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歴代領主の平均生存年数三年の追放先を聖都にしてみた  作者: Lemonade
奇跡と騎士と産業革命の始まり
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閑話 明日着る服

「町も少し落ち着いたし、そろそろ新しい服を作ろうか」


 朝食のあと、オーレリアンがそう言うと、ミラの顔が明るくなった。


「三人分ですか」


「うん。まずはミラの服から」


「私からでよろしいのですか」


「いつも自分のものを後にするからね。今日は先に選んで」


 ミラは少しだけ迷ってから、素直にうなずいた。


「では、遠慮なく」


 昼には、食堂の長机へ色見本が並んだ。生成り、濃い灰色、赤茶、深い青。それから、若葉よりも落ち着いた緑。


 ミラは一枚ずつ手に取り、光へ透かした。赤茶にも心を引かれたようだったが、最後には緑を膝の上へ置いた。


「これにします。昔から好きな色でした」


「似合うと思います」と、テオヴァルドがすぐに言った。


「私もそう思う」


 二人から同時に言われ、ミラは布へ目を落としたまま笑った。


「では、この色でお願いします」


 仕立ては町の職人に頼むことになった。水仕事の邪魔にならない袖と裾。それでも、仕事着より少しだけ華やかに見える形。ミラは寸法を取ってもらいながら、ポケットを四つ欲しいと頼んだ。


「鍵と木札と、乾いた布を入れます」


「もう一つは?」


「空けておきます。明日になれば、何か入れたいものが増えるかもしれません」


「ミラらしいね」


「そうでしょうか」


 言いながらも、ミラは嬉しそうだった。


 テオヴァルドは深い青を選んだ。白い布を勧められると、ほんの少し考えてから首を横に振った。


「白は、しばらく見なくてもいいです」


「うん。青にしよう」


 オーレリアンが答えると、ミラも何も尋ねず、青い布を少年の肩へ当てた。


「こちらのほうが、よくお似合いです」


「ありがとうございます」


 残った赤茶は、いつの間にかオーレリアンの前へ置かれていた。


「私の色は、もう決まったの?」


「緑と青の隣に並んでも、きれいですから」


 テオヴァルドも真剣な顔でうなずいたので、異議を唱える者はいなかった。


      ◇


 三人は、そのまま窓辺で昼食を取った。


 外には新しい壁の影が落ち、その向こうには、まだ何も植えられていない土が残っている。


「あそこへ、庭を作りませんか」


 ミラがパンをちぎりながら言った。


「薬草だけではなく、花も植えたいです。青と白で、季節が変わっても何か一つは咲いているように」


「いいね」


「庭の端に、木も欲しいです」とテオヴァルドが続けた。「大きくなったら、その下で本を読めます」


「それなら、長椅子も置こう」


「皆で読める本棚も欲しいです。僕の部屋だけではなくて」


「ブレーゲンから本を運ぼう。物語も料理の本も、ここにあっていい」


 ミラはしばらく窓の外を眺めていた。


「また、旅へ出られるのですね」


「うん。必要になればね」


 オーレリアンは少し考え、言葉を足した。


「でも、今度はきちんと話してから行くよ。帰るつもりで出るし、帰る日も、分かるかぎり伝える」


「その間に、木が少し大きくなるかもしれません」


「帰った時に驚けるくらい?」


「そこまでは難しいと思います」


「じゃあ、長く留守にしないようにする」


 ミラの笑みが、少しだけ深くなった。


「帰った時に何があってほしいか、今から三人で考えておこう」


 ミラは花。テオヴァルドは木と本棚。オーレリアンは、湯をたっぷり使える風呂を選んだ。


「お風呂の話は、昨日も伺いました」


「大事なことだから何度でも言う」


      ◇


 仕上がった深い緑の上着に、生成りのシャツと濃灰のスカートを合わせると、ミラはいつもより少しだけ大人びて見えた。余った布で結んだ髪も、同じ緑に揺れている。


「とても似合います」


「うん。ミラが選んだ色だ」


「ありがとうございます」


 ミラは新しい袖をそっと撫で、それから四つ目のポケットへ手を入れた。


 出てきたのは、小さな種の包みだった。


「もう見つけたの?」


「染め手の方が分けてくださいました。青い花が咲くそうです」


 三人は包みを持って外へ出た。夕方の土はまだ温かく、指で浅くなぞるだけで柔らかな線ができた。


 テオヴァルドが種を置くと、きれいな一列になった。ミラは端の一粒をほんの少しずらし、テオヴァルドも迷った末に、その隣を少しだけ動かした。


 土をかぶせ終えた頃には、新しい緑の膝にも、三人の指先にも、同じ色の土がついていた。


「お二人とも、食事の前に手を洗ってくださいね」


 テオヴァルドは自分の手を見てから、ミラの指先を見た。


「ミラもです」


「ええ。三人ともですね」

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