旅立ちに向けて.2
ギルドに入ると、みんな出掛けているよ。仕事だね。
「マキさんたち、こっちです」
クインさんは、カウンターから出て来て私たちを奥へと案内する。
「なあなあ、俺たちなんかしたのか?」
「いえ、どうしてですか?」
クインさんは、前を向いたまま聞き返す。
「いんや、ならいいんだけどよ?あのひょろっちがなんの用かなと……」
「ちょっと。エアハルトはああ見えて強いんですから、馬鹿にしたようなあだ名はつけないでもらえます?あなたは、あだ名をつけられる人の気持ち分かるんですか?」
クインさんが、食い気味でドロンに詰め寄る。
な、なにか、あだ名で苦い思い出でもあるのかな?
「く、クインさん落ち着いて」
「そうだよ。ドロンさんは口は悪いけど、悪気はないんだよ!」
二人で、クインさんを止める。
「サーナちゃん、それはそれで悪いと思うんだけど」
「にゃおん」
あんずに急かされ私たちは、廊下を進むことにしたよ。
奥の部屋の前でノックをすると、中から返事がある。
「は、はい」
「マキさんたちをお連れしました」
「入ってもらってくれ」
エアハルトの声に、ギルドマスターの部屋に入るとエアハルトは、精神集中していた。
そこからだけでも、凄い魔力を感じるよ。あんずの尻尾がぴーんと立った。
「エアハルト様、またさぼって!」
「ああ、ごめんごめん。デスクワークより森でのんびりしている方が生にあってるからね」
よく見たらこの人、エルフか。長い髪で耳が隠れていたから分からなかったよ。
私たちを椅子に座らせ、クインさんは退出する。
「えと。私たちに話しとはなんですか?」
「まさか、俺に惚れたのか?」
「ドロンさん、シッ!大事な話しかもだから!」
「へーい」
サーナに叱られるドロンて。まあ、いいや。
「うん。この前の人攫いの奴等の事なんだけどね」
「ああ、あれ」
そう言えば、首謀者とか見つかってないな。どうなったのかな?
「そう。首謀者はいなかった」
「いない?」
「多分、本部から直接なんらかの方法で送られているんだろうね」
悔しそうに言うエアハルトは、段々と貧乏ゆすりが強くなる。
「わ、わ!」
「にゃん」
サーナと、ソファで丸くなっていたあんずが、ちらりとこちらを見る。私じゃないよ。
「あの人攫いのごみくずども!いつも、こそこそ隠れやがって!絶対に捕まえて根絶やしにしてくれるわ!」
いきなり人が変わったように、文句を言うエアハルト。どうした?
「はは!いいぞ、いいぞ!それ!」
「ドロン、囃し立てるな!」
手拍子しそうだったので、慌てて止める。
「え、エアハルトさん、落ち着いて!」
「そうです!どうしたんですか!」
「はっ!あ、ああ、すまんすまん。あいつらの事思い出すと腹が立つんだよ」
苦笑してると、他のギルド職員がノックしてから入ってくる。そして、お茶を置いていく。
「ご苦労様」
「……いえ」
エアハルトが、優しく微笑むと頬を赤くして部屋を退出するギルド職員の女性。この人モテるんだ。まあ、イケメンなんだろうけど。
「……あの、人攫いとなにかあったんですか?」
「あいつらは、闇ギルドなんだ」
「闇ギルド?」
「人攫いや、強盗。なんでもありなんだよ」
苦々しく言い放つ。暗いなぁ。ああ、暗い。そして怖い。
どこの世界にも似たようなもんがあるんだね。
もっとも、現実世界でそんなのと、関わったことないけどね。
「そいつらは、慎重で中々尻尾を出さない。うちの弟もさらわれそうになったことがあった」
「ええ!?その子大丈夫だったんですか!?」
「うん。ありがとう、サーナちゃん。でも、大丈夫だよ。
すぐに気づいて助けたからね。そして、苦しめてやった」
それは、その人たち御愁傷様。
「それで?俺たちになにか関係があるのか?」
「ああ。そいつらのアジトが王都にあることが判明した」
ああ。これきっと行くパターンだ。どうしよう。果たしてそんなことを言われた。
「向こうのギルドと協力して、アジトを殲滅してくれないか?」
えと。目が怖いんですけど。見詰めないで。
「………それは、ちょっと考えさせてもらってもいいですか?」
「もちろんだ。強制じゃないしね。それと、領主代理が呼んでいるから、後で行ってくれるか?」
「……はあ。は?」
「なんだ?乗り気じゃないね?」
「だって、あの息子の親でしょ?」
私の嫌そうな表情に苦笑する。あんずがあくびをして、大きく伸びをしたので、優しく撫でる。
そして、サーナもにこにこして撫でている。
サーナを助けに行った時は、味方っぽい感じだったけどなんか信用出来なかったからね。
「ここの領主代理は、街の投票で治めている方だから、悪い人物ではないけどね」
それでも、気が進まない。あの息子見たら、イラッとしそうなんです。
「ま、気が進まないなら断っておくよ」
お茶を一口飲んで答える。まあ、王都行きは良い返事を期待してるよ。
あ、これ。断れないパターン?
誤魔化すように微笑んで、退室する。さて、どうしたものか?
つづく
あんずは、新たな猫と会えるかもと思ってドキドキしているよ。




