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絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種  作者: たまに何かを書く人
【第4章】仲間とつくった絆

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19/50

第三節 テレビの中のわたしたち

夏休みも終盤に差しかかった、ある蒸し暑い夕方。

ハルとユキの部屋では扇風機が唸り、テレビの前に大きなクッションが三つ、ぽふんと並べられていた。


「はやく始まれ〜! ねえ、さち、お茶飲む?」


「ありがとう……でも、なんかそわそわして、飲んでられないよ……」


「録画もしてるから大丈夫だって!」


時計が午後6時を指す。

テレビの画面が切り替わり、ニュース番組のエンディング曲が静かにフェードアウトしていく。


やがて、アナウンサーの落ち着いた声が響いた。


「今日の特集は、この街に住む“スーパー小学生”。ハルさんとユキさん、そして同じクラスの友人、さちさんです。

実は双子の姉妹で、先日行われた県大会で、全国大会への出場を決めました。

3人で切磋琢磨し、支え合いながら続けてきた努力の日々に迫ります。ご覧ください。」


「……わぁ、本当に始まった」


「うわ、ナレーションついてる!」


画面に映し出されたのは、閑静な住宅街。

そこに重なる、ナレーションの声。


「静かなこの街に、並外れた才能と努力を持つ小学生たちが暮らしています。」


ハルとユキの家の外観、そしてトレーニングルームのドアが開かれるカット。

3人が並んでスクワットをし、腹筋をこなす姿がテンポよく映し出される。


「ハルさんとユキさん。双子の姉妹です。

先日行われた県大会では、見事なワンツーフィニッシュを果たし、全国大会への切符を手にしました。」


スローモーションで映る、フォームのそろったクロール。

決勝レースのゴールタッチの瞬間と、並んで歓喜する二人の姿。


続いて、スイミングスクールのコーチのインタビュー。


「この二人は本当に努力家なんです。仲間と一緒に鍛える姿勢が素晴らしい。

何より、“楽しそうに”続けているんですよ。それが、強さの秘訣だと思います。」


画面は切り替わり、トレーニング後の3人が笑顔で話す様子へ。


「スイミングスクールが終わったあとも、仲の良い友人であるさちさんとともに、3人で自主トレーニングに励んでいます。」


フォームチェックをし合うシーン。さちがハルに声をかける。


「ひじの角度、もう少し下げたほうがいいかも」


ユキがトレーニングノートに記録をつけ、ハルがそれを紹介する。


「3人で取り組んできた努力は、確かな変化として体にも表れています。」


画面には、さちがトレーニングを始めた頃の写真と、現在の映像が並んで表示される。

タンクトップ姿で笑うさちの、引き締まった腹筋。

ユキのしなやかな背中のライン。

ハルの力強く盛り上がった肩。


「友人のさちさんは、転校してきた当初、二人に誘われてトレーニングを始めたそうです。

今では、3人で一つの目標に向かって進む“チーム”の一員となりました。」


スタジオからは、かすかに驚きと称賛の声が聞こえる。


「ここまでの成長の裏には、どのような日々があったのでしょうか?」


場面は、3人のインタビュー映像に切り替わる。


ハルが、やや照れくさそうに笑いながら話す。


「正直、きつい日もあるけど……3人でやってるから、続けられるんです」


ユキはまっすぐ前を見て、言葉を選びながら口を開く。


「ひとりだったら無理だったと思います。毎日“今日もがんばろう”って思える仲間がいるのが、一番の支えです」


続いて、さちが小さくうなずきながら、はにかむ。


「最初は、私だけ全然ついていけなかったけど……いま、同じところを目指してる気がします」


次に映るのは、ハルとユキの母・あかね。


「昔は、おっとりしてて、優しい子たちだったんですよ。

でも最近は“強いお姉さんたち”って呼ばれることもあって(笑)。

その中にちゃんと優しさがあって……親として、本当に誇らしいです」


番組はラストへ向かう。


「まもなく行われる水泳全国大会。そして、市の大会に挑戦する仲間たち。

それぞれの目標に込められた思いを、3人に聞きました。」


インタビュールームで、3人が順に語り出す。


ユキは穏やかに、でも凛とした表情で。


「悔いのない泳ぎで、ベストタイムを出したい。

そして、今まで支えてくれた家族や仲間に、いい報告ができたらと思ってます」


ハルは力強くまっすぐ前を見つめた。


「私は……勝ちたい。

全国の舞台で“勝ちたい”って、今ははっきり言えます。

そう思えるくらい、全力でここまで来たから」


そして、さちが深呼吸して、静かに語る。


「私は、市の大会で一歩踏み出します。

結果よりも、自分に勝つことを、やっと目指せるようになったから」


3人の言葉には、迷いのない意志と、積み重ねてきた時間の重みがにじんでいた。


「この街に暮らす、小さなアスリートたち。

彼女たちの努力は、確かな形となり、

トレーニングノートの一行一行が、仲間との“絆”の証となっていました。」


画面がスタジオに戻り、拍手の中で特集が幕を閉じる。


テレビの明かりだけが残る部屋で、しばし3人は言葉を失っていた。


やがて、さちがぽつりと呟く。


「……すごかったね、今の私たち」


「ほんとに映ってたんだね……なんだか不思議」


「でも……うれしい」


目を潤ませながら、さちはそっと口元を緩める。


「なんか……私、もっとがんばりたいって思えた」


ハルとユキが、同時に頷く。


「うん。全国大会のために」


「チーム“トレノ”で、次のページを書こう」


外は、夏の夜の静けさに包まれていた。

テレビの光に照らされた3人の瞳には、確かな決意が宿っていた。


挿絵(By みてみん)

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