エルフの依頼.2
のんびり街での依頼を受けるつもりが、街から飛び出し始めているよ。
ギルドを出たとこで、サーナちゃんは立ち止まって見上げる。
「あの。クインさんのこと気になるの」
「私も、気になるけど、依頼をこなさないと」
「……うん。分かった」
こくこくうなずく。まあ、サーナちゃんにとっては、同じ街の近所の住人。困ってるなら手助けしたいんだよね。
「ま、戻ってきて気になるなら、話しを聞いて見ようよ」
「……うん。そうですね」
「案外肌の乗りが悪かったりとかかもよ」
「はい?」
「ううん、なんでもないよ」
サーナちゃんは、まだ気にしなくていいもんね。つるすべもちもちだし。見てたら初穂餅食べたくなっちゃったな。和菓子専門店とかないかな?
「おお、サーナ。また、制服ではないのか」
出た。近所のおじさん。音もなく背後から迫って来ないでよね。
裏拳を寸止めしたからよかったものの当たるとこだったよ。
「あ、おじさん、おはよう!」
「おはよう………そして、サーナちゃんの守り人もおはよう」
「お、おはようございます」
守り人ってなに。仲間とか、友達とかあるでしょ?そのおじさんは、私のことをじろじろと見た後一言。
「いい制服じゃ」
おじさん、変態にしか見えないんだけど。いつもこの辺うろうろしてなにがしたいのかな?もしかして、NPCじゃなくてプレイヤーだったりしないよね?
ともかく、おじさんに別れを告げて足早にさる。寒気するよ。
「サーナちゃん。あの人普段なにしているの?」
「おじさん?教会で、子供たちに字の読み書き教えているよ。私も、手が空いてる時には、通ってるよ」
「そっか。だから制服にこだわるんだね……て、違うか」
「マキちゃん?」
「ううん。なんでもないよ。行こう?」
「はい」
「にゃん」
あんずが急げよと、鳴いている。はいはい。
人混みを避けて進む。なんか、日がたつにつれて、人が増えてるような気がするな。
「最近、人が増えている?」
「もうすぐ、王都でお祭りですよ。だから、領内の街では旅芸人さんとかが巡ったり、市場が開かれたりします」
「へぇ、楽しそうだね」
人が多くなる分、クエストも増えそうだけどね。お祭りか。去年の夏、琴美と近所の神社のお祭りへ行ったら、いい男はいねか~いい男はいねか~と、祭りに来ていた人をガン見してたっけ。元気かな?
「遅いぞ、間抜けめ!」
洋菓子店に入ったら、いきなり怒鳴られた。こいつ、きらーい。
サーナちゃん怯えて、私の背中に隠れてるから。
「こっちは、いまかいまかと冒険者を待っていたのに!来たのは生娘二人か!いや、小娘二人か!」
言い直さないでよ。どっちも嫌なんだけど。しかし、私はこいつの弱点を知っている。私が猫とじゃれてる時によく見てたもんね。
「あんず」
「うにゃ」
あんずは、任せとけとでも言うようにカウンターに飛び乗ると、ごろんと寝転がってだらしない表情になる。そして、触りたくてうずうずしている。もう少しで、落ちる。
「あ、いらっしゃいませ……あ、マキちゃんにサーナちゃんこんにちわ!」
「あ、ども」
「こんにちわ、エメラルドさん、ガーネットさん」
奥から妹のエルフさんが出てくる。その瞬間にムスッとして元に戻るつんつんエルフ。
「ふん。危ないとこだった」
「なにが?」
「ええい、うるさい。貴様は依頼を黙って受けてくれればいいんだ!」
「お兄さん、失礼よ。ごめんなさいね。うちの兄は、人間と辛いものが苦手なの」
「は、はあ」
「私は、ガーネット。そして、こっちのムス男はエメラルドよ。よろしくね」
やはり、エルフは美人だから、エメラルドさんも素敵な美人。
「サーナちゃん、熱大丈夫だった?」
「はい。その節はありがとうございました!エメラルドさんのアイス美味しかったです」
「ふ、ふん。当たり前だ。この私が作ったのだぞ?」
偉そうなエルフにあんずを持ち上げて、近づけると一瞬表情を緩ませる。
「くす。お兄さん猫が好きなのに、無理しちゃって」
「そ、そんなことはどうでもいい!それより、依頼内容だ!」
「はいはい。じゃあ説明するけど、実は、洋菓子を作る材料が届かなくて困ってるの」
それは、洋菓子店の材料を積んだ馬車が襲われているとのこと。
「盗賊かなにかですか?」
「そうなのよ。酷いでしょ!」
「確かに、そうですね!美味しいお菓子が食べられないじゃない!」
なんだか、みんなしてプンプンしてるね。
「材料は、今日にも来るはずなのだが遅れているんだ」
「その様子を見てこいと?」
「そうだ、小娘。人間にしてはいい判断だ」
うるさい、ムス男。全くもう。でも、お菓子を待ってる人もいるからね。
「ちょっと危険かもだけど、行くよサーナちゃん」
「は、はい!頑張ります!」
握り拳を作るサーナちゃんを連れてお店を出ると、例によって猫たちもついてくる。大通りは人が多いので、手を繋いであげる。はぐれないように。
「お、サーナちゃんお出掛けか?」
「うん。依頼なの」
「通っていいよね」
ギルドカードは、身分証みたいなもので、すぐに通してもらった。
それに、サーナちゃんの信頼度が高いので、こちらも信頼されている。
「いいぞ。気をつけてな」
門番さんはいつものようにビスケットをくれるのだった。
何気無く、門の外で入国審査かな?街に入る順番待ちの人を見ていると、旅人や旅芸人。そして、商人の中に、怪しげなローブを纏った集団がいた。引きこもりの人たちが、目立ちたくないような感じで潜んでる。なんか、不気味だな。ただ者ではない感じ?
「ほら、マキちゃん行くよ」
「はいはい」
怪しい人たちなんてどうでもいいか。見た目怪しくても凄く好い人かもしれないし。
晴れた天気の中。私達は街道を王都方面へと歩きだした。
つづく
門番は時々、ここで立ち続ける俺の人生ってなんなんだろうと物思いに更ける時があるよ。




