追いつく足
テオヴァルドの槍を、エッダは剣で受けなかった。
大肩甲で穂先を外へ滑らせる。その横からヨリスの長柄が薙ぎ、少年は左腕の光の盾で受け流した。
二人の背後へ抜けようとした先で、地面が弾けた。盾をかざして踏みとどまると、大剣が土煙を割って迫る。槍で押し返す間に、横からまた長柄が来た。
その奥には、砲を載せたオートマタがいた。操縦者が杖を動かすと、機体は砲身を下げて横へ歩き始める。
切り出した岩に囲まれた石切り場の底で、テオヴァルドは二人のバスティオンから離れられずにいた。
斜面の上で、オーレリアンは身を乗り出した。
工房を出たあと、乗合車で町の端まで足を延ばしていた。以前にも訓練を見に来た場所だが、今は砲を操る者たちも兵に交じっている。
相手を頼まれたテオヴァルドは槍に覆いをつけ、出力を抑える約束で引き受けた。砲も威力を落としてある。周囲へ飛び出す石は、オーレリアンがフォルマで受け止めていた。
肩に光を走らせ、エッダが大剣で押し込んだ。隣ではヨリスが長柄を低く構え、逃れる足を狙っている。
テオヴァルドが後ろへ跳んだ。回り込んだ機体が止まり、着地するはずの場所へ砲火が走る。土が噴き上がるより早く、少年は背後の岩壁を蹴っていた。
二人の頭上を越え、覆いをつけた穂先がエッダの背を叩く。着地して槍を下げると、操縦者も杖を引いた。
「ここまでにしませんか」
ヨリスが息を吐き、長柄を下ろした。エッダは岩壁を見上げたままだった。
「そこから来るのは、聞いてない」
「僕も、砲があんな所へ来るとは思いませんでした」
テオヴァルドは、初めとは違う場所にいる機体を見ていた。
◇
「あの撃ち方は、クレイドに見てもらいました」
砲を扱っていた男に呼ばれ、クレイドが見学者の間から出てきた。エッダも彼を手招きしている。
「初めは、砲を当てることばかり考えていました。でも、狙いが定まるまで、二人も攻められなくて。それなら、回り込まれたくない所へ先に向けておこうと。いつ撃つかは、皆さんと試しながら決めました」
エッダが地面を指した。次はここまで出たいと言う彼女に、操縦者が、そこでは岩に隠れて見えなくなると答える。クレイドは二人の間へしゃがみ込んだ。
オーレリアンはその話が済むのを待ち、石切り場の奥を指した。
「今度は、普段の威力で見せてほしい」
射撃に使う岩の背後には、山肌が迫っていた。見学者たちも、砲の後ろへ回る。
先ほどとは別の組が前へ出た。二人のバスティオンが左右へ走り、その間をオートマタが進む。機体が踏みとどまると、操縦者の杖先にオルビスが開いた。
砲声が胸を打った。
岩の正面が砕け、穴の向こうまで光が抜けた。両脇を走っていたバスティオンが土煙へ踏み込み、残った岩を大剣と長柄で断つ。
次の砲火が二人の脇を抜け、奥の的を砕いた。爆風を肩で受けながら、兵たちは駆け続けた。
頭上へ跳ねた岩片を、オーレリアンはフォルマで止めた。
テオヴァルドも、光の盾を出したまま見入っていた。
「強くなりましたね」
「そうだね。今なら、留守を頼む時も少し気が楽だ」
テオヴァルドは笑った。
「また、相手をさせてください」
◇
兵たちと話し終えたクレイドが、帰り道へ追いついてきた。
「もう少し形になってから、見てもらうつもりでした」
「次も呼んで。私がいれば、思い切って試せるだろうし」
石切り場では、もう次の組が動き始めていた。少年は一度そちらを振り返った。
「間違っていた所を直すと、また試してくれるんです。何度頼んでも」
「嫌なら、遠慮なく文句も言うと思うよ」
「もう、言われました」
彼は笑い、それからオーレリアンの隣へ並んだ。
「店も見つけたんです。今度、夕食に付き合っていただけませんか」
「もちろん。楽しみにしてるよ」




