
「怖がらなくていいよ?君も俺のものにしてあげる。」
ゆったりゆったりと近づいてくる山田に対し三千は少しずつ後ずさりする一方。
「、、、なら、、、ぁしてやる。」
今度はなんだ?
死にかけのゴードンがもぞもぞ動いてる。
なんか嫌な予感がするんだけど。
悪い予感ほど当たるのだろうか。ゴードンは何かを握りしめ叫ぶ。
「誰かの手に渡るくらいなら壊してやる。出てこい仕事だ!」
ゴードンは握っていた何かを地面に叩きつける。
するとそこから淡い光が溢れた。
あの光り方は見たことがある。
ルティアの魔石だ。
光が止むと全身が黒く 顔が輪郭だけののっぺらぼうのような男が立っていた。
「oh 流石です。我が契約者。正直、あなたに私を呼ぶほどの力は無いと思っていましたが?」
「フン 悔しいがその通りだ。そのエルフの女が「召喚」の魔石を持っていたからお前を呼び出せた。」
「ところで剣がお腹に刺さってますが?」
「数十年前、お前につけられた呪いのおかげで大丈夫だ!」
皮肉っぽく吐き捨てる。
それを聞くとのっぺらぼうは口をパックリと開け大きく笑う。
「HAHAHA!そういえばそんなこともありましたねぇ。で?仕事は?」
「あの緑色の髪をしたガキを殺せ。人だとわからぬようになるまで原型なく壊せ。」
今回も読んでいただきありがとうございます。




