サーナちゃんお休み.4
「イヒヒヒヒヒヒ!」
「…………………」
「ケラケラケラケラケラケラケラケラ!」
「…………」
ドロンに笑われた。粘土細工が、腹を抱えて笑い転げてるの。シュールかも。
私が可愛い格好してるからじゃないよ。私のセンスは間違ってないもん。この人グーパンしていいかな?
それは、転職屋に入った時のことだった。
「……なんだ。貴様か」
つまらなそうに貴様呼ばわりするな。泥まみれめ。Sな粘土。私が小学生の頃に紙粘土で作った人形みたい。
「どうも~。暇そうだから、転職しに来て上げたよ」
怒りを押し殺して笑顔を作る。すると、スキルの効果なのか、ドロンは一瞬虚をつかれた表情をした。
「フン。こちとら暇じゃない。そんな格好して冷やかしか?リア充め!」
別に普段どんな格好してもいいじゃん。確かに、ここに来るまで、通行人が何度か振り返ったけれども。うん。でもその半分は、猫を連れているからと、遠巻きに猫がついてきていたからな気がする。
「暇でしょ?」
「……………フン」
図星なのか、そっぽを向くドロン。だって、この世界では転職なんて多くなさそうだし。どうやって経営してるのかしら。あ、でも店にはグッズがある。見て見ぬふりをしよう。
「……?」
床から音がするので、変だなと思う。
「うつむいてどうした?自分の愚かさに気づいた?」
「態度わるっ!違うよ。床から変な音しない?」
トタトタ駆け抜ける音。も、もしかして、チュウチュウ?
あ、ネズミだよ、ネズミ。チュウチュウは気にしないでね。
「ああ、そういやそうだな。この店そこまで古い訳ではないけどな」
民家でも広がってるみたいなこと言ってたなと続ける。遠くを見ている。どこ見てるの?
「……んで?今日は冷やかしか?」
「違います。転職です」
「そっかそっか。友達いないから、俺相手に話しに来たと思ったぜ」
なに嬉しそうなの、この粘土崩れさん。
「貴様が相手でも、転職させるのは嬉しいもんだ」
そう言ってなにやら差し出して来たのは、水晶玉?
それをカウンターに置くと、説明する。
「こいつに触れると、頭に職業が浮かぶから。そこから、好きなの選びな」
雑。説明、雑!でもまあ、いいもん。ここに来るまでに説明書読んできたもん。眠気と戦いながら。
基本色は、いくつかあるけど。いやありすぎるけども。
戦士、剣士、拳闘士、魔法使い、召喚士、ヒーラー、盗賊などなど。
他にも、細工師や鍛冶職人など、生活するのに必要な職業があったよ。
まあ、ぬいぐるみ使いとか良く分からなかったけど。
目を閉じて、水晶玉に触れると、頭の中に浮かぶのは、いくつかの職業だよ。初級の職業だけか。
戦士とか剣士よりは、拳闘士かな?それを意識して見るがなにも起きない?
「ん?どした?トイレか?」
デリカシーないな、こいつ。きっと、モテないよね。
「職業……変わらないよ?」
「にゃん!」
「おっと、乱暴な子猫ちゃんだ」
あんずが、適当な仕事するなと引っ掻こうとする。子猫ちゃんて。まあいいや。
「ふざけてるの?」
「アホか。マキ、いいか?俺はこれでも仕事はちゃんとこなす方だ。なにせ、親にはやれば出来る子だと言われて育ったからな」
マキ、言うな。そして、自慢気になに言ってんのこの人?
「いいから、もう一回だけ触れてみな?一回でいいから、な?な?」
「………」
その台詞、なんか街でナンパして来た男の言葉に似ていて虫酸が走るな。ともかく、もう一回水晶玉に触れて、色々な職業に意識を集中させるも駄目か。どうしようか。これだと、ストレスがたまっただけなんだけど。
「変わらないだと?お前、水晶玉に嫌われてんな~?」
ムカつき。私はあなたを嫌ってるよ。
「ちょいと、今の職業はなんだよ?」
「……………猫使い」
「にゃん」
嬉しそうにあんずが一声鳴く。
「ね、猫使いぃぃ?」
なにをそんなにびっくりしているのか、ドロンは固まった後吹き出したのだ。
「ひぃひぃ~、猫使いか!?そりゃ聞いたことのないレアな職業だなぁ……ププッ」
「あんず」
「ふにゃああああ!」
いつまでも笑い転げてるなんて。猫のなにが悪いのかと、カウンターに飛び下りたあんずは、ドロンを威嚇する。
「おっと!落ち着いてくれよ!」
ドロンが慌てたので、少しスッとしたよ。私って、器が小さいかな?
「いいかい、マキ?普通の職業と違って、レアな職業は固定で、変更出来ないんだドロン」
マキ、言うな。しかし私は、黙って説明を聞く。
「まあ、王族なんてのがいい例だな。最初は、王子。そして、後に王様ってなドロン」
そうか。なら私の猫使いもいずれ、上級職になるのかな?
猫大好きだからいいけど。でも、からかうドロンは嫌い。
「まあ、頑張れ猫使い…ププ、くくくく。レア職は、ステータスの上がりがいいらしいからな」
「そうなんだ?じゃあすぐにあなたより強くなるね?」
「!!」
にっこりと笑いかけて、出口に向かうとあんずもトトトとついてくる。
「ま、またのお越しを~」
はいはい。もう来ないと思うけど。でもまた、来ることになるとは思わなかった。まあ、いいや。
つづく
ちなみにドロンは、転職の他にも粘土細工を販売して儲けてるらしいよ。
サーナちゃんの粘土細工はことのほか売れたけど、ロッカーさんに見つかって怒られたんだよ。




