帰ってからの.2
王都の屋敷のとある一室。ぽってりとした貴族は、報告を受けて苦虫を噛み潰していた。
「わしは、貴族だぞ?このわしの計画がなぜ潰されねばならん!」
ダンと年代物の机を叩く。腕が痛いと思いつつも、カッコ悪いから黙っている。
執事はこんな時にも冷静にお茶を注ぐ。
少しは、わしに恐れを成せばいいものをと思いつつ、執事の淹れたお茶を一口。くそ、うまい。文句もつけられない。
「その冒険者と言うのは?」
「騎士団を止めたものです」
「……あの下民か」
道理で、わしの手練れの暗殺者を始末出来るわけだ。
それよりも、あの村の方だ。邪魔な貴族の勢力を弱めるために奴の領地で問題を起こしたのに。使えない魔族だ。イライラする。
昨日の夜のメイドは、良かったのに嫌な気分だ。
「しかし、なぜ失敗したのだ?あの魔族はぼんくらではなかったはず」
「冒険者が村を救ったと報告に上がっていますが……」
執事は静かに語る。しれっとしおって。まあ、よい。まだアレがおる。あの街の地下にはな。
マキ視点
私は、しばらく進んでがたごと揺れる馬車を止めさせる。
「あん?どうしたマキ。こんなとこで止めさせて」
「え~、これから話しがあります」
「なんだ?愛の告白か?」
「するか!」
勿体ぶって立ち上がると、ドロンが茶化してくる。
私は、みんなを見回すと転移のスキルについて話す。
「わぁ!そんなすごいスキルがあるんですね!マキちゃん、完全無敵ですね!」
「う、うん。ありがとう」
そんな超人みたく言わないで。サーナちゃんは期待する瞳で見てくるよ。
「つまりなにか?俺が今作ってるマナの水着フィギュアよりもすげーってのか?」
「そ、そんなの駄目なのです!」
「だめ、だめって言うほど作って欲しいんだろ?」
ドロン、さいてー。しかし、そんなの作ってたのね。私のだったら、問答無用で叩き壊すけどね。
そのマナフィギュアは、マナに任せます。私は、アイテム袋から取り出したのは古い書物。
ちょっとドキドキしながらページを開くと、まあ、なにが書かれているか分からないけども。身体になにか吸収されていく。
ウイングの魔法をGET!
今まで行った場所を思い浮かべると、そこへ瞬時に移動できる。
「よし。ものは試しってね」
「おお!?マキは、時空すら支配するのか!?」
うるさい、ドロン。みんな、しかしわくわくしながら私を見ているので、イメージして。オイルトテスの手前の林の中。
「ウイング」
唱えた瞬間。空間が歪む。しかし、それは一瞬のことで気づいたらそこは、林の中。木々の間からオイルトテスの街が見える。
「すごい!すごいですの!今時、王都の宮廷魔道師でも使えるかどうか!」
マナが、ぴょんぴょん飛び跳ねる度に豊かな胸がばいんばいんする。
私だって負けてないよ。そこまではないけども。
「マキちゃん?」
「なんでもないよ、さ、帰ろう」
SPもそこまで消費してないかな。ドロンが感心したように肩をバシバシ叩くのがうざかった。
「お前、俺を越えたわー」
「そうですか」
そんなことは、どうでもいいけど。久々に故郷に帰ってきた気分かな。
ドロンが口笛を吹こうとしたので慌てて止める。ドロンの口笛は魔物を呼び寄せるのだ。
弟が昔、そんなRPGプレイさていたのかもしれない。胸がちょっと痛むのは心配かけてるからかもしれない。あんずが心配そうに見てくる。
その顎の下を撫でてやると心地良さげにしている。
馬車は、オイルトテスの入り口につくと馴染みの門番が駆け寄ってきた。
「こんにちわ、ライルさん!」
「おお、みんな元気そうだなって、帰って来るの早くないか?」
ライルさんて言うんだね。いや、それよりまずい。転移のことは秘密にしてもらってる。だって、目立ちたくないし。国とかが絡んできたら嫌だし。
「まあな。俺の巧みな手綱捌きにかかればな。ちょちょちのちょいさ!」
ちょちょちのちょいって、誰かが口にするの始めて聞いたよ。
門の前に列が出来てるのは、王都のお祭りのせいだろう。
そう言えばなんの祭りかな。みんな浮かれたいのだろうか。
しばらく待たされてから中に入ると、懐かしの街並み。
「ふにゃあ」
「にゃん」
街の猫たちがお出迎えしてくれてる。通行人の邪魔にならないように家の屋根の上から。馬車に飛び乗ってあんずにじゃれてる猫もいる。
そして、あんずは地下を見ては鳴く。私を見る。ん?なんだろ?地下のことが気になるのかな?
揺れについてはどうなったんだろう。グインが潜ったとかなんとか。
相変わらずの通行人の中を進んで、馬車を馬車のお店に返す。その後、ギルドへ。
「お!Jk」
「え?」
声のした方を見ると一人の冒険者風の男の人とすごくきれいな女性がいた。男の人と目が合うと恥ずかしそうに目を反らして足早に立ち去った。なに、あれ?でも、Jkって言ったよね。プレイヤー?
いや、ここは異世界だと思うから。このリアルさはそうだと思うんだよね。
「サーナちゃん、お帰り!」
「サーナちゃん、元気だったか!」
「ぼ、僕とおままごとしないかな?」
サーナちゃんが帰ってきて喜ぶ街の人と、それを見てびっくりしている旅人や旅芸人たち。
まあ、サーナちゃんのこと知らなければ驚くよね……今、変な台詞口走った人いたよね!?
さんちゃんは、私が守る。美人だからと言って妬む人はいるけど、その分変態が寄ってくる苦労があるのだ。
中に入ると、昼前だからかあまり冒険者はいない。みんな、依頼を受けに行ってるのだろう。そこに見慣れた人たちがいた。
「よっ!サーナ。マキ。久しぶりだな」
「クランツさん、ただいま!て、パパもいるの?」
「いちゃあ、悪いか?俺だって冒険者だぜ?宿屋の経営が悪い時は依頼をこなすさ」
駄目じゃん。サーナちゃんいないと駄目じゃん。看板娘の効果ハンパないな。
つづく
ホントはギルドに入る前に、最強アーチャーの主人公とすれ違ってるんだよ。




