軽すぎた勝利
一か月後。
火の塊が、坂を埋めるバスティオンの先頭へ落ちた。爆炎に呑まれた者が石畳へ深く踵を沈めると、胸甲から肩へ文様が灯る。火を割って踏み出すその両側へ、二人が並んだ。
矢は兜と胸を叩いて散り、金属音だけが列の奥へ流れていく。続いて転がり落ちてきた大石も、三人が肩をそろえ、腕と背を光らせて受け止めた。石は三人を押し戻せず、その肩の上で砕けた。粉塵を割り、列がまた進む。
攻撃を受けるたび、坂を上る足音は大きくなった。前の者が火を受けてなお進む間に、後ろの巨体がその脇を抜ける。長柄が柵を薙ぎ、大剣が路上の障害を砕く。崩れた石さえ踏み台に変え、バスティオンは一歩ずつ戦場を狭めていった。
列の後方では、一体のオートマタがオーレリアンを肩に乗せて歩いていた。ほかの機体は物資を抱え、鎧の背を追っている。外套の内で執行状が風に叩かれた。許されたのは城と街道だけ。それだけあれば、十分だった。
前列が城門の下へ届くと、その肩を踏み、テオヴァルドが跳んだ。着地を待たずに最初の槍が折れる。石床を蹴った次の瞬間には、もう三人の内側にいた。二人を別々の方向へ弾き飛ばし、振り下ろされた剣は手首を返して、持ち主ごと胸壁へ叩きつける。
杖が向けられる。オルビスが開くより早く、テオヴァルドの掌から放たれた衝撃が壁上を薙いだ。術者が倒れ、弓が宙へ舞い、逃げ道へ殺到した兵まで足をすくわれる。
立ち上がろうとする者の前には、もう彼がいた。一撃ごとに武器が砕け、立っている兵が減っていく。誰も次の動きを捉えられないまま、抵抗は端から潰れた。最後にテオヴァルドが胸壁を蹴り、中庭へ降りる。
オーレリアンを乗せたオートマタが片膝をつく。広い肩の上で杖を上げた。
(テオは越えた)
ひときわ大きな銀のオルビスが開いた。膨れ上がった銀光が杖先へ集まり、音もなく一つに縮む。
杖先から放たれた銀光が、城門の中央へ突き刺さった。
地が跳ねた。
城門が奥へ抜け、左右の門塔が根元から爆ぜた。衝撃はそこで止まらず、石組みを伝って城を一周する。背後まで届いた瞬間、城壁の全周が土台から浮き、内側へ崩れ落ちた。轟音と土煙が坂を呑み、最後列のオートマタまで巨体を沈める。
光が消えた時、城を囲んでいた壁はどこにもなかった。
バスティオンたちは土煙を待たない。瓦礫へ足を掛け、沈む石ごと踏み固めて前へ出る。文様の灯った胸甲が煙の奥から次々に現れ、壁の消えた場所を埋めていった。
中庭へ残っていた槍列が、その圧力を受けて割れる。長柄が武器を跳ね上げ、大肩甲が人の列を押し崩す。そのまま抵抗を呑み込み、前進だけは止まらなかった。
先に降りていたテオヴァルドが、その中央を駆け抜ける。反撃のオルビスを形になる前に散らし、最後の術者を扉の前から吹き飛ばした。
館の大扉へ、先頭のバスティオンが肩から突っ込んだ。蝶番と閂が一緒に裂け、扉は内側へ倒れる。
その向こうで、武器が床へ落ちた。
オーレリアンを乗せた機体が瓦礫を越えた頃、城を満たしていたのは、奥へ進むバスティオンの足音だけだった。
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それでは、また次のお話で。




