小さなティマーと.4
ロナンの視点
「~~~!」
絶頂を向かえたのか、声にならない声を上げて女が、身震いした後わしにもたれかかってくる。息が荒い。
わしが、年寄りだからお前がいつも頑張って動いてくれる。
わしからすれば、こんな嬉しいことはない。
それにしても、あのカナリアは不快な奴だ。わしの方が身分が上と言うのに。それに、お布施を法外に請求してるのはわしではない。
大司教様なのだ。そして、そのおこぼれをもらってるにすぎない。
おこぼれ、最高。こうして、愛人に会えるのだから。
しかし、愛人と聴いたときのあのマキとか言ういい女の目。ゴミを見るようなそんな目だった。
わしは、Mではないからぞくぞくなどせずにムカついただけだが。
それにしても、猫がうるさい。昨日までは静かだったか、今日はうるさいのぅ。
スヤスヤと眠る愛人の頭を撫でて、部屋着を着る。
「……帰っちゃうの?」
「うむ。わしは、お前との授業が好きだが、子供たちの読み書きを教えるのをサボってしまったからの」
その言葉に苦笑する。この子はいつも、困った顔で笑う。
親が失くなって途方にくれているところをわしが声をかけた。このアパートの一室を与えた。
「また明日な」
その愛人の額にキスして、部屋を出る。軋む廊下をゆっくりと進み外に出ると、夜の空気がひんやりしていた。外に誰もいないのを確認すると、教会に向かう。夜道はどこも不気味なものの、遠くで騒いでいるのが聞こえる。酒場で騒いでいるのだろう。
教会の敷地内に入ると立ち止まる。人影?気のせいか。墓場の方にだれかがいたような……?
もしかしたら、子供たちが忍び込んでいるかもしれぬ。
前に、わしが寝ていたら、白い布を被って脅かしに来おったことがある。
わしがいつも、ガミガミ怒っておるからその仕返しかもしれん。
それか、もしくは幽霊の類いか。アンデッドの相手は、若き日によくしたことがあるからな。
「………た…助けて……く……れ……」
「……?誰だ?カナリアか?」
「……うう」
もしかして、カナリアの奴が泣いているのか?
あやつは、あんなキツい物言いをして置きながらホントはわしが愛人と会っているので泣いているのかもしれん。
それならば、早く行って慰めてやらねばならん。あの美人を。
急いで声のする方へ行けば、そこにいたのは……傷だらけのおっさんではないか。
鎧は裂かれ、傷だらけと来ている。
「これは、いかん」
わしは、慌てて近寄ると意識を集中させる。結構な重傷だが大司祭クラスの魔法を受けよ!
「女神の温もり!」
ヒールでは間に合わん。わしが使える中で最高の魔法。
すぐに傷は癒されて、苦しげだった表情も穏やかになる。
全く、わしの『逢い引き』のスキルが合ったからお主は治りも早いのだぞ。治療費は、冒険者ギルドに請求すればいいのだろうか?
それっぽい奴だからのう。珍妙なぬいぐるみみたいのを持っているがぬいぐるみ使いか。
「カナリア!わしのカナリアはおるか!?」
すると、すぐにどこからか教会から出てきて、スリッパでどついてくる。
スパアァァァァァァァァン!
墓場に響く小気味良い音……じゃないわ!
「貴様、大司祭のわしをなぜどつく!?」
「うるさいですよ。誰があなたのですか!?ド変態大司祭!いいですか?偉ぶるなら大司教くらい出世してからにしてください!
それにこんな真夜中になんで……あら?そのお方はどうされたのですか?」
一気に捲し立てた後で、傷ついていた冒険者に気づいた。そしてハッとする。
「ま、まさか、愛人?」
「違うわ!」
「ともかく、こんなとこで寝かしといたら風邪を引く。運ぶのを手伝ってくれ」
「そう言うことでしたら、手伝いましょう」
しれっとしてわしと共に運び入れる。無事なのはいいが、嫌な予感しかしないぞ。
マキ視点
次の日の朝。階下で私は、サーナちゃん、ドロン、そして、マナと共に冒険者ギルドへ来ていた。
そこにいたのは、ぬいぐるみ使いのゲインで、他の冒険者たちになにか話している。
「ゲイン、無事だったんだ」
相変わらず、ぬいぐるみ使いが似合ってないなんて言ったら失礼だから黙っているよ。
「お!サーナちゃん、かわいいね!」
「おはようございます、ありがとう!」
「とても、素敵だよ…ハァ…ハァ…」
「おはようございます、いつも、鼻炎で苦しそうですね?大丈夫ですか?」
なんだ。鼻炎か。危ない人と勘違いしちゃったよ、ごめんね。見知らぬ冒険者さん。
グインさんの注目を一瞬でかっさらうサーナちゃんの魅力チート。
子供好きのお父さんお母さんは、メロメロになること間違いなし。
「マキ、かわいいね。デートしてくれよ」
「マキ、いい武器屋見つけたんだ。俺と行かない?」
それに引き換え私を下心丸出しで誘ってくる年上の多いこと。
「ごめんなさい。これから、依頼なの」
無関心で断って行くと、ゲインが近寄って来る。
つづく
ロナンの愛人は、ロナンに感謝してるんだよ




