旅立ちに向けて.1
とある貴族の視点
「な、なんだと!?」
我は、ワインを噴き出しそうになる。
全く、昨日のメイドはいい胸があれだけ弾んでいたのに!それだけで、いい気分だったのだが、朝から悪い報告か。
「どうなさいますか?」
いつものように執事は、我関せずと言った感じだ。
少しは、わしに興味を持って敬えば良いのに!
「どうもこうもない。奴等をこの王都に呼べ!こちらで始末をつけてやろうではないか!」
ベッドで眠るメイドの身体に触れながら、声をあらげる。メイドが身動ぎする。
女の肌に触れていれば、少しは気分が落ち着くと言うものだ。
決め細やかな肌ではなくてはならん。
しかし、なんだと言うのだ、その冒険者は。
いくら、ロッカーたちが回りにいるとは言え、まだ新人のはずであろうが。腹立たしい。
夜の相手で、自分から動かない女のくらい腹立たしい。
この国を動かすのは、我のように選ばれた貴族でなければならないのに。今、治めている王では駄目だ。平和すぎて。
「くくく。荒れているな?」
わしの影から声をかけてきたのは、ユンゲルス。
魔族は基本、大昔に世界が封印されて、こちらの世界には出てこれない。こうして、影を通じて話せるのは、その魔族が高位の魔人だからだ。
「ふん。上に立つものは大変なのだよ」
吐き捨てるように立ち上がる。
「違うな、それは」
「なんだと!?」
「それは、貴様が無能で使えないからだ」
さも可笑しそうに毒舌でしゃべる。脅威種は、見てるだけで意識が飛びそうだ。
だから、あまり目線を合わせない。
「どうした?言い返さないのか?」
「ふ、ふん。こっちに出て来れぬ分際でいきがるなよ……!?」
風を切る音がした。わしの頬をかすめて背後の壁を切り裂く。
女が目覚めて悲鳴を発して震えてる。落ち着けと言いたいが、わしもブルっている。
「どうした?もう囀ずらないのか?」
さも可笑しそうに笑うと、捨て台詞を残して消えた。
「我等は、協力者だ。せいぜい仲良くしよう」
あやつ。壁くらい直せ。わしの良い女が風邪引くだろうに。
マキの視点
「にゃ~~ん♪」
「パパ、かわいいね!」
「ああ、そうだな。人懐こいしな~」
「ふにゃにゃ~♪」
「えへへ、かわいいね~」
あれから、一週間。猫カフェがオープンしたよ。あの後でエルフの兄妹に依頼料をわたしてアイスを買って帰った。
猫カフェの経営は、ソナタさんに任せてある。うん。私なんかよりよっぽど役に立つような……。
「…………」
だって、客が不審な行動をしないように見張ったりしてるだけだよ。
飲み物や、食べ物を注文されたら運ぶだけだしね。
それにしても、制服に猫耳姿を晒すのははずいよ。
「あ、猫のおもちゃですか?これ、どーぞ」
サーナちゃんは、順応してるけど。いつの間にか用意していたのか。
近所のおじさんが用意したものだからしょうがないけどさ。
なんだか、興奮してる客が私のとこへ来た。
「……なんですか?」
「ハァ……ハァ……か、構ってにゃんて、言ってもらえますか?」
「ふふ。ぶっとばしていいですか~?」
変な客に最高の笑顔でおもてなしだよ。
「ま、マキちゃん、駄目だよ、そんなこと言っちゃ!」
サーナちゃんが、私の手を取って奥へ連れていく。
「そうは言われても。ここは、猫カフェだし。私は、セクハラっぽい人とは、客とは言え怒ります」
「怒りますじゃないよ~!客商売なんだから、評判下げちゃうよ!」
サーナちゃんに注意される私は、なんか情けない。しっかりしてるな、サーナちゃん。恐ろしい子。それに、猫カフェなのに猫と同じかそれ以上に、人気あるし。
サーナちゃん目当てで来る人多いみたいだね。
でも、その辺は考えた方がいいかな。
「……でも、あの人喜んでるよ」
「……え?ははは」
私に文句を言われた人は、ぞくぞくして幸せそうだ。豚野郎っていってと言われても、それは言わないからね。そう言うお店じゃないし。
「で、でも。他の人は多分普通の人だから、気をつけてね?」
「はいはい」
「はいは、一回だよ!」
「はーーーい」
私になにか言おうとして、入り口の戸がカランと開く。
「サーナちゃん、こんにちわ!手伝いに来たよ!」
「ホウホウ!」
フクちゃんだ。私のとこへ来て、手に乗る。
「フクちゃん、こんにちわ」
私がなでなでして上げると、嬉しそうだ。
「こんにちわ、マキさん、ソナタさん!」
「ありがとう、助かるよ」
「ほんとにねー!」
「俺たちに任せとけって、サーナ」
アルフくんとポンくんもいる。その後から入って来たのは、カナリアさんだ。
「こんにちわ。みんなを、引率して来ました」
「こんにちわ、カナリア先生!」
「あら、サーナちゃん。かわいい制服と猫耳で、アルフがでれでれよ」
「してねーよ!なに言ってんだよ!」
顔を赤くして、そっぽを向くアルフくん。はは~ん。そう言うことかな。しかし、ごめんね。サーナちゃんと二人でギルドへ行かないと行けないの。
子供たちが来たのは、お仕事を手伝ってもらうため。年齢的にはまだ、雇えないので、ボランティアとして。
まあ、私たちがギルドの仕事をしてる時とかに頼むことになるけど、子供たちはペットを飼えないので嬉しくて仕方ないようだ。
お礼は、猫たちの戯れと、ロッカーさんかソナタさんのご飯だ。
「マキさんも、おじさんが寄って来て困る格好ね」
「はは。にこやかに気にしてること言わないで下さい」
「これが私なものです」
なに、自慢気に言ってるのよ。そう言えば、ドロンがいないな。何してるのかな?
裏口から出て見ると、人が賑わっている一角がある。
その列の先頭でなにかしてるのはドロン。
「どうだ?マキマキのフィギュアの制服バージョンは?」
「ハァ…ハァ…サーナちゃんの制服バージョンはありますか?」
「おう、あるぞ。銀貨1枚だ。水着バージョンは、銀貨3枚だ!」
「くっ!高いけど買った!」
「こ、この完成度!捲れるスカート!ろ、ロマンだ!男のロマンだ!」
店前でさわぐな。周りの通行人がドン引きしてるよ。
どこの世界にもこう言うオタクはいるのね。まあ、熱中出来る熱意は羨ましくもあるけど。
私が、熱中してるのは、サーナちゃんの成長……この人たちと何が違うと言うのだろうか。立ち眩みがした。
「おう、マキマキどうした?売れ行きが気になったのか?
心配すんな!サーナほどではないけど、お前のフィギュアの売り上げはいいぞ?ソナタや、マナよりは売れてる!」
子供みたいに、嬉しそうにしないでくれる。
「だ~れが、きょかしたのかな?」
笑顔で近づいて威圧する。
マキは、[威圧]をGETしました。
「ええ?そ、それはその?俺が?」
慌てるドロン。にじりよる私。そこへ、勇気ある客が声をかける。
「ま、マキマキさん!握手してくれたらあなたのフィギュア5体買いますん!」
「はぁ!」
私は、無言でフィギュアの棚に近づくと拳を叩き込む!
「ああああああああああああ!俺の傑作があぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ふん。ほらほら、嘆いてないでギルドに行くよ」
項垂れるドロン。自業自得。私は、猫カフェに戻る。
「大人一時間でお願いします」
何気に猫と戯れるのね。カナリアさん。まあ、いいんだけど。大人は、一時間銅貨三枚で、子供は一枚。猫の餌とかは別に銅貨一枚。食べ過ぎとかに注意しとかないとね。
「サーナ、行くよ」
「はーい。じゃ、行くね」
「あ、サーナ」
「なに、アルフくん?」
「マキさんと仲直り出来て良かったな」
「うん。えへへ。じゃあ、よろしくね!」
サーナがなにかを話しつつやって来る。
「なに、話してたの?」
「えへへ。内緒だよ」
にっこにこでかわいい。外に出て、落ち込むドロンを引っ張って行くよ。肩にはいつものあんず。とろろやムータに見送られ出かけるよ。
「サーナちゃん、制服かわいいね!」
「えへへ。ありがとう!お店にも遊びに来てね!」
「サーナちゃん、僕ちゃんを励ましてくりー」
「頑張って!あなたなら頑張れるよ!」
「ハァ……ハァ……サーナちゃん、僕をののしってくれ」
「え?えーと?」
流石のサーナちゃんも対応が出来ないので、その人には丁重にお引き取りを。ドロンがつまんで連れていく。
それにしても、サーナちゃんの魅力はどうなっているのかな。
どっかのアイドルみたいだし。歌とか出せば行けるかもしれない。
私なんて、威圧とか覚えてるし。そんなに怖いか私は?
Mな人たちには好かれて困るけどね。
「にゃん」
「うにゃにゃ」
あんずも、他の野良猫たちに挨拶ひて、私たちはギルドへ。
なんだろ?この前の報酬はもらったけど、ギルドから呼び出しとは。
良い予感はしないけれど行くしかないよね。
つづく
猫たちも、ドキドキだよ




