同じ食卓
代わりの操縦者へ砲を任せ、オーレリアンはミラの前へしゃがんだ。杖から離れない指に触れても、彼女はまだ、煙の向こうを見ていた。
「二人とも、戻ってきた」
テオヴァルドとクレイドがそばへ来ると、ようやく指が緩んだ。エレンも隣へ座り、砲に向けていた杖を膝へ置いた。
「頬を見せて」
傷は浅かった。血を拭ってフォルマを使うと、ミラは目を閉じた。
「岩棚へ撃った時、当たると思いました。お二人に。伏せてくださると分かっていても、煙が消えるまでは……」
言い終える前に息が震えた。クレイドがしゃがみ、彼女と目の高さを揃えた。
「テオさんと一緒に、出すぎました。すみません」
「無事なら、いいです。でも、見えるところにいてください」
手を差し出されても、すぐには立てなかった。二人も急がせず、そばにいた。
オーレリアンは治った傷を確かめ、手を離した。
「留守を頼んでいた時も、こんな気分だった?」
「その時は、見えませんでしたから。帰ってくるとおっしゃったことを、信じるしかありませんでした」
返す言葉を探している間に、ミラは自分で頬に触れた。もう痛くないと、そばにいた二人へ伝えている。
砦には、村へ退いていた守備隊も戻り始めていた。捕虜を引き受ける者と、閉じ込められていた仲間を捜す者が行き交う。オーレリアンは立ち上がり、降伏した指揮官の方へ歩いた。
「後続は、どこまで来ている」
男は川の先を示した。隣の諸侯の領内にいるという。ここを明け渡させた後、交代の部隊を入れる手はずだった。
「なぜ、ヴァルテンへの荷まで止めた」
「大公の軍を通す道になる。そう、命じられた」
押さえた命令書も、その言葉を裏づけていた。国境のために道を借りるという話ではない。アッシュマークを西へ押し戻し、ヴァルテンへ届かなくするための占領だった。
後続まで追えば、隣の諸侯の領内へ入る。そこまで兵を送る理由は、まだなかった。取り戻した砦で待てば、相手がまた攻めるにしても、同じ坂を登らせられる。
「後続にも、ここから兵は通させぬ。部下を返してほしければ、使者をよこすよう、上官へ書き送れ」
男は黙って頭を下げた。書状を持たせる者だけを帰し、指揮官と兵はここへ残すことにした。
◇
その夜は、砦で食事を取った。
街道はまだ兵の往来に使っているが、翌朝には止められていた荷も通せる。交代の部隊が着くまで、奪い返した陣を空けるつもりはなかった。
食堂では、ミラが隣の席を空けて待っていた。向かいに座ったエレンとクレイドは、倒れる砲の下を抜けた時のことを話している。
「落ちてくるものまで、あんなふうに使うのですね。こちらの息が止まりました」
「逃げる人たちが、そこだけ空けたので。自分でも、あとから怖くなりました」
「そうでしたか。私にだけ、先が見えていないのかと思いました」
真顔で言われ、少年は少し迷ってから笑った。
「テオさんが前にいたから、行けました。一人なら、あそこで止まっていたと思います」
「僕も、後ろは見ていませんでした」
隣の椀へパンを足しながら、テオヴァルドが答えた。クレイドは礼を言い、まだ食べていなかったことに気づいたように手を伸ばす。
「戻ったら、うちの兵にも話をしてもらえるかな」
オーレリアンが頼むと、エレンはうなずいた。
「ええ。私の隊にも、見せたい戦いでした。許可が得られたら、今度は彼らを訓練へ連れてきたいと思います」
「こちらからも教わりたい。特に、君がミラを支えていたやり方は」
「教えてよいものからでしたら。私の判断で持ち出せないものもありますが」
ミラも顔を上げた。
「私にも、お願いします。あの時、どこまで頼ってよいのか分からなくて。もっと早く、助けてと言えばよかったです」
「私も、先に言うべきでしたね。帰り道で、少し合わせてみましょう」
ミラはうなずき、今度はオーレリアンへ頼んだ。
「練習の相手を、お願いできますか」
「私を撃つの?」
「受けていただけるなら、今度は思い切って試せます」
今日とは違う顔で言われ、オーレリアンは笑った。
「分かった。今度は、私が前に立とう」




