けんか. 10
ムスフィーダの視点
なんてことだ。親父に遊んでばかりで領主代理の息子の自覚がないと言われて、勘当されてしまった。
「バウッ!」
「ちっ!なんだよ、お前まで俺を見捨てるのか?」
いつも散歩に連れて行ってやっていたのに、恩を仇で返しやがって。まあ、俺の行きたいとこしか散歩に連れて行かなかったから怒っているのか?
どこ行っても、門前払い。親父がなにか、手を回しやがったのか。歩いていたらスラムまで来てしまった。
しかも、雨まで降って来やがったぜ。その時、角から出てきた奴等とぶつかって尻餅をついた。
この俺が、尻餅だと!?カッとなってぶつかって来た男にケンカを売ろうとしておかしなことに気づいた。
そいつらの抱えていた荷物が子供だったことだ。じたばたとしてるが、縛られているので身動きが取れない。
「おい、やべぇ!見られた!」
「ちっ!こいつも始末しちまうか?」
獣人たちがなにか話している。こいつら、俺のことを知らないのか?
領主代理の息子だぞ!?しかし、そこで思いついたことがある。
「おい、お前ら。俺にも一枚噛ませろ」
「あ?」
「は?」
呆気に取られる獣人たち。どうやら最近問題になっている人攫いか。
こいつらを利用しない手はない。子供たちを見たときに親父の言葉を思い出した。
「領主代理の息子として、恥じない行動をしろ」
そうだ。このガキたちは、将来俺様が領主代理になった時に税金を納めてもらうのだ。そして、女ならば俺の妻になる可能性もある。助けない訳には行けない。
決して、人攫いで儲けることを考えてはいない。こいつらに潜入して捕まっているガキ共を助け出して、親父に褒めてもらうのだ。
そして、住民からも信頼を得て、俺が領主代理になる頃には投票してもらうのだ。
我ながらいい計画だとおもっていたら、トントン拍子に成り上がって、副リーダーにまでなってしまった。成果としては、家族の付き合いで、他の貴族の家に出入りしていたかは、内部の構造を知っていて、貴族のガキをさらいやすかったからだ。
「君は、ムスフィーダじゃないか」
「あなた……ついにそこまで落ちぶれたのね。まあ、貴族にしては粗野で横暴な感じがしたから、そうなると思ったけど」
わざと捕まって連れてこられたのは、貴族のなんのために開いてるかよくわからんパーティーで話したことのある貴族の息子と娘だった。
レナードとヒメリアだったか。王都でも有名な俳優と女優ばりにルックスは凄いので、劣等感が沸くが押し殺す。
「俺様は、貴族じゃねぇ!あくまでも代理で、街の人に投票されて治めているんだ」
「知ってる。ちょっと辛かっただけよ」
くすくす笑っているが、縛られてるのによく、余裕があるな。ムカつく。そんなことより、なんでこんなとこにいるんだ?」
レナードとヒメリアは、王都の貴族。こんなとこになんの用があるのか。
「王都で、人攫いが横行していてね訳あって調べていたら、この街にまで広がっているから、こちらも調べに来たのさ」
「貴族のお前たちが?」
「あら、困った民を助けるのが貴族の務めよ?」
(そ、そうだったのか。貴族は民の税金で贅沢三昧をするためにいる訳じゃないのか)
「あなたはなに?人攫いに転職したのかしら?お似合いだけど」
「ちげーよ。子供を助けるためだ」
理由はともかく目的は、間違ってはいないから、そこだけ話す。
「柄の悪いのにそんなに似合わないことするのね」
からかうように笑われる。うるせーな、こいつ。男を馬鹿にしてる感じが鼻につく。
「相変わらず、男を馬鹿にしてやがるな!捕まってるくせに!」
「あら。男を馬鹿にしてないわ。あなたを馬鹿にしてるのよ」
心外とばかりに訂正する。尚、悪いわ。
「このやろ……」
「おい。他の子供もいるんだ。静かにしろ!」
やたらと立派なモヒカンにしかられた。奴も最近入った新入りだそうだが、大して変わらないのに偉そうだ。
「すみません。このアバズレが生意気なもんで」
「!誰が、アバズレよ!」
縛られた状態で、なにを暴れているんだ。少し、良い気味だ。
「……話しは聞いていた」
「え?」
モヒカンは、コッセルと名乗り潜入して探っていた冒険者だと言う。よっぽどこいつの見た目の方がここの組織に似合ってんじゃないかと思う。
「……どうやら、ただ子供たちをさらってる訳ではないみたいだ。なにか、他の目的……」
そこで、モヒカンは押し黙る。別の破落戸が入って来たからだ。
「ヒヒヒ、どうだ、ガキ共はどうだモヒータ?」
「ああ。大人しくしているよ」
「そうかそうか。そこの新入り」
「あ?なんだ?」
「おめえは、外の見張りをしてこい!」
「他の奴がいんだろ?」
「あいつはサボって、彼女とよろしくやってるよ」
「そうかよ。ちっ!」
マナのことを思い出してしまう。最高のわがままボディだったのに。思い出すと、ムラムラするぜ。
俺が女遊びをしていたから、フラれてしまったぜ。
レナードたちを一瞥して部屋を出る。ここに入って、偉そうなのはいるが、リーダー的な奴はいない。
どこから、指示を出しているのかと考えて扉を開けたら、金髪のガキがいた。確か、サーナだったか?
宿屋の看板娘で、俺よりも人気がある。カギは自分勝手で嫌いだが、なんだこの娘は?妙に魅力で俺様を牽きつける……だと!?
変な趣味はないが、やたらと甘やかしたくなるのはなんだ?
そして、あれよあれよの内にあの親父受けする女が珍しく私服で乗り込んで来たのだ。
俺と、あのコッセルを人攫いと思っているようだ。
つづく




