帰ってからの.4
「こちらは、ギルドマスターのエアハルトよ」
「よろしく。君がいなくても噂の猫使いか」
「ども、です。私のこと知ってるんですか?」
「まあね。真面目に働く優秀な子だと聞いているよ。そして、なによりおじさん受けがいいと」
「こら、おっさん」
「冗談だよ。初めてだから緊張を解こうと思って」
「……はぁ」
私は、いつの間にか強ばっていた身体をほぐす。この人、なよっとしてるわりには隙がないんだよね。
この街の冒険者は化け物ばかりいるのかと文句を言いたくなる。
それでも、魔物の数が減らないと言うことが、冒険者と言う職業が大変なものと窺える。
「……どうして僕みたいのが、ギルマスをしているか疑問だよね?」
「はい」
「はいって、正直すぎですの!」
マナがいつも以上にビビってるよ。ドロンも静かにしている。
「はっはっは、それはいいよ。ま、いずれ見せる機械もあるかもね」
なにを?でも、ま、いいや。そんなことより話しを聞こう。
「……それで、なんで個室に?」
「ああ。魔人の一人を倒したんだよね?」
クインさんが、依頼の報告書をギルマスに渡す。それを見ながらあたまのよこをかく。癖みたい。
「そうですね。それがなにか?」
「なにかって言われてもね。マキ……だったね。君の成し得たことは凄いことなんだ」
「そーなの?」
「そーなの?」
「ふにゃあ~」
サーナちゃんを思わず見ると、サーナちゃんも見返して言葉がハモる。
あんずが、膝の上で伸びをしたので微笑ましいよ。
「クイン、説明して」
「はい。魔族は昔、光の女神と天使たちに追いやられて、別の世界に閉じ込められたんだけど、最近、光の女神の張った結界が弱まって、魔族が暗躍し始めているの」
「まあ。これは機密事項だから話さないようにね」
「………」
聞かない方がよかったよ。なんか、フラグ立ってるし。
そして、魔族のランクについて話しをしてくる。
「魔族は、普通にあっちの世界で暮らす人たちで、争いを好まない人達です。魔人は優れた武人たちで破壊と壊滅を望むものが多くいます。
マキさんか戦ったのはこちらだと思われます」
「うん。はためーわくだよ」
じゃれついて来なければ、スルーするのにな。呑気に旅行気分で世界を旅する予定だったのに。
「まあ、なんで魔人が時計の中にいたのかしらねーけど、サーナの料理は魔族で、マキマキの焦げた料理は魔神てこったろ?」
「どーいう意味!?」
「冗談だよ、半分な」
マキマキ言うな、ドロン。睨みつけてもどの吹く風だ。
「おほん。その魔人がなにを企んでいるかはこちらでも調査しておくよ」
「そーですね、そーして下さい」
私は関係ないもん的に言ってやると、苦笑された。このギルマス。優しそうな笑顔の下はなにを考えているのか分かりづらい。
「ま、今は優先的な依頼はないけど、地下調査の依頼は頭に止めておいてくれ」
「あ、あの地下調査、上手くすすんでいませんですの?」
「まあね。揺れはおさまったんだけどその原因はまだ、見つかっていないんだ。結構苦戦しているから、気が向いたら頼むよ」
そう言って席を立つ。忙しいのか?強制じゃないならいいか。匂いがつきそうだし。
「後は頼むよ、クイン」
「はい、ギルマス……ちょっとお待ち下さいね」
クインさんも席を立つ。
「魔人とは関わりたくないな~」
「そうか?クロックとバトってるときのお前はイキイキしていたけどな」
「止めてよね。そんなわけないでしょ?バカなの?」
「誰が、泥まみれのバカだ!これは、誇りある泥だ!」
「そんなこと言ってないでしょ!文句をねつぞうしないでよね!いーっ!」
クインさんが、他のギルド職員となにか持って来たよ。報酬かな。
そして、私たちの口喧嘩を見て微笑ましく眺めてる。
「なに?」
「いえ、皆さん仲がいいみたいで……」
「よくないよ」
「よかぁないな!」
「うん。みんなが嫉妬するくらい仲良いよ」
「そうですね。そこそこ?」
みんな、見事に意見が揃わない。魔人とのバトルでは連携取れてたと思うんだけどね。
「ええ?みんな、仲良いですよね?」
「………はい」
サーナちゃんに不安そうな感じでジッと見詰められるとうなずかざるを得ない?
「それより、報酬を渡してくんな」
「ドロン、言い方があるよー」
「まあな」
「まあなじゃないでしょ。ま、いいや」
報酬の皮袋を、みんなを見回してから開けてみると結構な金貨が入ってますよ。
「あの、こんなに報酬でしたっけ?」
「そうです、です」
マナも隣でこくこく頷いている。その頷くために揺れる胸を見て、ギルド職員はくっと唸っている。まあ、その、ドンマイ?
それより、訳もなく報酬が増額されたら不安なんだけど。
サーナちゃんは、瞳をきらきらさせているけどね。
「まあ、今回は魔人でしたからね。報酬多めですよ」
そして、みんなの前にアイテムを置いていく。どれも、珍しげなアイテム?少なくとも、私たちが装備している物よりは良いよね。
「これは、胸当て?」
「はい。東方之国産の深紅の胸当てです」
深い紅い色は、派手と言うよりは静かな感じです。身につけてみるとしっくり来るよ。動きやすそう。後で試して見よう。
「これは、杖ですか?」
「はい。オーカーの杖です。固くて丈夫で、サーナちゃんかわいいから狙ってくる相手にも鈍器になりますよ」
にこやかに怖いこと言わないの。相手まだ、子供だよ?
でも、白くてかっこいい杖だね。森ガール用かな?
「これは、魔法書ですか?」
「マナさんは、炎魔法が得意とのことなので、種類が増えると思います」
「ありがとうですの!もっと勉強して覚えるのです!」
ホント、嬉しそうにしてる。魔法が好きなんだね。ま、いいか。
「にゃあん?」
「あんずにもあるの?」
「ええ。街の猫ちゃんたちのためにも、私から個人的にプレゼントです」
それは、猫の缶詰だ。しかも、高めの奴だよ。贅沢させて良いのかと思うけど、あんずの視線が痛い。そわそわしてる?
はいはい。後でね。食べさせてあげるよ。待っててね。ちょいちょいと前足で叩いてる。かわい。
「おお、これは!」
ドロンが、手に持っているのは、えと、土?土だよね。
「鉱山街ガイアルストの質の好い土です」
「そうか、そうか。分かってるじゃねーか。お前は、良い女だな!」
めちゃくちゃはしゃいでるよ?その土なんなのー!?
つづく
ホントにその土なんなのー!?
深紅の胸当て―東方の島国の炎で鍛えた胸当て。怒りをその胸に宿せ!
炎耐性(小)
オーカーの杖―北国の強い風に吹かれて折れにくい魔力を込められた杖。水、氷系の魔法の威力をアップさせてくれる




