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歴代領主の平均生存年数三年の追放先を聖都にしてみた  作者: Lemonade
奇跡と騎士と産業革命の始まり
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次に来る者

 地方長官の使者が任命書を読み上げたのは、城壁を失ったローデン城の一室だった。


 卓の向こうには任命書が広げられ、その隣に、銀に封じられた子爵家の鉄印が置かれている。ローデンの役人たちが見守る中、オーレリアンは立ち上がった。


「地方長官閣下のご信任に感謝し、謹んでこの任をお受けする。ローデンの安寧を守り、そのご期待に応えよう」


 子爵家の印には触れず、自分の男爵印を書状へ置いた。


「そのお言葉、地方長官閣下へお届けします」


 (断れない仕事ほど、恩寵の顔をして届く。帝国らしい)


 任命の話は、それで終わった。


 地方長官の使者とローデンの役人たちが退くと、控えの間から別の男が入った。任命式を見届けていた、レオポルト大公家の使者だった。


 窓辺へ立つと、崩れた石の向こうに城下の通りが遮るものもなく見える。


 市場では、閉じていた店が一つずつ戸を開けていた。道に残った石を運ぶのはアッシュマークのオートマタだが、荷を戻しているのはローデンの人々だった。バスティオンは城と大通りの入口に立ち、市場へは入っていない。


「もっと、煙が残っていると思っておりました」


「壁は壊したけど、町まで焼く理由はないよ」


「敗れた側の役人を、そのまま席に戻すとも思っておりませんでした」


「町を知ってる人まで全部替えたら、戦の続きになる。壊すのは、もう十分だよ」


「城を落とせる方なら、ほかにもおります。ですが、勝った後も子爵家の印を使わず、兵を市場へ入れなかった方は多くありません」


「大公殿下は、ローデン子爵を庇うために来たわけではない、と?」


「子爵が大公殿下から受けた命令はありません。自ら始めた戦に敗れた家を救うため、閣下とローデンの道をまとめて敵へ回す理由もない。殿下は、そうお考えです」


 使者が外套から取り出した書状には、いくつもの家と都市の印が並んでいた。封に指を置いたまま、まだ差し出そうとはしない。


「会合の席次について、一つ困っております。ヴェイル卿の席を、アッシュマーク男爵として用意すべきか。それとも、ヴェイル家の一員として、ご当主の隣を空けておくべきか」


「席次の相談にしては、旗の色までよく見えるね」


「父も、母方の公爵家も、東部で兵と物資を集める側だ。私がどこへ座るか、先に見ておきたいんでしょう」


「……お察しのとおりです」


「昇位の儀に敗れた日に、私はヴェイル家から切り捨てられた。今の私は、アッシュマークへ追放された名ばかりの男爵だよ。父の隣にも、公爵家の上席にも、私の席はない」


「……承知しました。アッシュマーク男爵として、お迎えいたします」


 そこで初めて、書状が差し出された。


 オーレリアンは書状を受け取った。


「話は聞く。ただ、大公殿下の側に席を置くことと、軍を預けることは別だよ」


「殿下も、ヴェイル家へお戻しするおつもりなら、私を遣わしてはおりません」


「なら、先に伝えて。必要な時に道を開き、互いの領地へ無断で兵を入れさせない。その約束になら加わる。でも、私の軍を誰かの指揮下へ置くつもりはない」


「そのお返事で、私も招待状を持ち帰らずに済みます」


「もう一つ。大公殿下に連なる諸家から、正式な使節団をアッシュマークへ送らせていただけませんか」


「表立って?」


「いいえ。最初は、ごく少数に絞ります。報告が戻るまで、訪問そのものも公にはしません」


「何を確かめたいの?」


「ローデンを落とした兵は見ました。しかし、その兵を育てた土地について、公の記録は今も空欄のままです。あなたと同じ席に座るなら、その門が誰を守っているのか、知っておきたい」


 (軍だけ見せて、町は見せない。それで同じ席に座ろうというのは、さすがに虫がよすぎる)


「構わない。ただ、見物だけの人はいらないよ。自分の家や町が、アッシュマークと何を約束できるか、その場で決められる人を送って」


「それでは、名代ではなく、ご本人に来ていただく家も出ますね」


「それでいい」


「ヴァルテンについて、急ぎご相談したいことがあります。使節団にも、その場でお話しいただきます」


「なら、先にアッシュマークで聞くよ。ヴァルテンへ行くかは、その後で決める」


「……最後に一つ。お話ししている間、ヴェイル卿がまだ十四歳でいらっしゃることを、ほとんど忘れておりました」


 言葉が途切れ、崩れた街から石を運ぶ音だけが届いた。


「……失礼しました。今のは、言わずにおくべきでしたね」


「謝らなくていいよ。年齢で話を変えられる方が困るから」

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。


少しでも続きが気になりましたら、ブックマークして、また読みに来ていただけると嬉しいです。


それでは、また次のお話で。

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