↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴代領主の平均生存年数三年の追放先を聖都にしてみた  作者: Lemonade
奇跡と騎士と産業革命の始まり
38/108

軽すぎた勝利

 一か月後。


 火の塊が、坂を埋めるバスティオンの先頭へ落ちた。爆炎に呑まれた者が石畳へ深く踵を沈めると、胸甲から肩へ文様が灯る。火を割って踏み出すその両側へ、二人が並んだ。


 矢は兜と胸を叩いて散り、金属音だけが列の奥へ流れていく。続いて転がり落ちてきた大石も、三人が肩をそろえ、腕と背を光らせて受け止めた。石は三人を押し戻せず、その肩の上で砕けた。粉塵を割り、列がまた進む。


 攻撃を受けるたび、坂を上る足音は大きくなった。前の者が火を受けてなお進む間に、後ろの巨体がその脇を抜ける。長柄が柵を薙ぎ、大剣が路上の障害を砕く。崩れた石さえ踏み台に変え、バスティオンは一歩ずつ戦場を狭めていった。


 列の後方では、一体のオートマタがオーレリアンを肩に乗せて歩いていた。ほかの機体は物資を抱え、鎧の背を追っている。外套の内で執行状が風に叩かれた。許されたのは城と街道だけ。それだけあれば、十分だった。


 前列が城門の下へ届くと、その肩を踏み、テオヴァルドが跳んだ。着地を待たずに最初の槍が折れる。石床を蹴った次の瞬間には、もう三人の内側にいた。二人を別々の方向へ弾き飛ばし、振り下ろされた剣は手首を返して、持ち主ごと胸壁へ叩きつける。


 杖が向けられる。オルビスが開くより早く、テオヴァルドの掌から放たれた衝撃が壁上を薙いだ。術者が倒れ、弓が宙へ舞い、逃げ道へ殺到した兵まで足をすくわれる。


 立ち上がろうとする者の前には、もう彼がいた。一撃ごとに武器が砕け、立っている兵が減っていく。誰も次の動きを捉えられないまま、抵抗は端から潰れた。最後にテオヴァルドが胸壁を蹴り、中庭へ降りる。


 オーレリアンを乗せたオートマタが片膝をつく。広い肩の上で杖を上げた。


 (テオは越えた)


 ひときわ大きな銀のオルビスが開いた。膨れ上がった銀光が杖先へ集まり、音もなく一つに縮む。


 杖先から放たれた銀光が、城門の中央へ突き刺さった。


 地が跳ねた。


 城門が奥へ抜け、左右の門塔が根元から爆ぜた。衝撃はそこで止まらず、石組みを伝って城を一周する。背後まで届いた瞬間、城壁の全周が土台から浮き、内側へ崩れ落ちた。轟音と土煙が坂を呑み、最後列のオートマタまで巨体を沈める。


 光が消えた時、城を囲んでいた壁はどこにもなかった。


 バスティオンたちは土煙を待たない。瓦礫へ足を掛け、沈む石ごと踏み固めて前へ出る。文様の灯った胸甲が煙の奥から次々に現れ、壁の消えた場所を埋めていった。


 中庭へ残っていた槍列が、その圧力を受けて割れる。長柄が武器を跳ね上げ、大肩甲が人の列を押し崩す。そのまま抵抗を呑み込み、前進だけは止まらなかった。


 先に降りていたテオヴァルドが、その中央を駆け抜ける。反撃のオルビスを形になる前に散らし、最後の術者を扉の前から吹き飛ばした。


 館の大扉へ、先頭のバスティオンが肩から突っ込んだ。蝶番と閂が一緒に裂け、扉は内側へ倒れる。


 その向こうで、武器が床へ落ちた。


 オーレリアンを乗せた機体が瓦礫を越えた頃、城を満たしていたのは、奥へ進むバスティオンの足音だけだった。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。


少しでも続きが気になりましたら、ブックマークして、また読みに来ていただけると嬉しいです。


それでは、また次のお話で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。