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歴代領主の平均生存年数三年の追放先を聖都にしてみた  作者: Lemonade
奇跡と騎士と産業革命の始まり
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勝ったあとで

 砲口がこちらを向く。その横から踏み込んだテオヴァルドの槍を弾き、オーレリアンは砂を蹴った。受けるだけでよいと言ったのを、早くも後悔していた。


 退いた先にはクレイドがいる。剣の腹を受け止める間に、ミラの砲が火を噴いた。


 正面のオルビスで砲撃を受けると、砂が背後へ飛び散った。威力を抑えていても、足は止まる。二人の少年はすでに射線を外れ、こちらへ回り込もうとしていた。


「そろそろ、私も撃ち返していい?」


「まずは、私たちが当てるまでお願いします」


 返事と一緒に、砲口が再び上がった。


 今度は受けず、川の上へ跳んだ。直後、さっきまで立っていた場所を衝撃が通り抜ける。岸へ戻ろうとした足を、エレンのフォルマが横へ押した。踏み直すより早く、槍先が胸元で止まる。


「……降参」


 彼が槍を引いた途端、河原で笑い声が上がった。交代を待つ兵たちまで見ていたらしい。


「ミラの練習相手を引き受けたはずなんだけどな」


「お二人が前にいる時こそ、練習したかったんです」


 操縦席を降りてきた彼女は息を弾ませていたが、杖を握りしめてはいなかった。前に出た二人を見ながら、ためらわずに撃てていた。


 砦を取り戻してから五日。返事を待つ間に始めた練習が、いつの間にか四人がかりになっていた。


 服についた砂を払っていると、エレンが近づいてきた。


「もう少し、お付き合いいただきたかったですね。私も、今のを部下に教えるには練習が要ります」


「まだやるの?」


「受けてくださる方がいるうちに」


 エレンは笑っていた。砲のそばでは、クレイドもミラへ何かを頼んでいる。どうやら、次もあることになっていた。


 四人がもう一度こちらを向いたところで、杖を上げてみせた。


「分かった。ただし次は、私も撃つよ」


「今日はここまでです。午後のお客様を、お忘れではありませんか」


 それを言われると、もう一戦頼みたくなった。


      ◇


 捕虜を返せという使者は、砦から兵を引くことまで求めてきた。


「双方が退けば、陛下のお定めになった停戦も守られます。こちらにも、閣下にも、これ以上の損はありますまい」


 窓の下では、止められていた荷車が川沿いの道へ戻っている。その脇を、交代で到着したバスティオンたちが通った。荷を運ぶ者が手を上げ、兵も応じる。


「ここには、もともと私の守備隊がいた。貴軍と一緒に退かねばならぬ理由はない」


「しかし、これほどの兵を置かれては、隣領も備えを解けません」


「その軍を入れるために、我が守備隊を追い出したのだろう。原因と結果を取り違えぬよう願いたい」


 使者は、窓の下を通る荷車へ目を逃がした。往来はすでに戻っていたが、捕らえた兵は砦の中に残っている。


「兵をお返しいただければ、上官も話を聞きやすくなりましょう」


「順序が逆だ。後続を引き、街道の通行を妨げぬこと。確かめられれば、捕虜は返す。ただし、武器は置いていってもらう」


「閣下は、境を越えて追わぬと?」


「我が領へ来なければ、ここで戦う理由はなくなる」


 念押しを重ねようとした口が閉じた。使者はようやく、返答を預かると言った。


 撤退を受け入れる返書が届いても、すぐには捕虜を返さなかった。偵察に出した兵が隣領の陣から軍の引いたことを確かめ、ようやく指揮官たちは武器を置いて砦を出た。


 敵の旗が消えても、砦の守りは残した。


      ◇


「近くにいる大公方の軍からは、何も言ってこなかったんですか」


 帰り支度を終えたクレイドが、砦の下を見ていた。交代の部隊がすでに配置につき、自分たちの軍は西へ下る準備をしている。


「来たよ。次に何かあったら、近くにいてほしいって」


「お断りしたんですか」


「まだ戦ってもいない隣の領地を、先に攻めておく相談までついてきたからね。今度の話とは別だよ」


 麓では、ミラがエレンを同じ車へ誘っていた。帰りの道中まで教わるつもりらしい。隣の車から、テオヴァルドがこちらへ手を振る。


「帰ろう。しばらく、家で寝たい」


「その前に、続きを読んでいただけますか。帰るまでに、書き終えたいんです」


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