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絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種  作者: たまに何かを書く人
【第10章】新しいページの始まりへ

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第四節 風を切って、前へ

冬の空気はまだ鋭く、地面からの冷気が足元にまとわりつく。

それでも、4人の足取りは軽やかだった。


——マラソン大会まで、あと2週間。


リンの家のトレーニングルームでは、トレノの練習メニューに「ラン」が加わっていた。


「スイミングで鍛えた体幹と呼吸、走るときにも活きるって本当だね」

ハルが息を整えながら言う。


「うん。でも、筋肉だけじゃなくて、持久力も必要だし……走るって、シンプルだけど奥が深いよね」

ユキは頷き、手元のストップウォッチにラップタイムを記録する。


「私はまだ、スピードよりもフォームを大事にしてるかな。無理せず走るの、難しいけど楽しい」

さちは柔らかく笑った。


「I like it! 特に風を感じるときの feeling! なんか、飛んでるみたい!」


頬を赤らめたリンの瞳は、きらきらと輝いていた。


日々、学校が終わるとスイミングの練習、そしてリンの家での筋トレとランニング。

1月の寒空の下を駆ける彼女たちの姿は、冬の街の中に新しい風景を描いていた。


⸻


そして迎えた大会当日。1月最後の日曜日。

会場は大きな公園と周辺の道路を使ったコースで、晴れ渡った空の下に多くの人が集まっていた。


「うわぁ、人がいっぱい……」

少し緊張した声で、さちがつぶやく。


「だいじょーぶ! 今までの練習を思い出して!」

ハルが笑いながら背中を軽く叩いた。


「みんなで走れるの、楽しもう」

ユキの穏やかな声が、さちの心を落ち着かせる。


「Let’s do our best! Team トレノ、go go!」

リンの明るい掛け声に、4人は拳を合わせた。


さち・ハル・ユキはスイミングスクール枠での出場。リンは個人エントリーとして、別の列に並ぶ。


「またゴールで会おうね!」


スターターの合図が鳴る。


パンッ!


一斉に飛び出すランナーたち。

冷たい空気を切り裂いて、4人もそれぞれのペースで走り出した。


⸻


2kmの道のり。

短くても、これまでの努力を込めた、大切な挑戦。


さちは最初こそ緊張していたが、沿道からの声援が背中を押してくれた。

やがて表情が和らぎ、足取りが軽くなっていく。


(今、走ってる。ひとりじゃない)


前を駆けるハルの背中。リズムを合わせるように並ぶユキ。少し離れた場所にも、気持ちでつながるリン。


そして、ゴールが見えた。


ゴール直前——4人の視線が、一瞬だけ交差する。


「いっけーーーっ!!」


ハルの叫びに、最後の力を込めてスパートをかけた。


4人は、それぞれのタイミングでゴールテープを切った。


順位やタイムよりも、「走りきった」という達成感が胸に広がる。


「やった……」

さちは両膝に手をつき、大きく息を吐いてから、笑った。


「うん、ちゃんと走れたね」

ユキが静かに微笑む。


「わたし、次はもっと速くなりたいな!」

リンがスキップしながら声を弾ませる。


「私たち、泳げて走れるチームになったね」

ハルの言葉に、全員が大きくうなずいた。


⸻


この日、4人はまたひとつ、“絆”の形を作りあげた。


風を切って走ったその道は、確かに彼女たちを、ひとつに結びつけていた。


挿絵(By みてみん)

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