帰ってからの.3
「わーい!パパだー!」
「お、おい!こんなとこで恥ずかしいだろ!?」
宿屋に戻ったサーナちゃんが抱きついて、満更どもないロッカーさん。でれでれしちゃって。クランツさんは、微笑まし気に眺めている。
マナは、ベテラン冒険者に物怖じして私の背中に隠れてる。
魔法を使ってる時は、別人なのにね。
「二人ともこれから依頼なんですか?」
武装をしてるとこを見るとそうなのか。ロッカーさんは、プレートメイルと背中に盾。腰に名のある剣。クランツさんは、同じくプレートメイルに高価そうな槍。
「ちょっくらめんどくさいことになってな」
クランツさんが、にやりと笑う。
その言葉にサーナちゃんが不安そうな顔になる。そんな表情もかわいい。
「めんどくさいこと?」
「気にするな。嬢ちゃんはしっかりサーナを守りな」
「……うん。分かった」
「パパ、お仕事?私が帰って来たから宿屋も潤うよ?」
そんな困った表情でそんなこと言われたら、思い止まっちゃうと思うんだけどロッカーさんは困ったように頭の後ろをかく。行きたくないみたいだね。
「ごめんな、サーナ。これから困ってる人を助けに行かないと行けないんだ」
しゃがんで頭をなでなでしてるロッカーさんは、名残惜しそうに立ち上がる。
「……寂しければ俺がなでなでしてやろうか?」
寂しそうなサーナちゃんにそんなことを抜かす冒険者をロッカーさんは一睨みすると、サッと視線をそらしてるよ。冒険者ランクBとか仰ってましたからね。手合わせした限りではもっと上だと思うんだけどね。
そう言うことにしたい年頃なのか。違うか。ま。サーナちゃんのことは私が守るけどね。
「……みんな。サーナを頼むぞ。人気がありすぎるからな」
「ええ、任せといて。しっかり守るから……でも、宿屋はどうするの?」
「…ああ、それならあいつに任せてある」
「あいつ?」
「いるだろ?お前の制服見て興奮してるじいさんがな」
「あー、あの人」
宿屋の経営なんて出来るのかな。いつも、どこにいるのか、サーナちゃんが出て来るとフラッと現れる謎のおじいさん。
「うん、分かった、おじさんに頼るね」
にこりと答えるので、どうやら何度か頼ったこともあるようだ。
そして、出ていく二人を見送った後私たちは、クインさんに連れられてカウンターへ。
「まずは、今回の件の報告をお願いします」
「んじゃあ、この俺のサーナとマナのフィギュアを……」
「しっ!ドロンさん、邪魔しちゃだめだからね?」
「……おう」
小さい子に諭されているよ。ドロンもサーナちゃんには強く出れないよね。苦笑しつつそれを眺めて今回の出来事を報告する。魔神だか、魔人のことや、時計仕掛けの迷宮のことも。ピロピロのエロさは別にいいや。そして、一応かぼちゃ祭りのことも。クインさんは懐かしそうに話しを聞いている。
「……魔人ですか。やはり」
「え?なんです?」
「……いえ。父は元気でしたか?」
「そうですね。クインさんのことをとても心配なさってました」
「そうですか。私は…いえ。ギルドカードをお願いします」
「?はい」
なにかのフラグ。思わせぶり。あんまり関わりたくないな。魔人とはね。
「え?」
ギルドカードの色が銅からきれいな銅へ。まだ銅かいと言う内心のツッコミはさておき。早くない?
「おめでとうございます。Dランクへ昇格しました」
「ランクアップが、速いと思うんだけど?」
なにか、裏があるのではと警戒してしまう。そんなものだよね。
その笑顔の向こうに何が隠されているのか。クインさんの身体が小刻みに震えている。
それでも、仕事の姿勢を崩さないのはプロだから。流石です。
「いえ、それは魔人だからです」
「…そんなにヤバイの?」
「お前の頭んなかくらい?」
「ドロンさん、子供じゃないんですからちゃんと話しを聞きましょうですの」
ついに、マナにまで注意された。
「やばいです。こちらへ」
他の冒険者に聞かれたくないのか、奥の個室に案内される。なんだろう。私はのんびり散歩したいのに。もう。変な相手はいらないからね?
来客用の部屋なのか、そこへ通されて。しっその部屋だけど、ソファは中々いいよ。余計な物はなにもないけど。
「お、ここは俺が説教食らった部屋だ」
「……はあ。ドロンさんは、お子様みたいですね」
サーナちゃんの感想に肩を竦めるだけだよ。反省してるのかしら。
「今、お茶をお持ちしますね」
クインさんが出ていった後、私はマナに聞く。
「ねえ。魔人てそんなにヤバイの?」
「……そうですね。ただの魔族の人なら私たちと同じなんですが、魔人とか魔神と呼ばれるのは、ドラゴン以上にやばいですの」
「そっか。あのクロックもそうだ
ったよね」
膝の上に乗っかって丸くなるあんずをなでなでする。
なぜ、嬉しそうに話すマナ。魔人の持つ魔法にでも興味があるのかな。
クインさんがお茶を運んで戻ってくる。そして、後ろから続いて入って来たのは、ほっそりとした人。
隣に座っているマナの身体が強ばる。どした?
立ち上がってお辞儀しようとするのでそれを押し止める。
「ああ、そのままで」
静かに微笑むと私を見て一言。
「その制服かわいいね」
「……変態さん?」
「なんでかな?オシャレな服装だったから褒めただけだよ」
「あ、ども」
なんだ。回りにおかしな人が多いから、この人もそっちの類いかと。ごめんなさい。でもまあ、制服はこの世界では珍しいかもね。生地も上等みたいだし。高価なら、ひんむかれないように気をつけなくては。
つづく
ほっそりした男は、マキちゃんの制服を見て、過去の自分を思い出していたんだよ。




