第五節 最後のテスト、そして春へ
冷たい空気に、かすかに春の香りが混じり始めた、2月目前の放課後。
リンの家のトレーニングルームでは、マラソン大会から数日が経った今も、4人がいつものように汗を流していた。
「ふぅ……さち、ほんと最後まで走りきったね」
ユキがマットに腰を下ろしながら微笑む。
「うん……ちゃんとゴールできたの、ちょっと自信になった」
さちは水をひと口飲み、少し照れたように笑った。
「リンも初挑戦で完走! すごかったよー!」
ハルが明るく声をかけながら、リンの背中を軽くたたく。
「Thanks! あんなに息が白かったのに、ぜんぜん寒くなかった。不思議だった!」
「それは、気持ちが熱かったからだよ」
さちのひとことに、全員が笑った。
トレーニング後、4人はリビングのテーブルに広げた**「絆のトレーニングノート」**を囲む。
ページをめくるたびに、ひとつひとつの記録と思い出がよみがえる。
「これ、海でトレーニングした時だ。泳ぐ予定だったのに、気づいたら砂浜でスクワットしてた」
「しかも、100回超えてたよね(笑)」
「ここは……最初の筋トレ記録。さち、腹筋5回でギブだったんだよ」
「今じゃ、30回連続でいけるもんね」
「しかも、フォームもきれい!」
笑い声が弾む中、ハルがふと、あるページのすみに目を留めた。
「……これ、春の体力テストの記録だ」
そこには、4人が真剣に臨んだテストの結果が残っていた。
「A評価、あとちょっとだったよね」
「Bでもかなり良かったけど……やっぱり、少し悔しかったな」
ハルとユキが同時に口にして、顔を見合わせる。
その時、さちが記録を見つめながら、静かに言った。
「ねぇ……今だったら、どうだろう。少しはAに近づいてるかな」
「え?」
「……やってみない? 小学校最後の“体力テスト”」
その一言に、場の空気が変わる。
「いいね! 今の自分たちで、記録を超えてみよう」
「うん。思い出にもなるし、自分たちの成長を確かめられる」
4人の表情が引き締まり、自然とうなずき合った。
⸻
翌日、放課後。
4人は職員室を訪れ、担任の先生のもとへ向かう。
「先生、小学校最後の体力テストを、自分たちでやってみたいんです」
一歩前に出て、ハルがまっすぐに伝えた。
「体育館を放課後に使わせていただけませんか?」
担任は、4人の顔を一人ひとり見つめ、ゆっくり頷いた。
「……君たちが“本気”なのは、十分わかってるよ」
「許可する。でも、ケガだけはしないように」
「はいっ!」
こうして、トレーニングは新たな目標――**「小学校最後の体力テスト」**へと向かい、動き出した。
季節は確かに、冬から春へと移ろい始めていた。




