地下迷宮.3
結論から言うと、水晶玉はちかちかと輝き割れた。
破片が飛び散り私はあんずを抱えてふせる。えー?どう言うこと?
「……あんず、大丈夫だった?」
「にゃん」
良かった。なでなでして上げると、嬉しそうに目をつぶる。
他のみんなは、大丈夫かな?見渡すとマナは、バリアみたいのを張り頬を引きつらせていて、ドロンは破片が突き刺さってるのに私を見て肩を竦める。
「マキマキ。とんだドッキリをしてくれるな」
「違うもん。私のせいじゃないよ」
「あわわ。そうですの!マキちゃんのせいじゃないですの」
私たちの言い合いに慌てて割って入るとマナは魔法で箒を引き寄せて掃き始める。
「ま、取り敢えず掃除すっか」
「そうだね。マナ、私たちにも箒貸して」
「いいですよ~」
箒とちり取りを魔法で引き寄せ私たちの手に握らせる。
魔法ってこんなことも出来るんだね。
粗方部屋がきれいになると、紅茶みたいなのを淹れてくれた。
少し、フルーティーな味わいは心を落ち着かせてくれる。
「……それでさっきの爆発ですけどね。あんなのは滅多にないですの」
「そうなんだ。ごめんね、なんか」
「別にマキちゃんが悪い訳でもないですの!」
私が謝ると、慌てて首を横に振る。そんなにブンブン振らなくていいよ。でも、良い子だよ。
「……実例はあるんだろ?」
「文献で見たくらいですの。それによると…全部の魔法が使えますの」
「……チートだね、それは」
「チーター?なんだそりゃ?」
「さあ?」
チーターとはなんですか?この世界にはいないでしょ、たぶん。
しかし、吉田さんの過保護、こんなとこにも合ったのかー。
「……あの、マキさん。このことは内緒にしておきましょう」
「え、どうして?」
「国家に利用とかされそうですの」
「…ああ、そうかもね。過ぎたる力は妬まれるか~」
道場に通ってた時も、兄弟子たちに睨まれたもんね。『女のくせに俺より強くなるなと』いじめとかになったら、めんどくさいから辞めたんだよね。勝っちゃうし。
貴族にメチャメチャにされそうで、背中がゾッとしました。寒気がしたよ。
「なら。ある程度の魔法は覚えとこう。みんなの助けにもなるしね」
「わぁ!マキちゃん凄いね!私ももっと強くなりたいな~」
「サーナちゃんは、これからだよ」
リア充だし。これが仮に同じ年齢だったら抜かれてるでしょ。ステータスのタイプは違うけど。
「ではでは、サーナちゃんも試しに当ててみるですの」
「は~い!」
サーナちゃんが元気良く水晶玉に触れると、眩く光り輝く。
「ひゅ~。俺のオーラみたいに眩しいぜ」
そんな訳ないでしょ。静かにして。
「こ、これは……光魔法!?」
「それって、癒しの魔法的な奴かい?」
「……そうですの。でも、神官とか司祭とかに転職しないと出来ないですの」
「おお!じゃあ私も激レアだね!マキちゃんと一緒!」
私とハイタッチして喜んでいるもののマナの表情は晴れない。どしたの?
「……このことは、あまり人には言わない方がいいかもしれないですの」
「また貴族的な?」
ロナン大司祭の顔を思い浮かべる。あの人はまだ、マシな方なのかも?
「それもありますけど、癒し系の魔法が使えれば、人が殺到します。そして、教会に睨まれますよ」
「ええ?困ってる人を助けるのが、神官たちのお仕事じゃないの?」
サーナちゃんは、純粋だ。言ってることも間違ってないのかもだけど、自分の利益のために生きているのが人だし。光の女神に遣える身だとしても、大量の金貨を貪るのだろう。
「まあ、ともかくササッと覚えようぜ」
「あなた、ホントに気にしないね」
「そうか?仲間がなんだろうと、仲間にはちがいねーだろ?」
「……あなたが、初めて良い人に見えた」
「惚れるなよ?」
「ばーか」
やいやい言いながらも、魔法を習得して、マナに銀貨を何枚も払う。
その時、扉が勢いよく開く。何事かとそちらを振り返れば、エレンさんがいた。荒い息を吐いて。
「早く!私のとこに来なさいよー!ひんむいちゃうぞー!」
この人はなにを言ってるの?ポカンとしてしまう。
「みんな、戻ってこいよ!良い女たちがいなくなる」
トトちゃんに見送られながら、エレンさんの服屋に。恥ずかしいから!
そこに用意されていたのは、素材を合成された新しい制服……て、また制服。サーナちゃんの服。
ドロンの上着。マナのセクシードレス。
「あ、間違えたわ、つい」
エレンは、マナの服を奥へ持っていくと魔女のドレスを持ってきた。
「なんですか、さっきのは!」
「まあまあ、マナちゃんが勝負する時に貸して上げるわ。すぐにひんむいてもらえるでしょ?」
エレンさんは、そう言うと早く着てくれと急かすので、サーナちゃんから。
「じゃーん!」
水色の髪止めでポニテにして、赤いパーカーみたいなローブを着ている。森の優しい素材で出来ているようだ。
「サーナちゃん、かわいい!」
「ふにゃあん」
あんずが、すりすりしている。あんず、可愛い子が好きなの?男だな。
「俺もはなにを着ても似合うぜ」
「はいはい」
「つめてーな」
丈夫な上着と前に購入した丈夫なパンツ。その上にバトルアーマーとかを身につける。
「どうですかね?露出控え目で大丈夫です?」
マナは、自信無さげに魔女のローブと魔女の帽子を被る。赤いピアスがアクセントだ。
「そそると思う男は多いかもな」
「ドロンさんのばか~!」
「デリカシー無さすぎね」
「そうですよ!女性が喜ばないです!」
「ふにゃあん!」
「まあな。さすが、俺みたいな?」
なぜ、自慢気なのか分からないけれど、これで生き残る確率も上がるよね。
「にゃにゃん」
あんずが、エレンにすりすり。もしかして。
「あら、かわいいわ。なに?おねだり?」
エレンは、アクセサリーコーナーを見て、蝶ネクタイを持ってくる。
「これなんか良いかもね」
しゃがんで着けてもらうとあんずが、とくいげに見上げて来る。
「にゃん」
「はいはい。ちょー、かっこいいよ、あんず」
頭を撫でて上げるとどこか嬉しげだ。
「あんず、かわいい♪」
サーナちゃんもあんずの顎をなでなで。ほのぼのとしている。
ま、緊張して行くよりリラックスは必要だよね。ね?
つづく
あんずも水晶玉が割れてびっくり眼だよ




