地下迷宮.9
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コツコツと歩いて来て、リリスさんの前で止まる。その視線は冷たくて鈍い。
「……いつもごめんなさいね?うちの主人はヘタレで責任逃れが大好きだから」
「こ、こちらこそ、ごめんなさい。ロナン様の優しさに甘えてしまって」
ちょっと、びびってる。まあ、本妻との会話だもんね。
「……あの人、いつも同じような人が好きですから」
困ったように首を振ると、従者に合図をします。従者は皮袋をソナタに渡す。中身を確認すると金貨何枚かと白銀金貨!大金をよくここで渡すな、この人。
「あ、あのこれは!?」
「手切れ金よ。あなたも家を出て行くとこないだろうから」
「しかし、こんなにいただくわけには参りません」
ソナタが慌てて返そうとするのを押し止める。笑顔が怖い、おかあさま?
「いいの。これからが楽しみだから」
作り笑顔を張りつけたままそんなことを言う。
「あいつ、なに言って…!もがもが」
ドロンがなにか、言おうとしたので、マナが慌てて口を塞ぎます。うんしょ、うんしょと背伸びして
口を塞ぐ姿が可愛らしい。
そして、私は気づく。この人わざとだ。わざとこんなとこで大金を渡して、冒険者たちに見せたんだ。
金と名誉がほしい冒険者なら、きっとソナタが一人になったときに狙うよね。いや、狙わないだろうけど、中には金に目が眩む人もいるから。この人に裏拳をかましたい。でも、駄目。きっと、私がなにかを言ったところで身分の高い人はこっちを下に見てくるだろうし。
あ~あ。冒険者たちの目の色が変わって……ない?
サーナちゃんがさりげなくソナタの前に出て、みんなを見ているから。
「……そうか」
「どうかしましたの、マキさん?」
「ううん、なんでもない」
サーナちゃんの魅力がカンストしてるから、お金よりもサーナちゃんの魅力がそれを覆い隠す程の人気になるのね!いやいやいや、そんなことあるかな?
今まで、魅力がステータスに表示されていないからな。
色めきたつ冒険者たちかと思ったが、宛が外れたみたいで、フンとそっぽを向いて去っていく。
「ソナタさん、大丈夫ですか?」
「……ありがとう、サーナちゃん」
ソナタは、優しく微笑んでサーナちゃんの頭を撫でる。
そして、皮袋をサーナちゃんに渡そうとする。
「え?これはいらないですよ」
「いえ。サーナちゃんたちにここまで守ってもらいましたから。その護衛の報酬だと思ってもらえば…」
「そうか、そうだな。喜んで……」
「ど、ドロンさん、冗談ですよね!?」
「ハリィ!」
かりんとハリィが、驚いて声をかけるとドロンはきょとんとする。
「も、もちろんだぜ」
嘘つけ。全く、動揺が出ているし。して、口笛吹こうとしないの!
ハリィが顔面にしがみついて押さえる。あ、ハリィのモフモフ……いいな。
「にゃん」
あんずが肩の上から見てくる。はいはい。あんずの毛並みは最高ですよ。
「ソナタさん」
「はい」
「そのお金はあなたのこれからのために取っておいてください」
「でも…」
「いーから、いーから。ロナンがくれるって言うんだから貰っておきましょ?」
「おい!わしは一言も……」
睨みを効かすとシュンとする。
「ああ、そんなことよりも行くとこないんだったら、家で働きません?」
「ええ?」
「……まあ、私が決めることではないんですけどね」
そして、サーナちゃんを見る。笑顔で頷く。
「ソナタさんさえよければ私は良いですよ♪お姉さんが二人いるみたいですし」
「……皆さんさえ良ければ、お世話になります」
よし。これで安心して冒険出来る。外で散歩したいし。決断早い人は好きだよ。
それに、下手にソナタさんに手を出すこともないだろう。
冒険者仲間にそんなことはしてほしくないしね。
「……あ~。その取り敢えずここで揉めないで貰えるかな?」
「……ふん。わしは貴族だぞ、ギルマス!貴様のギルドが小さい頃はわしが寄付してやったであろうに」
「それは、ありがたいんだけどね」
ホントにここのギルドマスターって、弱きだよねぇ。
どうして、トップになれたかと思うものの、隙がないんだよね、この人。
「ま、いいや。帰ろっか?」
今夜はゆっくり休んでまた、明日から探索だよ。
今も尚、潜っている人たちには悪いけど。
倒した魔物を換金して、かりんちゃんの依頼書を提出する。
「お疲れ様でした。かりんちゃん、よかったね」
「はい。みなさんのおかげでハリィは、元気です!」
かりんちゃんの笑顔に、ほっこりする。
宿屋に戻ると、カウンターでうたた寝している近所のおじさんがいた。
「うたた寝してるね」
「はい、してますね」
「にゃん」
あんずが、カウンターに乗っかり頬をちょいちょいとつつく。
「んあ?おお。みんな無事に帰ったのか。おひょひょ、相変わらずいい制服じゃの、マキよ」
「……寝惚けてるようだから、目を覚まして上げようか~」
拳を握る。冗談だよ。だから、つぶらな瞳を怯えさせないで。
「ま、マキさん、落ち着いて!」
「んん?その制服が似合う美女は誰じゃ?」
私を慌てて止めるソナタを見て、だらしない表情をしている。
「あ、あの、私はソナタと言います。今日からこちらでお世話になります」
そして、ぺこりと頭を下げる。
「そうかそうか。初々しくて良いのぅ」
うんうんと頷くおじさんは、スケベな上司みたい。
この人、今まではなにをしていたんだろうね。
「それじゃあ、まあ部屋に案内してやろうかのぅ」
「こらこら。それは私がするから」
「じゃあ私は、夕飯作っちゃうねー」
サーナちゃんが、おじさんの背中を押して台所に行ってしまう。
「マナも、ここで食べてく?」
「はい。私一人じゃ寂しいんですの」
あー、あの元カレね。ま、好みは好き好きだけどね。
マナには、魅力に感じるなにかがあいつにあったのだろう?
つづく
おじさんは普段、カウンターでうたた寝してるけど、客が来たら気配で起きるんだよ。
でも、今日は忙しかったから熟睡しちゃったんだよ。




