けんか. 11
サーナの視点
「待ちなさい!マスオ!」
「マスオじゃね………あがっ!」
聞き覚えのある声に顔を上げれば、マキちゃん!
ドタドタと部屋に入ってくるよ。
「サーナちゃん、大丈夫?」
「あ、うん。あ…ありがとう」
さっき、けんかしたからなんか、気まずい。嬉しいけど。
見ると、マキちゃんが足払いしてマスオ……マスフィーダさんを倒している。
「ま、待て!待ってくれ!」
マスフィーダさんが、涙目になっている。そして、コッセルさんが殴られたとこを押さえながら部屋に入って来て、マキちゃんを慌てて止める。
「ま、待つんだマキ!そいつは、見た目敵だけど、敵じゃない!」
「嘘でしよ?コッセルもこんな悪事に荷担してー!」
グーパンして、気絶させているよ。ハッ!私は慌ててマキちゃんを止める。
マキの視点
「……なんだ。こいつ、コッセルも潜入してた訳ね?」
「そうだ。ギルドに依頼してな。子供たちを売り払う変態共がいるって聞いてな」
コッセルさんとマキちゃんが、話していると、リーンちゃんがお礼を、言う。ペコリと頭を下げて。
「マキさん、ありがとうございます。助けてくれて」
「ホウホウ!」
「にゃん、にゃん」
「ふにゃあ」
ふふ。フクちゃんも嬉しそう。あんずの背中に乗ってるよ。
和やかな雰囲気のとこ、兵士たちが来て、破落戸たちを連れていくよ。
「待て!俺は違う!ただ、モヒカンが凄い冒険者だ」
ギルドカードを提示して、兵士たちが謝る。まあ、見た目破落戸に見えると行ったら怒るかな?
「俺様は、領主代理の息子だぞ!連れていこうとするな!」
「まさか。ホントに?あの駄目息子か。失礼、失礼」
とても、敬う気持ちの無い兵士が一礼して去って行くよ。あんな兵士の態度で大丈夫かなー?
「君、かなりの腕前だね。僕の出番が無くなったよ」
「はぁ」
誰、この品の良い人は?もう一人の女性と顔立ちが似ているね。
「こら、レナード。気安く話しかける前に名乗りなさい?」
「おっと失礼。綺麗な人、僕の名前はレナード。しがない貴族さ」
しがないって……謙遜かな?
「私は、ヒメリアよ。強い女性は好きよ」
にっこりと微笑まれて、素敵な笑顔だなと思う。
そして、貴族様がここにいる理由を教えてもらった。
王都でも同じことが起きている。こちらも同じ。
ここは支部みたいなもので、レナードたちが潜入したもののリーダーらしき存在に会えなかったとのこと。
これって、またなにかのフラグだよねー。嫌だな~。
私の望みは、スローライフなんですけどね。
まあ、いいや。変な組織は国の方々に任せて、猫カフェでまったりしよう。むしろ、自分のために必要かもー。
「俺は、ドロンだ。よろしくな」
いつの間にか、物怖じせずドロンは、レナードと熱い握手をしている。どうした?
「そうだ。サーナちゃん」
「は、はい。なんでしょうか?」
相手が貴族だからか、緊張してるね。私は緊張してないよ。ごめんね。同じ人間なんだしね。
「お父さんいるかな?」
「ぱ……父ですか?宿屋の方にいると思いますけど……あの、父のことを知っているんですか?」
「ええ。昔、ちょっとお世話になったの」
にっこりと笑いサーナちゃんの頭をなでなでして、レナードに声をかける。
「レナード、行くわよ」
「分かったよ。それじゃあみなさん、またいずれ」
そう言って、出て行きますがもう会うこともないでしょ。貴族だもん。
二人を見送り、他の子供たちと外へ出る。
「二人とも、怖かったでしょー?送ってくよ」
リーンちゃんを送り届けないとね。
「は、はい。ありがとうございます」
「にゃん」
「ホウホウ!」
あんずやくさもち。そして、フクちゃんがリーンちゃんたちを和ませる。
「なんだ、怖いのか?俺の逆立ち歩きでも見るか?」
いや、それはそれで怖いと言うか、困ってるでしょ、子供たちがね~?
「ホントにありがとう!」
「リーン、ホントに良かった!」
リーンちゃんが、両親に抱きしめられる。うん、良かったー。
三人が、感喜び合ってるのを私は、ソッとその場を離れる。
「ホホウ」
フクちゃんが、礼を言うように鳴いた。
「マキちゃん?」
「……ま、親子水入らずってことで、行こう?」
「?うん」
ギルドの報告は、コッセルさんに任せて、私たちは帰る。
ロッカーさんだって、心配してるだろうし。
「………あのね、マキちゃん」
「んー?」
「大人げなかったよ、色々とごめんなさい」
「もう、いいよ。こっちこそごめん」
手を繋いだ二人は、顔を見合わせて笑う。小さなことでけんかしてたな。
「サーナ、無事だったか!」
宿屋に帰ると、ロッカーさんに抱きしめられて恥ずかしそう。逃げようと、もがいてる。
「恥ずかしいよ~、お父さん!止めてよ~!」
「!お前今、お父さんて呼んだか?」
「いちいち、指摘しないでよ、恥ずかしいな~」
照れてうつ向くサーナちゃんに、ロッカーさんにおねだりされてる。
「マキ、無事で何よりた」
「おじさん、ありがとう」
「お前も、制服も」
「そっちか!」
まあ、今は制服着てないけども。
「でも、ホントに無事で良かったですよ」
ちょっと潤んでるソナタさん。男の趣味はともかく、良い人だ。
私が、裏口から出て行こうとすると、呼び止められる。
「マキさん、お帰りなさい」
「マキも、制服も、土くれもお帰りじゃのう」
「土くれって、俺のことかよ~?」
ドロンが、大袈裟におどけている。
「にゃん」
「あんずもじゃな、お帰り」
「ふふ。マキちゃん、あんず。お帰り!」
「マキ、お前がいてくれて良かった。ありがとうな。お帰り」
「……みんな。た、ただいま!」
ほとんど言ったことのない言葉に照れてしまう。弟には言ってたか。
そして、なんだか胸がじんわりしてしまうのだ。
人との暖かさを感じたのはいつ以来だったかな。
不意に泣きそうになった私に頬擦りをする肩に乗るあんず。
背後から抱きつくサーナちゃん。暖かさを感じた。
つづく
猫たちも、あんずとくさもちが無事で喜んでいるんだよ




